作成者:鈴木雅大 作成日:2021年1月5日 |
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ボタンアオサ(牡丹石蓴) |
Ulva conglobata Kjellman 1897: 10. Pl. 2, Figs 1-7. Pl. 3, Figs 9-14. |
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緑藻植物門(Phylum Chlorophyta),アオサ藻綱(Class Ulvophyceae),アオサ目(Order Ulvales),アオサ科(Family Ulvaceae),アオサ属(Genus Ulva) |
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*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),アオサ目(Order Ulvales),アオサ科(Family Ulvaceae),アオサ属(Genus Ulva) |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),アオサ目(Order Ulvales),アオサ科(Family Ulvaceae),アオサ属(Genus Ulva) |
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掲載情報 |
岡村 1902: 167; 1918: 58. Pl. 165, Figs 1-10. Pl. 170; 1936: 9; 遠藤 1911: 209; 吉田 1998: 39; Matsumoto & Shimada 2015: 106. Fig. 49, 1-7. Figs 50-59. |
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Heterotypic synonym |
Ulva conglobata f. densa Kjellman 1897: 11. Pl. 2, Figs 8-11. Pl. 3, Fig. 15; 岡村 1902: 167; Matsumoto & Shimada 2015: Fig. 49, 8-11. |
Ulva pseudohnoi H.W. Lee, J.C. Kang & M.S. Kim 2019: 257. Figs 3A, B, D-F. "U. pseudo-ohnoi" |
その他の異名 |
Ulva sp. 1 in Matsumoto & Shimada 2015: 102-104. Figs 6, 8-12, 20-31. |
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Syntype localities: 横浜,五島列島,天草 |
Lectotype specimen: UPS A588132/3 (Museum of Evolution, Uppsala, Sweden) |
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分類に関するメモ:Matsumoto & Shimada (2015) はU. conglobataのタイプ標本を観察し,縁辺部に顕微鏡的な鋸歯を持つことを明らかにしましたが,日本各地で採集したアオサ属のサンプルの中からU. conglobataに相当するサンプルを特定することは出来ませんでした。Hughey et al. (2021) はU. conglobataとU. conglobata f. densaのタイプ標本のrbcL遺伝子の部分配列を決定し,U. conglobataが独立した種であり,Matsumoto & Shimada (2015) が"Ulva sp. 1"としたサンプルがU. conglobataであることを示した他,U. conglobata f. densaは品種としての独立性がないとしてU. conglobataの異名同種(シノニム)としました。Lee et al. (2019) がMatsumoto & Shimada (2015) における"Ulva sp. 1"に相当する新種として記載したU. pseudohnoiはU. conglobataであると考えられます。 |
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ボタンアオサの特徴は,体が重なりあい,和名の通り牡丹の花のような外観になることですが,リボンアオサ(U. lactuca)やアナアオサ(U. australis)が生育時期や場所によって似たような形態になることが知られています(平岡・嶌田 2004)。ボタンアオサの実体について解明が俟たれていましたが,Hughey et al. (2021) によってU. conglobataのタイプ標本の遺伝子解析が行われたことにより,独立した種であることが確かめられ,Matsumoto & Shimada (2015)が神奈川県天神島で採集した"Ulva sp. 1"が真のボタンアオサであることが示されました。"Ulva sp. 1"が真のボタンアオサであったことから,Lee et al. (2019)が韓国済州島で記載したU. pseudohnoiもボタンアオサであると考えられます。
Matsumoto & Shimada (2015) の"Ulva sp. 1"及びLee et al. (2019) のU. pseudohnoiを参考にボタンアオサの形態的特徴を整理すると,体の縁辺に顕微鏡的な鋸歯を持つこと,葉緑体が動かないこと(covering the cells),体の厚さが40-80 μmであることなどが挙げられます。体の外観については,U. pseudohnoiがボタンアオサであったことから,本来のボタンアオサは他のアオサ属と同様に葉状で,通常は高さ25-30 cm位の大きさのものと考えられます。従ってボタンアオサの体が牡丹の花のようになるのはリボンアオサやアナアオサと同様に生育形の1つであると考えるのが妥当でしょう。結論としては,形態的にボタンアオサを同定するのは極めて難しいと考えられ,確実に同定するにはrbcL遺伝子,tufA遺伝子あるいは核コードITS1またはITS2領域の配列を決定し,国際塩基配列データベースで公開されている"Ulva sp. 1" 又はU. pseudohnoi (= U. conglobata)の配列データと比較する必要があるでしょう。 |
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参考文献 |
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Matsumoto, K. and Shimada, S. 2015. Systematics of green algae resembling Ulva conglobata, with a description of Ulva adhaerens sp. nov. (Ulvales, Ulvophyceae). European Journal of Phycology 50: 100-111. |
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岡村金太郎 1902. 日本藻類名彙. 276 pp. 敬業社,東京. |
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岡村金太郎 1918. 日本藻類圖譜 第4巻 第3集. 東京.*自費出版 |
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岡村金太郎 1936. 日本海藻誌. 964 pp. 内田老鶴圃, 東京. |
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遠藤吉三郎 1911. 海産植物学.748 pp. 博文館,東京. |
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吉田忠生 1998. 新日本海藻誌. 1222 pp. 内田老鶴圃, 東京. |
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吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189. |
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