タマネギの表皮細胞の観察 |
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はじめに |
我々が食べているタマネギ(Allium cepa)は鱗茎葉といって,葉に相当する器官です。鱗茎葉の表皮の細胞をはぎ取って観察します。核と細胞壁を観察します。 |
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用意するもの |
顕微鏡:1人1台,タマネギ:中2, 3個,スライドガラス:人数分,カバーガラス:人数分,ピンセット:人数分,シャーレ:人数分,両刃又は片刃カミソリ:人数分,酢酸オルセイン溶液(*):1,2班当り1本,ケント紙:1人1枚,スケール用定規又はミクロメーター:各班1本,まな板,包丁 |
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*:酢酸オルセイン溶液…地衣類の1種から抽出した地衣成分オルシンを酢酸に溶かしたものです。核を染める染色液で,細胞の観察はもちろん体細胞分裂の観察や減数分裂の観察でも良く用いられています。酢酸カーミンよりも安価で手に入り易いことから,近年は酢酸オルセインが主流です。どちらかといえば酢酸カーミンで染めた方がはっきりと染まるように思いますが,実習で使う分には問題ありません。ただ,市販されている酢酸オルセインは,時間が経つとゴミが薬品瓶の底にたまり,染色した時にプレパラートがゴミだらけになってしまう事が良くあります。遠心機があれば実験前に酢酸オルセインを遠心し,上清だけを使うと良いと思います。 |
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観察手順 |
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1. タマネギを包丁で4等分します |
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2. 鱗茎葉を一枚外します。 |
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3. 中央付近にカミソリで約5 mm四方の碁盤目状に切り込みを入れます。 |
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4. ピンセットで薄皮を剥ぎます。 |
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5. 水を張ったシャーレに薄皮を浮かべ,最も薄いものを選び,スライドガラスに乗せます。 |
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6. ピンセットで水を運び,カバーガラスをかけます。 |
*スポイトで水を一滴垂らすのが一般的ですが,ピンセットで構いません。スポイトでは調節が利きませんし,ピンセットならば,観察中に切片が乾いてきた時,顕微鏡からプレパラートを外すことなく水を足すことが出来るので便利です。 |
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細胞の観察 |
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生のタマネギの表皮細胞の顕微鏡写真 |
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染色していない生の細胞の顕微鏡写真です。時間に余裕があれば染色せずに細胞を観察し,核を探してもらうと顕微鏡のコンデンサの絞りや微動ネジを使いこなす訓練になると思います。透明に近い細胞は絞りをしぼった方が鮮明に見える事,微動ネジを動かしてピントを合わせる事が重要なテクニックになります。 |
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酢酸オルセイン溶液で染色したタマネギの表皮細胞 |
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酢酸オルセイン溶液で染色すると核が赤く染まります。 |
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タマネギの表皮細胞のスケッチ |
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観察とスケッチのポイント |
タマネギの鱗茎は地中に埋まっているため,光合成を行わず,葉緑体を持っていません。光学顕微鏡下で観察出来る細胞小器官は核のみです。核を除けば細胞のほとんどは液胞が埋めています。慣れてくると細胞中に張り巡らされた小胞体の膜がうっすらと観察出来ますが,通常の観察では核と細胞壁を観察出来れば十分です。細胞壁は,実際に見えている以上に厚くスケッチしてしまう学生が多いので,出来る限り薄く描かせることを心がけています。 |
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発展学習 |
観察時間に余裕があれば,タマネギの鱗茎葉の内側と外側とで細胞の大きさを比べてみましょう。どちらの細胞が大きいでしょうか。また,それはなぜでしょうか。鱗茎葉は内側から外側に向かって生長します。細胞は生長して大きくなるということを実際に観察して確かめることが,この観察のポイントです。 |
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おまけ:赤タマネギの表皮細胞 |
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赤タマネギの表皮細胞 |
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赤タマネギの赤い部分の細胞はどのようになっているのでしょうか。赤タマネギの鱗茎葉の表皮細胞を観察してみました。赤タマネギの赤い色はアントシアニンという色素に由来するものですが,アントシアニンは水溶性なので細胞が壊れるとすぐに流れ出してしまいます。壊れずに残った細胞を観察すると液胞に詰まったアントシアニンにより真っ赤に染まった細胞を観察できます。 |
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© 2011 Masahiro Suzuki |