和名の命名において国際藻類・菌類・植物命名規約のような強制力を持つルールはないとはいえ，「クマノカワモズク属」という和名は，大型藻類の命名において違和感を伴うものとなっています。著者は，「ニシノカワモズク属」が適当ではないかと思っていましたが，日本産K. virgatodecaisneanaは，実体不明の可能性があるとのことで（Y.S.氏私信），確かであれば「ニシノカワモズク属」は不適当と考えられます。「藻類における和名の提唱と使用のガイドライン」が参考にしている「魚類の標準和名の命名ガイドライン」の4.2.2に倣えば，タイプ種の和名を属名に充てるのが難しい場合は，日本産で代表的な種の名称を属の和名に充てるのが適当と考えられます。しかし，現在知られている日本産Kumanoa属5種の中から代表的な種を選ぶのは難しいと思われます。現時点では判断がつきませんが，将来的に日本産Kumanoa属が整理され，新種や新産種が記載・報告されるようなことがあれば，代表的な新種／新産種の和名を「クマノカワモズク」と命名とすることで，「クマノカワモズク属」を巡る疑義は解決するのではないかと思います。日本産Kumanoa属の分類学的検討が俟たれていると思います。