藻類・原生生物(プロチスト)の分類と解説
 
 「五界説に替わる,生物界の分類を教えて欲しい」と良くたずねられます。著者らの一人鈴木は、SPPや国際生物学オリンピックの特別教育において,高校生に生物界の分類について講義をした事があります。最新の分類体系を教えたいという気持ちから,教科書や資料集に全く載っていない事までしゃべってしまい,後日,「勉強したいので何か参考書を教えて下さい」と言われた際,何を勧めたものか答えに困った事があります。生物界全体の分類について,現在は系統分類学に基づいた分類体系が主流な事から,研究者は「大系統」と呼んでいます。大系統に関する仮説として最も有名なのは「五界説」でしょう。高等学校で生物を習った方のほとんどは,生物の世界は「動物界」,「菌界」,「植物界」,「原生生物界(プロチスタ)」,「モネラ界」の5つに分けられると習ったと思います。五界説は大変優秀な仮説で,教える立場としてはこれほど説明しやすい仮説は無かったのですが,現在では五界説を支持する研究者はほとんどおらず,教科書や資料集においても「現在の主流ではない」という文言が掲載されるようになりました。五界説以降の大系統は大まかに言って,五界説→ウーズの3ドメイン→6~8つのスーパーグループの提唱→"超"植物界の復権→??と続きます。教科書や資料集にも生物界の新しい分類体系を掲載して欲しいと思ってはいるのですが,以下の2点から難航していると考えられます。
 
1. 大系統に関する議論が未だ収束をみない
 五界説はほぼ否定されたものの,大系統に関する仮説は百花繚乱です。毎年のように新知見が発表され,著者らもどの仮説に従えば良いか,日々頭を悩ませています。
 
2. 大系統を語る上で重要な生物群の多くが身近な生き物ではない
 生物の大系統を勉強する…それはすなわち藻類と原生生物(プロチスト)を勉強する事です。ところが,藻類・プロチストの多くは単細胞性のものが多く,通常我々が目にする自然景観には見られません。このため,専門家以外には全く実感が沸かないのです。
 
 教科書や資料集に載らないことから,大系統を勉強するには,独学するか,大系統を研究している大学の研究室に所属するかしかありません。独学するには難解だと思いますし,大学で研究というと実感の湧かない方もいらっしゃるでしょうし,そもそも研究室の数自体が少ないです。著者らは,藻類(大田はクロララクニオン藻類を中心とした微細藻類,鈴木は紅藻類を中心とした大型藻類)の分類学を専門として研究を行っています。大系統そのものを研究対象としているわけではありませんが,大系統について学んできました。大系統に興味を持たれた方々に,著者らが大系統について学んできた事を出来る限り分かりやすく説明したいという気持ちから,このコーナーの作成・公開を始めました。大系統を勉強するには,生物の分類が過去から現在までどのように変わってきたかという歴史,生物界を構成している様々な生き物についての知識,細胞内共生などの重要な現象など,たくさんの事を学ばねばなりません。このコーナーでは,藻類と原生生物の分類学・進化学を中心に,大系統に関する様々なトピックスを紹介します。大系統を教えるのは著者らにとっても,試行錯誤の段階なので分かりづらい箇所や紹介しきれないものもあると思います。出来る限り良いものを作れるよう,改良を続けていきますので,よろしくお付き合い下さい。
 

