日本産海藻リストの編集ルール

2022年11月19日改訂
 
1. 分類体系について
  本リストの分類体系は,概ねAlgaebase (Guiry & Guiry 2022) に沿ったものですが,Algaebaseの情報は直接参考せず,Algaebaseの情報源となった文献を参考にしています。
 
2. 注記(Note)について
  従来の分類体系と異なる箇所や新しく提唱されたもの,その他必要なものについて注記を付けています。
 
3. 掲載している分類群と範囲
  本リストでは海産の大型藻類の内,緑藻類,車軸藻類,紅藻類,褐藻類,黄緑色藻類を掲載しています。群体性のシアノバクテリア(藍藻)や珪藻などにも大型になる種がありますが,本リストでは掲載していません。単細胞性の緑藻類(ミルなどの巨大多核細胞を除く),紅藻類,黄緑色藻類も掲載しませんでした。汽水域に生育するものに関しては、便宜上,海水~汽水域に生育するもののみ掲載し,淡水~汽水域に生育するものや生育範囲のあいまいなものは掲載しませんでした。採録した範囲は吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」に倣い,南は与那国島,小笠原島から北は北海道までの現在の行政範囲としました。
 
4. 学名の著者名
  本リストに掲載している学名の著者名は,The International Plant Names Index (IPNI)に従い,著者名が同一のものについてはイニシャルを付けて区別しました。→ イニシャルを付けて区別する著者名
 
5. 掲載種について
  本リストでは,これまで日本産種として報告されたことのある種,亜種,変種,品種を把握出来る限り,全て掲載しています。ただし,漂着例のみで自生が確認されていない種,化石種として報告されている種,リストに名前があるのみで,同定の根拠が不明なものは除外しています。本リストから除外した種については,本ページの項目11-13を参照ください。
 
6. 異名(シノニム)について
  異名(シノニム)は,これまで日本産種の名前として用いられたことのあるもののみをリストに掲載し,それ以外は詳細情報に掲載しました。同タイプ異名(Homotypic synonym)と異タイプ異名(Heterotypic synonym)を分けて掲載しました。同定の誤りは厳密に言えば異名にはなりませんが,国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)の勧告50Dに従い,"auct. non (auctorum non)"を付けて掲載しました。分類学における「同定の誤り」は「過失」を意味しているものではありません。分類学的研究の進展に伴い,種が異なっていたり,複数の種を混同していたことが明らかとなることはごく普通にあることです。否定的な意味で用いている訳ではないことをご理解下さい。
  「≡」:同タイプ異名(Homotypic synonym)であることを示しています。
  「=」:異タイプ異名(Heterotypic synonym)であることを示しています。
  「xxx xxx auct. non A; B」:Bが xxx xxx とした種はAが命名した xxx xxx ではないことを示しています。*厳密には「xxx xxx auct. non A sensu B」が適当かもしれないため,本リストにおける暫定的な表記です。
 
7. 和名の仮名遣い
  本リストに掲載している和名の仮名遣いは、原則的に「現代仮名遣い」(内閣公示 1986)に従いました(海藻和名問題参照)。和名については学名のように厳格なルールがある訳ではなく、本リストで用いている和名が正式な標準和名であるということではありません。
 
8. 新しい和名
  本リストでは,原則として文献として発表されていない和名は用いず,科名,属名等で便宜上和名が必要なものは学名の読みをカタカナ書きとしています。ただし,1属1種の分類群など種の和名がそのまま属の和名になるようなものについては種の和名を属名としています(例.ミゾオキツノリ属(Fredericqia),オカムラキリンサイ属(Kappaphycopsis)など)。注記は付けていますが,本リストで新しく用いられている和名は、「新称」として正式に発表されたものではないのでご注意ください。
 
9. 分類や命名規約上の問題のある海藻
  国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)に従った正式な発表のなされていない種や非合法な学名も掲載しました。これらの分類学的な問題を抱えている種について,それぞれ注記を付けています。
  nom. illeg.:非合法名(nomen illegitimum,illegitimate name)を意味します。後続同名(later homonym)や不要名(superfluous name)などが含まれます。
  nom. inval.:非正式名(nomen invalidum,invalid name)を意味します。タイプ指定が成されていないもの,指定された言語による記載文や判別文が無いものなどが含まれます。
  nom nud.:裸名(nomen nudum)を意味します。名前だけ掲載され,記載文や判別文に相当するものが無いものを含みます。
 
10. 亜科(subfamily),連(tribe),亜属(subgenus),節(section)
  一部の分類群(アミジグサ目、サンゴモ目、イギス目など)では、亜科や連も掲載しました。ホンダワラ属(Sargassum)については亜属も掲載しました。
 
11. リストから除外した種類(紅藻)
 
