ヒロハコモングサ Spatoglossum latum
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年6月22日
 
ヒロハコモングサ(広葉小紋草)
Spatoglossum latum Ji. Tanaka 1992: 28, figs 1-19.
 
黄藻植物(オクロ植物)門(Phylum Ochrophyta),褐藻綱(Class Phaeophyceae),アミジグサ亜綱(Subclass Dictyotophycidae),アミジグサ目(Order Dictyotales),アミジグサ科(Family Dictyotaceae),シマオウギ連(Tribe Zonarieae),モンナシグサ属(Genus Spatoglossum
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),アミジグサ目(Order Dictyotales),アミジグサ科(Family Dictyotaceae),コモングサ属(Genus Spatoglossum
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),アミジグサ目(Order Dictyotales),アミジグサ科(Family Dictyotaceae),モンナシグサ属(Genus Spatoglossum
 
Type locality: 静岡県 下田市 白浜
Holotype specimen: TNS(国立科学博物館 植物研究部 標本庫)
 
ヒロハコモングサ Spatoglossum latum
体の表面観(採集地:静岡県 下田市 白浜;採集日:1991年6月12日)
 
ヒロハコモングサ Spatoglossum latum
 
ヒロハコモングサ Spatoglossum latum
 
ヒロハコモングサ Spatoglossum latum
体の横断面(採集地:静岡県 下田市 白浜;採集日:1991年6月12日)*1.0% エリスロシン水溶液で染色
 
ヒロハコモングサ Spatoglossum latum
体の横断面のスケッチ(採集地:静岡県 下田市 白浜;採集日:1991年6月12日)
 
ヒロハコモングサの新種記載に用いられたタイプコレクションの液浸標本の表面観と横断面です。外形についてはTanaka (1992)の図か,国立科学博物館のHP「日本の海藻―美しく多様な海藻の世界ー」で公開されている押し葉標本を参考にして頂ければと思います(→ ヒロハコモングサ)。ヒロハコモングサは日本産モンナシグサ属(Spatoglossum)の中で,実体が分からない種の一つです。体の幅が広く,横断面において細胞の層数が少ないことが本種の特徴ですが,細胞の層数については,アツバコモングサ(S. crassumにおいても細胞層が少ないものがみられるため,当てにならないようです。このため,アツバコモングサなのかヒロハコモングサなのか判断に困る標本を多数抱えることになったのですが,遺伝子解析によれば,著者が採集したモンナシグサ属はいずれもアツバコモングサであることが示唆されました。遺伝子解析を基にアツバコモングサの認識を改めましたが,結果的にヒロハコモングサの特徴や実態が分からなくなってしまいました。Tanaka (1992)によれば,ヒロハコモングサはその名の通り,体の幅が顕著に広いようです。縁辺に鋸歯を持たないので,モンナシグサ(S. asperum)とゴアンメ(S. mageshimense)とは異なるようですが,サンプルが少ないため確証はありません。ヒロハコモングサの実態を明らかにするには,タイプ標本あるいはタイプ産地で採集されたサンプルについて遺伝子解析を行うのが有効な方法ですが,著者は下田市でヒロハコモングサに相当するサンプルを見つけたことはなく,タイプ産地周辺でヒロハコモングサを採集するのは難しいと思われます。この場合は博物館に保管されているヒロハコモングサのタイプ標本を用いて遺伝子解析を行うのが通例ですが,ヒロハコモングサのタイプ標本は臭化メチルを含む燻蒸に何度もさらされており,DNAは断片化し,遺伝子解析は困難であると予想されます。唯一期待されるのは,ホルマリン固定されたサンプルを用いて遺伝子解析を行うことですが,ホルマリン固定されたサンプルからのDNA抽出は,方法はあるものの成功率は高くありません。臭化メチルによるDNAの断片化と比べればましだと思うので,やってみる価値はあると思うのですがはたして・・・?
 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2011. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 22 June 2011.
 
Tanaka, J. 1992. Morphology and taxonomy of Spatoglossum latum sp. nov. (Dictyotales, Phaeophyceae) from Japan. Korean Journal of Phycology 7: 23-30.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌. 1222 pp. 内田老鶴圃, 東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 

写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインS A Rストラメノパイル黄藻植物(オクロ植物)門褐藻綱アミジグサ目

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