更新履歴

2019年6月1日 「色素体/葉緑体の成立と多様性」を更新しました。

2011年4月24日 「クロララクニオン藻類の形態,分類,進化」の第二版の改訂版を公開しました。

2011年2月24日 「ケルコゾアの分類体系」の改訂版を公開しました。

2011年1月14日 「大系統を勉強にするには」に「日本の海産プランクトン図鑑」の書評を加えました。

2011年1月7日 「クロララクニオン藻類の形態,分類,進化」の第二版を公開しました。

2010年10月17日 「クリプト植物の形態・分類・進化」を公開しました。

2010年10月6日 「ケルコゾアの分類体系」を公開しました。

2010年10月5日 「用語解説」と「葉緑体の成立と多様性」を公開しました。

2010年9月25日 「大系統を勉強にするには」を公開しました。

 
はじめに
 藻類・原生生物(プロチスト)の各分類群の解説を読む前に,大系統の概略や理解を深めるのに役立つ本,総説などを紹介します。
 
大系統を勉強するには  
  監修・執筆:大田修平・鈴木雅大 作成日:2010年9月25日(2011年1月14日更新)
   高等学校の教科書,資料集に掲載されるようになるのはまだまだ先の事だと思いますが,大系統に関する総説は決して少なくありません。大系統を勉強するのに必要なもの,それはあらゆる生き物に対する興味と好奇心に他なりません。ここでは,大系統の勉強と理解を助ける本,総説,図鑑,ウェブサイトなどを紹介します。
 
用語解説*一部未完成    
  監修・執筆:大田修平・鈴木雅大 作成日:2010年10月5日(2010年10月27日更新)
   大系統の研究は,既に生物学の知識を総動員しないと付いていくのが難しいほど複雑化しています。ここでは,藻類と原生生物の形態・分類・進化に関係する用語を中心に,大系統を勉強する上で欠かすことの出来ない用語について解説します。
   
生物の大系統
 「色素体/葉緑体の成立と多様性」では植物(藻類)がなぜ多様化したか,「生物界の分類体系の変遷」では,生物の分類の歴史を解説しています。
 
色素体/葉緑体の成立と多様性  
  監修・執筆:鈴木雅大・大田修平 作成日:2010年10月5日(2019年6月1日更新)
   大系統の話をする時,色素体/葉緑体がもたらした植物(藻類)の多様性に関する理解は不可欠です。色素体の起源となった共生生物が宿主の細胞内でどのようにして色素体として成立したか,真核生物の世界(真核生物ドメイン)における色素体の多様性について解説します。
 
生物界の分類体系の変遷(執筆中) 
  執筆:鈴木雅大・大田修平 作成日:
   生物界の分類体系について,五界説から現在に至るまでの大まかな歴史について紹介します。
 
藻類・原生生物(プロチスト)の分類と解説 ~大系統を語るのに欠かせない生き物たち~
 繰り返しますが,生物の大系統を知るためには藻類と原生生物についての理解が不可欠です。身近な生き物とは言い難い仲間達ですが,池の水を汲んできて顕微鏡で観察すると様々な分類群を観察する事が出来るので,高等学校の資料集にはほとんどの門に所属する生き物の写真が掲載されています。つまり,肉眼で見えづらいというだけで,実は身近な生き物なのです。ところが,資料集にしろ図鑑にしろ,それらがどういう生き物かという説明は不十分な場合が多く,大系統と結びつけた話はほとんどありません。ここでは,藻類と原生生物の主な分類群について,分類学,進化学を中心に解説します。普段目にすることの無い生き物たちが,実は凄まじい多様性を秘めていることを知って頂ければ幸いです。
 
クロララクニオン藻類の形態・分類・進化 
  執筆:大田 修平 作成日:2010年9月19日 第二版改訂:2011年4月22日
   クロララクニオン藻類は,単細胞の藻類です。藻類の中ではマイナーなグループですが,大系統を勉強する事はもとより,生物学的にも重要なグループです。
 
ケルコゾアの分類体系 
  執筆:大田 修平 作成日:2010年10月6日 改訂日:2011年2月24日
   ケルコゾア門の科のレベルまでの分類体系を示したリストです。Howe et al. (2011) に基づき,モナドフィローサ上綱の分類体系を見直しました。
   
クリプト藻類の形態・分類・進化 
  執筆:大田修平 作成日:10月17日
   クリプト藻類はクロララクニオン藻類と同じくヌクレオモルフを持つ事で注目されているグループです。ここでは,クリプト藻類の系統,分類,形態的側面から解説し,最近のヌクレオモルフ・ゲノミクスについても簡単に紹介します。
 

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