Holotype specimen: CNUK CNU040218 (Chungnam National University)
分類に関するメモ:Grateloupia jejuensisは,Kim et al. (2013) が韓国済州島から記載した種類です。日本産のサンプルとしては神奈川県三崎から報告しています。Carderon et al. (2014) ,Kim et al. (2014) などによる遺伝子解析において,ムカデノリ属(Grateloupia)が多系統群であることが示されています。Carderon et al. (2014) とKim et al. (2014)の遺伝子解析にG. jejuensisは含まれていませんが,Kim et al. (2013) から判断すると,G. jejuensisはヒラキントキ属(Prionitis)のクレードに含まれると考えられます。属の所属について今後の検討が必要と考えられますが,本サイトでは,G. jejuensisを暫定的にムカデノリ属のメンバーとしました。
兵庫県淡路島で確認したGrateloupia jejuensisです。採集・撮影時は,ツノムカデ(G. cornea)と同定していたのですが,枝が長く,藻体が大きいことから,別種ではないかと疑うようになり,遺伝子解析を行ったところ,G. jejuensisであることが判明しました。Kim et al. (2013) によると,G. jejuensisは,枝の幅が広いことでツノムカデと区別出来,G. jejuensisは幅2.0-4.0 mm,ツノムカデは幅1.0-2.0 mmです。また,体構造において皮層を構成する細胞層がツノムカデよりも少なく,内層部の糸状細胞がツノムカデよりも密に詰まっているという違いがあるそうです。残念ながら,著者は形態観察用のサンプルを残していなかったので,体構造の観察は出来なかったのですが,機会があれば確かめてみたいところです。なお,Kim et al. (2013)は,G. jejuensisの体の大きさについて,ツノムカデの原記載である岡村(1913)と比較しているので,体の大きさに顕著な違いはみられないのですが,岡村(1913)をはじめとして,これまで日本で報告された「ツノムカデ」は,G. jejuensisを混同してきた可能性が高いと考えられます。あくまでも著者の個人的な印象になるのですが,ツノムカデは,G. jejuensisよりもコンパクトで,体の大きさや分枝の間隔などに違いがあるようにみえます。あまりにも普通種なので,これまで気にかけることがなかったのですが,ツノムカデとG. jejuensisの違いや分布について,以後気にして採集しようと思いました。
撮影地:神奈川県 三浦市 三崎町 諸磯;撮影日:2011年5月8日;撮影者:鈴木雅大
神奈川県三崎で撮影したG. jejuensisです。撮影時は,ツノムカデ(G. cornea)と同定していたのですが,枝の幅が広いことから同定を改めました。三崎はKim et al. (2013)がG. jejuensisを採集・報告したところなので,G. jejuensisである可能性を考えなかったわけではないのですが,これまでG. jejuensisを認識できておらず,淡路島でG. jejuensisを確認したことで,ようやく判断することができました。
参考文献
Calderon, M.S., Boo, G.H. and Boo, S.M. 2014. Morphology and phylogeny of Ramirezia osornoensis gen. & sp. nov. and Phyllymenia acletoi sp. nov. (Halymeniales, Rhodophyta) from South America. Phycologia 53: 23-36.
Guiry, M. D. and Guiry, G. M. 2021. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 03 January 2021.
Kim, S.Y., Han, E.G., Kim, M.S., Park, J.K. and Boo, S.M. 2013. Grateloupia jejuensis (Halymeniales, Rhodophyta): a new species previously confused with G. elata and G. cornea in Korea. Algae 28: 233-240.
Kim, S.Y., Manghisi, A., Morabito, M., Yang, E.C., Yoon, H.S., Miller, K.A. and Boo, S.M. 2014. Genetic diversity and haplotype distribution of Pachymeniopsis gargiuli sp. nov. and P. lanceolata (Halymeniales, Rhodophyta) in Korea, with notes on their non-native distributions. Journal of Phycology 50: 885-896.