アガボオゴノリ Gracilariopsis lemaneiformis auct. non (Bory) E.Y. Dawson, Acleto & Foldvik
作成者:鈴木雅大 作成日:2013年10月22日(2016年2月4日更新)
 
アガボオゴノリ(赤藻海髪)
Gracilariopsis lemaneiformis auct. non (Bory) E.Y. Dawson, Acleto & Foldvik
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),オゴノリ目(Order Gracilariales),オゴノリ科(Family Gracilariaceae),オゴノリ亜科(Subfamily Gracilarioideae),ツルシラモ連(Tribe Gracilariopsiseae),ツルシラモ属(Genus Gracilariopsis
 
掲載情報
吉﨑 1996: 504. Figs 12-21, 12-22; 1998: 281, 558, 559. Fig. 4-82.
 
アガボオゴノリ
押し葉標本(採集地:千葉県 館山市 北条海岸;採集日:2000年11月26日;採集者:鈴木雅大)
 
アガボオゴノリ
押し葉標本(採集地:千葉県 館山市 北条海岸;採集日:2000年11月13日;採集者:鈴木雅大)
 
1993年から2000年頃,千葉県館山市北条海岸で赤くて細長いオゴノリ類が大量に打ち上げられ,海水浴の妨げや景観を害するとして問題になっておりました(ルックたてやま 1993 6号)。このオゴノリ類はツルシラモ(Gracilariopsis chordaと呼ばれ,海水浴シーズンの前には地域の住人達がユンボなどで除去しておりました。著者の恩師 故 吉﨑 誠 先生(東邦大学 名誉教授)は,この赤いオゴノリ類についてルイジアナ大のSuzzane Fredericq博士に意見を求め,ツルシラモではなく,日本新産となるGracilariopsis lemaneiformisと結論付けると共に,和名をアガボオゴノリと名付けました(吉﨑 1996, 1998)。丁度同じ頃,Chirapart et al. (1994, 1995) も高知県土佐湾でGp. lemaneiformisGracilaria sp.及びGracilaria lemaneiformisとして)を確認,報告し,山本 (1998) はChirapartらが報告したG. lemaneiformisにセイヨウオゴノリという和名を付けました。こうして,同じ種類に対して「アガボオゴノリ」と「セイヨウオゴノリ」という和名がほぼ同時に発表され,その後,両方の和名が使われ続けることになりました。ところが,土佐湾の「セイヨウオゴノリ」はGurgel et al. (2003)とKim et al. (2008) による遺伝子解析によって,ツルシラモの誤同定と結論付けられました。

「セイヨウオゴノリ」がツルシラモの誤同定であったことを受け,著者は「アガボオゴノリ」についても実体を調べる必要があると考え,形態観察と遺伝子解析を始めました。ツルシラモは形態変異の激しい種類で,太さや長さが大きく変わります。また,うろ覚えですが1998~2000年頃,神奈川県鎌倉市の海水浴場では,ツルシラモが大量に打ち上がり,海水浴客から足に絡みついて気味が悪いとして駆除されたことがありました。これは千葉県館山市での「アガボオゴノリ」の発生状況に良く似ています。吉﨑(1996, 1998)において,「アガボオゴノリ」をGp. lemaneiformisとした形態的特徴は示されておらず,「アガボオゴノリ」の特徴は「赤い」ということしか分かりません。著者が「アガボオゴノリ」を観察したところ,生殖器官である嚢果の構造から,ツルシラモ属(Gracilariopsis)であることは確認出来ましたが,ツルシラモとの違いは分かりませんでした。この時点で最も有効なのは,「アガボオゴノリ」のDNA鑑定と考えられますが,標本の状態が悪かったのか,未だ遺伝子解析に成功していません。

「アガボオゴノリ」の標本を用いたDNA鑑定がうまくいかないことから,著者は千葉県館山市北条海岸にて生の「アガボオゴノリ」を探しています。かつて,「アガボオゴノリ」は大量発生が問題になるほど繁茂しており,著者も2000年から2001年にかけて何枚もの押し葉標本を作製しました。ところが,現在,北条海岸の「アガボオゴノリ」は全くと言って良いほど見つかりません。駆除しすぎて絶滅してしまったのか,たまたま90年代にのみ大量発生が起こったのか,単に著者の探し方が悪いのか,理由は分かりませんが,かつてあれほど見られた赤いオゴノリ類はどこかにいってしまいました。吉﨑先生は「アガボオゴノリ」はタンカーなどで運ばれてきた移入種ではないかと考えておられました。ある時は大量に繁茂し,その後一気になくなってしまう様子は移入種の特徴といえるのかもしれません。吉﨑先生の標本の多くが東日本大震災によって失われてしまった今,「アガボオゴノリ」の標本は著者が保有している数点と,著者が国立科学博物館植物研究部に寄贈した3点のみとなってしまいました。これらの標本を頼りに,「アガボオゴノリ」の実体解明と今後の対応について検討を続けております。

 
参考文献
 
Chirapart, A., Ohno, M., Sawamura, M. and Kusunose, H. 1995. Phynology and morphology on a new member of Japanese Gracilaria in Tosa Bay, southern Japan. Fisheries Science 61: 411-414.
 
Chirapart, A., Ohno, M. and Yamamoto, H. 1994. Occurrence of a different Gracilaria sp. in Japan. In: Abbott, I. A. ed. Taxonomy of economic seaweeds with reference to some Pacific species. pp. 119-124. California Sea Grant Collage Program, University of California, California.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2013. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 29 July 2013.
 
Gurgel, C.F.D., Liao, L.M., Fredericq, S. and Hommersand, M.H. 2003. Systematics of Gracilariopsis (Gracilariales, Rhodophyta) based on rbcL sequence analyses and morphological evidence. Journal of Phycology 39: 154-171.
 
Kim, M.S., Yang, E.C., Kim, S.Y., Hwang, I.K. and Boo, S.M. 2008b. Reinstatement of Gracilariopsis chorda (Gracilariaceae, Rhodophyta) based on plastid rbcL and mitochondrial cox1 sequences. Algae 23: 209-217.
 
山本弘敏 1998. 3. 13 おごのり目. In: 吉田忠生 著. 新日本海藻誌. pp. 810-826. 内田老鶴圃,東京.
 
吉﨑 誠 1996. 第12章 第2節 海藻. In: 千葉県史料研究財団編. 千葉県の自然誌本編1 千葉県の自然. pp. 503-504. 千葉県.
 
吉﨑 誠 1998. 第4章 第3節 3. 砂浜の藻類,第5章 第2節 10. オゴノリ目. In: 千原光雄 編集代表. 千葉県の自然誌本編4 千葉県の植物1. pp. 277-281, 557-560. 千葉県.
 

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