植物組織の観察は材料次第
 
 植物の組織を観察する上で最も重要なのは,観察に適した植物を用意する事です。植物のみならず生き物を扱う全ての実験・観察に言える事ですが,観察に適した材料を用意する事が出来れば,その実験・観察は80%成功です。植物の組織を観察しようとする際,植物なら何でも良いという事はありません。児童・生徒及び学生にとって,植物の断面を観察するのは,大変難しい事のはずです。うまくいかず,嫌になってしまう学生も少なくないことでしょう。教える側としては,いかにして観察の容易な材料を提供出来るかが課題となります。市販されているプレパラートを購入して見せるのも良い方法ではありますが,著者は与えられたものよりも,児童・生徒自身の手で切片を作成,観察する方法にこだわっています。そこで,以下の4点にこだわって観察材料を探しています。1. 切片を作り易いこと,2. 模式図にあるような典型的な組織を観察出来ること,3. 身近にあって,探せば手に入るもの,4. 出来る限り季節に左右されないもの。実際には4点全てを満たす材料はほとんどなく,特に冬場でも手に入る材料は極めて限られています。けれども,実習予定日があらかじめ分かっていれば,鉢植えにしたものを室内で育て,実習日に間に合わせる事もある程度は可能です。著者は,出来る限り自生している元気なものを使うようにしていますが,幾つか鉢植えにして栽培しています。花壇や温室があれば言う事ありませんが,アパートのベランダでも十分栽培可能です。
 
 著者のアパートのベランダで,2013年まで育てていた教材用の植物です。ムラサキツユクサ(気孔の観察,減数分裂の観察),ヌマムラサキツユクサ(減数分裂の観察),センニンソウ(茎の中心柱,維管束の観察),クレマチス・オーリカバレー(常緑のクレマチス属,維管束の観察 *冬場に実験を行う際のセンニンソウの代用品),ニオイイリスドイツアヤメ(根の中心柱の観察),タチテンモンドウ(茎の中心柱 *ススキの代用品)などを栽培しています。
 
植物組織の観察に適した植物
 著者が使っている主な教材用植物です。現在も生物教材として使えそうな植物を探しており,今後,教材化出来る植物を加えていくつもりです。
 
葉の観察
ツバキ(ヤブツバキ):身近な常緑樹で,通年使えます。
 
双子葉植物の茎の観察
センニンソウ:比較的身近な野草(つる植物)ですが,花が咲かないとどこに生えているか気が付かないことがあります。関東地方では5~10月位まで観察可能です。鉢植えにして室内で栽培すれば,少なくとも1月位までは観察可能です。
クレマチス(センニンソウ属):センニンソウの代用です。様々な園芸種があり,センニンソウとほぼ同様な切片が見られるものから,細くて切りづらかったり,やや典型を欠くものもあります。通常2月頃から販売されますが,クレマチス・オーリカバレーのように常緑で冬でも購入,観察可能なものもあります。
 
単子葉植物の茎の観察
ススキ:身近な植物ですが,切片を作れる時期が限られており,夏から秋になると茎が堅すぎてカミソリの刃が通りません。逆に早すぎると茎に髄部が形成されておらず,典型的な不斉中心柱が見られません。教科書的な材料ですが,児童生徒に切片を作らせるのは難しく,著者は自分で作るか,半永久プレパラートとしたものを見せています。
タチテンモンドウ:ススキの代用品として,現在著者が教材化を進めている材料です。茎が細いのが難点です。
 
根の観察
ニオイイリスジャーマンアイリス(ドイツアヤメ):各地の花壇で栽培されている他,ホームセンターや園芸店で容易に購入する事が出来ます。通年観察出来ます。
 
気孔の観察
ムラサキツユクサ:身近な植物ですが,探すと意外に見つからない事があります。栽培が容易なので花壇又は鉢植えにしておけば
ニラ:ムラサキツユクサの代用品です。スーパーで通年購入出来ます。
 

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