マゲカバノリ Gracilariopsis mageshimensis
作成者:鈴木雅大 作成日:2021年3月9日
 
マゲカバノリ(馬毛樺海苔)
Gracilariopsis mageshimensis Mas. Suzuki & R. Terada 2021: 160, 162. Figs 3-14.
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),オゴノリ目(Order Gracilariales),オゴノリ科(Family Gracilariaceae),オゴノリ亜科(Subfamily Gracilarioideae),ツルシラモ連(Tribe Gracilariopsiseae),ツルシラモ属(Genus Gracilariopsis
 
Type locality: 鹿児島県 馬毛島沖
Holotype specimen: TNS-AL 213799 (国立科学博物館 植物研究部 標本庫)
 
分類に関するメモ:マゲカバノリ(Gracilariopsis mageshimensis)は,Suzuki & Terada (2021) によって,鹿児島県馬毛島沖からツルシラモ属(Gracilariopsis)の新種として記載されました。
 
マゲカバノリ Gracilariopsis mageshimensis
雌性配偶体(採集地:鹿児島県 馬毛島沖;採集日:2019年5月30日;採集者:寺田竜太 博士)
 
正基準標本(Holotype)としたサンプルです。
 
マゲカバノリ Gracilariopsis mageshimensis
四分胞子体(採集地:鹿児島県 馬毛島沖;採集日:2017年7月20日;採集者:寺田竜太 博士)
 
著者が観察に用いた雌性配偶体と四分胞子体は,冷凍保存していたものを解凍しているため,生時よりもやや色が抜けています。
 
マゲカバノリ Gracilariopsis mageshimensis
雌性配偶体の押し葉標本(採集地:鹿児島県 馬毛島沖;採集日:2019年5月30日;採集者:寺田竜太 博士)
 
マゲカバノリ Gracilariopsis mageshimensis
四分胞子体の押し葉標本(採集地:鹿児島県 馬毛島沖;採集日:2017年7月20日;採集者:寺田竜太 博士)
 
鹿児島県馬毛島沖で鹿児島大学水産学部附属実習船「南星丸」を利用して行われたドレッジ調査で採集されたもので,水深35mという深所から採集されました。外見から何の疑いも持たずに「シンカイカバノリ(Gracilaria sublittoralis」と同定していたのですが,遺伝子解析を行ったところ,オゴノリ属(Gracilaria)ではなく,ツルシラモ属(Gracilariopsis)であることが示唆され,腰を抜かすほどビックリしました。ツルシラモ属は,ツルシラモ(Gp. chordaに代表される通り,円柱形をした紅藻で,扁平な形をした種類はいないと思っていたからです。扁平なツルシラモ属の発見だと飛び上がらんばかりに盛り上がりましたが,後にGp. silvanaという扁平なツルシラモ属が記載されていることを知ってしょんぼりしました。気を取り直して形態を観察したところ,嚢果の構造がオゴノリ属ではなく,ツルシラモ属の特徴に当てはまり,形態的特徴からもツルシラモ属であることが示唆されたことから,ツルシラモ属の新種として記載しました(Suzuki & Terada 2021)。

マゲカバノリがツルシラモ属の新種であることは確かであるものの,マゲカバノリとシンカイカバノリを形態的にどうやって区別するかが課題として残されました。馬毛島沖からはシンカイカバノリあるいはシンカイカバノリに近似するオゴノリ属の仲間がマゲカバノリと共に採集されており,これらは遺伝子解析に加え,雄あるいは雌の生殖器官の特徴からも支持されます。しかし,雌雄の生殖器官が見つからない場合,マゲカバノリとシンカイカバノリを形態的に区別することは出来ず,マゲカバノリの四分胞子体は遺伝子解析によってのみ認識できたものです。切片作製と顕微鏡観察が必須であるものの,雄あるいは雌の配偶体ならば問題なく同定出来るので,採集する度に遺伝子解析をする必要はありませんが,四分胞子体や生殖器官を付けていない個体を区別する特徴がないものか観察を続けています。

 
採集直後に撮影されたマゲカバノリ
 
マゲカバノリ Gracilariopsis mageshimensis
 
マゲカバノリ Gracilariopsis mageshimensis
採集地:鹿児島県 馬毛島沖;採集日:2008年7月25日;撮影者:寺田竜太 博士
 
寺田竜太博士(鹿児島大学)が撮影されたマゲカバノリの生態写真です。著者が観察したサンプルと比べて色が鮮やかで,おそらく四分胞子体と考えられる1枚目の写真は,「マゲカバノリらしさ」が良く出ています。マゲカバノリの外見はシンカイカバノリなどの扁平なオゴノリ属(Gracilaria)と酷似しているため,先に述べた通り雌あるいは雄の生殖器官を付けていない個体は,遺伝子解析を行う以外に同定する術がないのですが,色の感じや分枝の様子などでそれなりに区別が付いています。著者が観察した12サンプル中,著者の予想と遺伝子解析の結果が異なっていたのは2サンプルのみでした。とはいえ,今のところ雰囲気で区別しているだけで,確実に外形で区別する特徴は見つかっていません。マゲカバノリらしいと言っても,産地が馬毛島沖でなければカバノリ(Gracilaria textoriiと同定してしまいそうです。雌雄の生殖器官がない個体をどうやって形態的に区別するかが今後の課題です。
 
マゲカバノリの横断面
マゲカバノリの横断面 *1.0%コットンブルー水溶液で染色
 
マゲカバノリの若い嚢果の縦断面
マゲカバノリの若い嚢果の縦断面 *1.0%コットンブルー水溶液で染色
 
ツルシラモ属の嚢果は果皮とゴニモブラスト(造胞子)の間に横断糸と呼ばれる細長い糸状の細胞を持たないことや,ゴニモブラストがオゴノリ属と比べて小さく密に詰まっているのが特徴です。マゲカバノリの嚢果は,横断糸を持たず,小さく密に詰まったゴニモブラストを持っており,マゲカバノリがツルシラモ属の1種であることを裏付けています。
 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2021. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on xxxx.
 
Suzuki, M. and Terada, R. 2021. A new flattened species of Gracilariopsis (Gracilariales, Rhodophyta) from Japan. Phycologia 60: 158-163.
 

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