押し葉帳作り

 
道具の準備
 

ここでは,実習で一人10種類の押し葉を作る事とします。

 

新聞紙:一班当たり数枚。机がボンドで汚れないように敷きます。

わら半紙:一人数枚。この上で糊付けをします。

画用紙:B5サイズに切ったものを一人10枚。

木工ボンド:一班(4人)当たり1個

ガラスシャーレ:一人1枚(蓋と中身をそれぞれ1枚としても可)。プラスチックシャーレよりもガラスシャーレの方が洗いやすくて使いやすいです。

筆:一人1本。穂先が平らで?mm位のもの。

ピンセット:一人1本。

写真には示していませんが,ティッシュペーパー(キムワイプ)が必要です。
 
押し葉帳作製手順
 
 
1. 机の上に新聞紙を敷きます。   2. 画用紙の右下に自分の名前を書き入れます。名前は1 m離れたところからでも読めるくらい大きく書きます。
     
3. ボンドを溶かします。ボンド2gにボンドの半分量の水を加えるとしていますが,濃すぎるもしくは薄すぎる事が多いです。一人ひとり見回って濃さを確認する必要があります。
     
 
4. 葉を貼る位置を決めます。枝付きの場合は葉の表面が多い方を上に(左図),葉を並べる場合は左側に表,右側に裏が来るように並べます(右図)。奇数の葉を並べる場合は,3枚なら表が2枚,5枚ならば表が3枚というように,表が多くなるように並べます。例外としてシロダモやイヌブナのように,葉の裏面が特徴的な種については,表よりも裏が多くなるように並べます。
     
 
5. わら半紙の上で糊付けします。葉の裏表,種類によって水の弾き方や塗りやすさが異なります。これも一つのポイントです。
     
 
6. 枝や葉柄には生のボンドを塗ります。   7. 葉を画用紙に貼り付けます。
     
 
8. はみ出た糊をティッシュで拭き取ります。   9. 貼った葉の上にわら半紙をかぶせ,しっかりと押しつけます。
     
押し葉のチェック
 
作製した押し葉の出来栄えをチェックします。
 
チェックするポイント1. 配置が正しいか
 一番多い間違いが,表面と裏面が反対になっていることです。バランスの悪いもの,センスの無いものも直せる限り直しましょう。
 
チェックするポイント2. きちんと貼りついているか
 葉にノリがまんべんなく塗られているか,枝に原液の木工ボンドが付いているか,ボンドがはみ出していないかをチェックします。
 
押し葉を斜めにし,葉が浮いていないかチェックします。
 
押し葉の乾燥
 
 
葉を乾燥した時と同様に,新聞紙(吸水紙)と段ボール板に挟んで通風乾燥します。実習終了後に扇風機のスイッチを入れ,数時間から半日位で乾燥します。
 
押し葉の返却
 
 
乾燥した押し葉を生徒又は学生に返却します。著者は返却方法にこだわりがあり,学生が来る前に実習台全てを使って押し葉を並べます。学生が全員集まったら,各机を周って自分の押し葉を回収するよう指示します。実習室に入って来た学生に与えるインパクトも絶大ですが,各机を周り,何気なく他の人の作った押し葉を眺める中で,学ぶ事もあるでしょう。
     
 
返却された押し葉に学名,科名,採集地,採集日などを書き込みます。   B5サイズのクリアファイルに入れて保管します。押し葉帳の完成です。
 
押し葉に何を書き込んだら良いか
 
博物館の標本庫に収めるA3の押し葉標本ならば,右下に採集地,採集日,採集者などの情報が入ったラベルを貼り,台紙には通常何も書き入れません。しかし,ここでの押し葉作りは,名前を覚えるためのものです。押し葉には様々な情報を書き込んだ方が,「押し葉帳」として使い勝手が良いでしょう。和名と自分(作成者)の名前は押し葉を作る際に書き入れました。ここでは,この他に何を書き入れたら良いかを論じます。
 
1. 学名:学名は生物の世界共通の名前です。その種にとって唯一無二の名前である事から書き入れた方が望ましいと考えられます。けれども,ラテン語で標記されるため,通常,専門家の間でしか通用しないという難点があります。
 
2. 科名:生物は科によってまとめられます。多くの図鑑では生物は科ごとにまとめられて掲載されています。科の和名だけでも書き入れた方が,便利に使えるでしょう。
 
3. 目名:科は目にまとめられますが,近年,植物の目の分類は大きく変化しており,図鑑によって扱いが異なります。目名は書き入れない方が良いでしょう。
 
4. 学名の意味:属名,種小名のラテン語には意味があります。これを調べて,押し葉に書くのも一つのアイデアです。ただ,中には必ずしもその植物の特徴を著していない名前もあり,実用的ではないように思えます。
 
5. 和名の意味:学名と違い,和名は身近なものです。シナノキ=良く「しなる」木,ウリハダカエデ=瓜のような木肌をしたカエデなど,木の特徴を良く著したものも多く,和名の意味を調べることで植物を覚えられるケースも多いでしょう。
 
6. 採集地,採集日,採集者:どこでいつ採ったものかという情報は重要です。学術的な意味だけでなく,児童・生徒にとっても興味を引かれるものです。「~~小学校の校庭」など,身近な場所で採られたものであればなおさらです。採集者については,必ずしも必要ではないと思います。
 
7. 葉の特徴:作った種類を図鑑で調べるのは必須です。調べた葉の特徴などを自分だけの情報として押し葉に書き入れることで,「押し葉帳」をより便利に使えるようになるでしょう。
 
教える対象にもよりますが,著者は対象が大学生以上でしたら学名・科名・採集地・採集日・葉の特徴を,高校生以下でしたら採集地・採集日・葉の特徴は必須とし,他は学生が書き込みたいものを自由に書くよう指導しています。
 
 
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