ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
作成者:鈴木雅大 作成日:2015年6月18日(2020年6月27日更新)
 
ワイジガタクロガシラ(Y字形黒頭)
Sphacelaria rigidula Kützing 1843: 292.
 
黄藻植物(オクロ植物)門(Phylum Ochrophyta),クリシスタ(Chrysista),褐藻綱(Class Phaeophyceae),アミジグサ亜綱(Subclass Dictyotophycidae),クロガシラ目(Order Sphacelariales),クロガシラ科(Family Sphacelariaceae),クロガシラ属(Genus Sphacelaria
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),クロガシラ目(Order Sphacelariales),クロガシラ科(Family Sphacelariaceae),クロガシラ属(Genus Sphacelaria
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),クロガシラ目(Order Sphacelariales),クロガシラ科(Family Sphacelariaceae),クロガシラ属(Genus Sphacelaria
 
Heterotypic synonyms
  Sphacelaria divaricata Montagne 1849: 62.
  ワイジガタクロガシラ Sphacelaria furcigera Kützing 1855: 27, pl. 90: fig. II.
  ジュウタンクロガシラ Sphacelaria expansa Noda 1969: 31, fig. 32.
 
Type locality: Nuweiba, Sinai, Red Sea.
Holotype specimen: L.
 
ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
撮影地:兵庫県 南あわじ市 津井(淡路島);撮影日:2020年6月23日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒジキ(Sargassum fusiformeの体上に着生しています。
 
ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
 
ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
 
ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
 
ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
採集地:兵庫県 南あわじ市 津井(淡路島);採集日:2020年6月23日;撮影者:鈴木雅大
 
ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula   ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
採集地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);採集日:2015年7月3日;撮影者:鈴木雅大
 
ワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula
胚芽枝を付けた枝のスケッチ(採集地:新潟県 佐渡郡 小木町 沢崎(現 佐渡市 沢崎);採集日:2003年2月9日)
 
Keum et al. (2005) による分類学的検討が行われた結果,本種の分類が非常にややこしい状態になっていることが分かりました。かつて日本産のクロガシラ属は,多くの種が乱立し(Takamatsu 1943, Noda 1987など),Kitayama (1994) によって整理されるまで混乱状態にありました。Kitayama (1994) による分類体系はとても分かり易く,胚芽枝の形態によって比較的容易に種を同定することが出来ました。ところが,Keum et al. (2005) が海外及び日本産種を含め,遺伝子を用いた分子系統解析に基づいて種を整理したところ,日本産種の内,「ミツデクロガシラ」,「ヨツデクロガシラ」と呼んでいる種の実態が異なることが明らかになりました。「ミツデクロガシラ」は和名と学名との対応が変わり,「ヨツデクロガシラ」も同様に和名と学名の対応が変わった他,2種を混同していることが指摘されました。ややこしいので以下に従来(Kitayama 1994 および新日本海藻誌 (吉田 1998))の分類体系とKeum et al. (2005) による分類体系をまとめました。
 
Kitayama (1994) および吉田 (1998) によるミツデクロガシラ・ヨツデクロガシラの分類
 胚芽枝が二叉状,三叉状,四叉状になる
   ミツデクロガシラ S. rigidula
 胚芽枝は常に二叉状で左右対称
   ヨツデクロガシラ S. divaricata
 
Keum et al. (2005) に基づくミツデクロガシラ・ヨツデクロガシラの分類
 胚芽枝が二叉状,三叉状,四叉状になる
   ミツデクロガシラ S. fusca (= "S. rigidula" auct. non Kitayama 1994)
 胚芽枝が二叉状で左右対称,かつ腕が二叉に分岐する
   ヨツデクロガシラ S. didichotoma (= "S. divaricata" auct. non Kitayama 1994)
 胚芽枝が二叉状で左右対称,腕はそれ以上分岐しない
   ワイジガタクロガシラ S. rigidula (= S. divaricata)
 

Keum et al. (2005) による分類の結果,これまで「ミツデクロガシラ」に充てられていたS. rigidulaが別の種であること,「ヨツデクロガシラ」に充てられていたS. divaricataS. rigidulaと同種であること,「ヨツデクロガシラ」と呼ばれていたものが腕の分岐の有無によって2種に分けられることが示されました。クロガシラ属の専門家である北山太樹博士はKeum et al. (2005) の分類を受け,日本産海藻目録2015年改訂版(吉田ら 2015)において,ミツデクロガシラとヨツデクロガシラの学名と異名を整理しました。胚芽枝が二叉状で腕がそれ以上分岐しないものは,S. furcigera に相当することから,S. rigidulaにはS. furcigera に用いられていた「ワイジガタクロガシラ」が充てられました。

学名の混乱が続くことが予想されるものの胚芽枝の腕の形態に注意すれば,新しい分類体系でも種同定の混乱は少ないと思います。ただ,胚芽枝の腕の分岐に関しては,未発達の胚芽枝ばかりである場合にどう判断したら良いか分からない点と,Kitayama (1994) が培養によって胚芽枝の腕が分岐を繰り返すことを示している点が問題かもしれません。腕の分岐の有無によってヨツデクロガシラ(S. didichotoma)とワイジガタクロガシラ(S. rigidula)を明確に分けられるかどうか,今後の課題になると思います。

 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2015. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 18 June 2015.
 
Keum, Y.-S., Oak, J.H., Draisma, S.G.A., Prud’Homme van Reine, W.F. and Lee, I.K. 2005. Taxonomic reappraisal of Sphacelaria rigidula and S. fusca (Sphacelariales, Phaeophyceae) based on morphology and molecular data with special reference to S. didichotoma. Algae 20: 1-13.
 
Kitayama, T. 1994. A taxonomic study of the Japanese Sphacelaria (Sphacelariales, Phaeophyceae). Bulletin of the National Science Museum, Tokyo, Ser. B (Botany) 20: 37-141.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 

写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインS A Rストラメノパイル黄藻植物(オクロ植物)門褐藻綱

「生きもの好きの語る自然誌」のトップに戻る