分類に関するメモ：Hind et al. (2014) はイソキリ（Bossiella cretacea）をサンゴモ（Corallina officinalis）の異名同種（シノニム）としました。Hind et al. (2014) は，イソキリのアイソレクトタイプ標本からDNAを抽出し，rbcL遺伝子の配列を決定し，サンゴモのrbcL遺伝子と一致することから，イソキリをサンゴモと同種と結論付けましたが，決定したrbcL遺伝子の配列（KJ591670）は293 bpで，rbcL遺伝子全長の約20%程度しかありません。イソキリのタイプ産地で採集したサンプル’（KJ591669）も使用していますが，そちらも691bpで全長の約47%でした。rbcL遺伝子を用いた遺伝子解析は全長の80%以上の配列を用いるのが通常だと思います。より長い配列で比較した場合でも同じ結果となるのか疑問がありますが，新たな分類学的検討が行われるまで，本サイトではHind et al. (2014) を採用しました。

Hind & Saunders (2013)は，遺伝子解析において，北海道忍路産のサンプルをC. officinalis var. chilensis（現C. chilensis）として報告しましたが，Hind & Saunders (2013)が公開したサンプルのcox1遺伝子の配列（JQ615721, JQ615722）を，Schipper et al. (2023) により，C. chilensisと判断された遺伝子配列（OQ622293など）と比較したところ，48 bp (7.3%)の差異があり，別種と考えられます。また，国際塩基配列データベースで公開されているC. officinalisのエピタイプの遺伝子配列（FM180073）との差異は，6 bp (1.1%)でした。以上の結果から，Hind & Saunders (2013)がC. officinalis var. chilensisとしたサンプルは，サンゴモ（C. officinalis）とするのが適当と考えられます。