イロロ Ishige foliacea
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年11月26日(2018年5月21日更新)
 
イロロ
Ishige foliacea Okamura in Segawa 1935: 66.
 
黄藻植物(オクロ植物)門(Phylum Ochrophyta),クリシスタ(Chrysista),褐藻綱(Class Phaeophyceae),イシゲ亜綱(Subclass Ishigeophycidae),イシゲ目(Order Ishigeales),イシゲ科(Family Ishigeaceae),イシゲ属(Genus Ishige
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),ナガマツモ目(Order Chordariales),イシゲ科(Family Ishigeaceae),イシゲ属(Genus Ishige)*Ishige sinicolaとして
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),イシゲ目(Order Ishigeales),イシゲ科(Family Ishigeaceae),イシゲ属(Genus Ishige
 
その他の異名
  "Ishige sinicola" auct. non Chihara 1969: 3.
 
Type locality: 神奈川県 三浦市 城ヶ島
Lectotype: TI heab. Yendo *SAPに永久貸与 (Lee et al. 2009より)
 
イロロ Ishige foliacea
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2016年3月10日;撮影者:鈴木雅大
 
イロロ Ishige foliacea
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2015年6月2日;撮影者:鈴木雅大
 
イロロ Ishige foliacea
 
イロロ Ishige foliacea
撮影地:千葉県 銚子市 アシカ島;撮影日:2010年4月29日;撮影者:吉﨑 誠
 
イロロ Ishige foliacea
撮影地:神奈川県 三浦市 三崎町 荒井浜;撮影日:2012年5月9日;撮影者:鈴木雅大
 
イロロ Ishige foliacea
押し葉標本(採集地:千葉県 銚子市 外川町 弘法水;採集日:2001年5月8日;採集者:鈴木雅大)
 
イロロは,太平洋東岸に生育するIshige sinicolaと同種と考えられてきましたが,Lee et al. (2009) は,日本と韓国に生育するイロロは,I. sinicolaとは別種であるとして,I. foliaceaを再評価しました。
 
イシゲの体上に生えるイロロ
 
イロロ Ishige foliacea
 
イロロ Ishige foliacea
撮影地:福岡県 福津市 津屋崎;撮影日:2018年4月18日;撮影者:鈴木雅大
 
イロロは近縁種のイシゲ(Ishige okamuraeの体上に着生することがあり,2種が同所に生えるところでは良く見られます。あたかもイシゲの体の一部がイロロ状に変化したように見えるため,かつてイロロはイシゲが変異したものと考えられ,Yendo (1907) はイシゲを新種記載した際,「イシゲには糸状のものと葉状のものと2型あり,葉状型は何らかの寄生生物の刺激によるものである」と論じています。遠藤吉三郎先生のイシゲ・イロロ同種説は,岡村金太郎先生によって否定され,岡村先生はSegawa (1935) の中でイロロを新種として記載しました。もちろん,イロロとイシゲは異なる種として間違いないのですが,イシゲに着いたイロロを見ると,「何だこれ?」と思わずにはいられません。なかなか紛らわしいことをしてくれる海藻だと思います。
 
痛恨の誤同定 ~イロロと紅藻を間違える~
 
イロロ Ishige foliacea
採集地:愛媛県 松山市 堀江町;採集日:2016年6月17日;採集者:鈴木雅大
 
イロロ Ishige foliacea
体の横断面(採集地:愛媛県 松山市 堀江町;採集日:2016年6月17日;採集者:鈴木雅大)
 
愛媛県松山市で採集したイロロです。体の高さが10 cmを超える立派な個体ですが,打ち揚がった個体のため,傷んで赤褐色になっています。著者は,あろうことかこのイロロを紅藻類のアツバノリと誤同定し,rbcL遺伝子の配列まで決めてしまいました。切片を作製し,顕微鏡観察までしておきながら,遺伝子解析の結果を見るまで気が付かないという大失態を犯しました。大きさと色に完全に騙されました。改めて切片写真を見れば,どう見ても褐藻類の切片です。紅藻の専門家が褐藻と紅藻を間違えるとは恥辱の極みです。ちなみに,この個体を紅藻と間違えたのは著者だけではなく,紅藻のツノマタ属と間違えた海藻の専門家も2名ほどいたことを付記しておきます。思い込みの怖さと言いたいところですが,遺伝子に頼りすぎて海藻を見る「眼」が衰えたのかもしれません。
 
イロロ Ishige foliacea
押し葉標本(採集地:愛媛県 松山市 堀江町;採集日:2016年6月17日;採集者:鈴木雅大)
 
上述の個体を押し葉標本にしたものです。標本として乾燥したものは,イロロそのものでした。標本作製を後回しにしていなければ,痛恨の誤同定には至らなかったかもしれません。標本作製に人生をかけた恩師の教えを噛みしめました。
 
イロロ Ishige foliacea
撮影地:愛媛県 松山市 興居島 船越;撮影日:2017年5月26日;撮影者:鈴木雅大
 
前回のリベンジを果たすべく,改めてイロロを採集・観察してみました。こうしてみると赤褐色に変色したイロロは割と普通に見られるようです。意識していないと本当に紅藻のように見えます。
 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2011. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 26 November 2011.
 
Lee, K.M., Boo, G.H., Riosmena-Rodriguez, R., Shin, J.-A. and Boo, S.M. 2009. Classification of the genus Ishige (Ishigeales, Phaeophyceae) on the North Pacific Ocean with recognition of Ishige foliacea based on plastid rbcL and mitochondrial cox3 gene sequences. Journal of Phycology 45: 906-913.
 
Segawa, S. 1935. On the marine algae of Susaki, Prov. Idzu and its vicinity. Scientific Papers of the Institute of Algological Research, Faculty of Science, Hokkaido Imperial University 1: 59-90.
 
Yendo, K. 1907. The Fucaceae of Japan. Journal of the College of Science, Imperial University, Tokyo 19: 1-174.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌. 1222 pp. 内田老鶴圃, 東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 

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