Amphiroa ryukyuensis Ishijima
  Ishijima (1938) が沖縄県から記載した化石種です。現生種ではないため,本リストには掲載しませんでした。
Acrochaetium chaetomorphae (Tak. Tanaka & Pham-Hoàng Hô) Heerebou
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Acrochaetium colaconemoides Pham-Hoàng Hô
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Acrochaetium subseriatum Børgesen
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Antithamnion pectinatum (Montagne) Brauner
  Titlyanov et al. (2016)が与那国島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Bangiopsis dumontioides (P. Crouan & H. Crouan) V. Krishnmurth
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Ceramium cingulatum Weber Bosse
  Titlyanov et al. (2016)が与那国島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Ceramium maryae Weber Bosse
  Hata et al. (2002)が沖縄県瀬底島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Ceramium vagans P.C. Silva
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Champia vieillardii Kützing
  Titlyanov et al. (2016)が与那国島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
セイロンソゾ Chondrophycus ceylanicus (J. Agardh) M.J. Wynne, Serio, Cormaci & G. Furnari
  八木 (1939) が"Laurencia ceylanica"として瀬戸内海で報告しましたが,表に名前を挙げているだけで,以後日本での報告はなく,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Chondria littoralis Harvey
  八木 (1939) が瀬戸内海で報告しましたが,同定については「?」としています。以後日本での報告はなく,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Chondria minutula Weber Bosse
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Colaconema gracile (Børgesen) Ateweberhan & Prud'homme
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Corallina elliptica Ishijima
  Ishijima (1932) が記載した化石種です。現生種ではないため,本リストには掲載しませんでした。
Dermatolithon megacrustum (Johnson & Ferris) Ishijima
  Ishijima (1938) が北大東島から報告した化石種です。現生種ではないため,本リストには掲載しませんでした。
ナンカイヒビロード Dudresnaya hawaiiensis R.K.S. Lee
  吉﨑(1993)が八丈島に生育すると述べていますが,標本や記載が無いため,本リストには掲載しませんでした。
Gelidium pusillum var. cylindricum W.R. Taylor
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。また,Kim & Boo (2012) によると,日本で報告されてきた"G. pusillum"はイトテングサ(G. crinaleに相当する事から,同定の誤りの可能性があります。
Ginnania furcellata auct. non (Turner) Zanardini (1843)
  Dickie (1877)が伊豆大島で報告しました。フサノリ(Scinaia japonicaニセフサノリ(S. okamuraeと考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Gracilariopsis longissima (S.G. Gmelin) Steentoft, L.M. Irvine & Farnham
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類です。Gracilaria verrucosa (現Gp. longissima)のことを指しているようですが,北太平洋西岸で"G. verrucosa"と呼ばれていた種は,オゴノリ(Gracilaria vermiculophyllaに相当します。Titlyanov et al. (2019)は,Gp. longissimaとは別にオゴノリも掲載しているので,Titlyanov et al. (2019)が"Gp. longissima"としている種の実体は不明です。いずれにしても表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Griffithsia metcalfii C.K. Tseng
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Halymenia formosa Harvey ex Kützing
  Titlyanov et al. (2016)が与那国島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Herposiphonia obscura Hollenberg
  Hata et al. (2002), Hata & Kato (2003)が沖縄県瀬底島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Heterosiphonia crispella (C. Agardh) M.J. Wynne
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Hydrolithon boreale (Foslie) Y.M. Chamberlain
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Hypnea valentiae (Turner) Montagne
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Hypoglossum attenuatum N.L. Gardner
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Laurencia virgata (C. Agardh) J. Agardh
  Harvey (1857), Martens (1868)が函館で報告しました。Laurencia virgata(現 Laurencia glomerata)はオーストラリアや南アフリカに分布している種類で,これまで日本で報告されたことはなく,別種の可能性が高いと考えられます。実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Lithophyllum incrustans Philippi
  岡村(1902, 1936)などに掲載された種ですが,エゾイシゴロモ(Lithophyllum yessoense)に含まれることが示唆されており,馬場・加藤(2023)は,日本産種から除外しました。
Lithoporella quadratica Ishijima
  Ishijima (1933) が静岡県から記載した化石種です。現生種ではないため,本リストには掲載しませんでした。
Lophosiphonia cristata Falkenberg
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Mesophyllum yabei Ishijima
  Ishijima (1942) が神奈川県から記載した化石種です。現生種ではないため,本リストには掲載しませんでした。
Neoizziella divaricata (C.K. Tseng) Showe M. Lin, S.Y. Yang & Huisman
  大葉(1995)が"Liagora divaricata"として沖縄県阿嘉島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Palisada concreta (A.B. Cribb) K.W. Nam
  Titlyanov et al. (2016)が与那国島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Peyssonnelia obscura Weber Bosse
  大葉(1995)が沖縄県阿嘉島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Polysiphonia coacta C.K.Tseng
  Hata et al. (2002), Hata & Kato (2003)が沖縄県瀬底島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Polysiphonia denudata (Dillwyn) Greville ex Harvey
  八木 (1939) が"Polysiphonia variegata"として瀬戸内海で報告しましたが,表に名前を挙げているだけで,以後日本での報告はなく,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Polysiphonia sphaerospora Børgesen
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Polysiphonia subtilissima Montagne
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Polysiphonia villum J. Agardh
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Prionitis australis (J. Agardh) J. Agardh
  Yendo (1916) が伊豆,相模,志摩から報告しましたが,同定は疑わしいとしています。岡村(1936)は,Carpopeltis属であると指摘しています。実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Womersleyella setacea (Hollenberg) R.E. Norris
  Hata et al. (2002) が沖縄県瀬底島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
 
12. リストから除外した種類(緑藻)
 
Chaetomorpha minima Collins & Hervey
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Cladophoropsis membranacea (Hofman Bang ex C.Agardh) Børgesen
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Codium geppiorum O.C. Schmidt
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Halicystis pyriformis Levring
  Titlyanov et al. (2016)が与那国島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Penicillus sibogae A. Gepp & E.S. Gepp
  Hata et al. (2002), Hata & Kato (2003)が沖縄県瀬底島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Phycoseris gigantea var. perforata Kützing
Phycoseris lapathifolia Kützing
Phycoseris lobata Kützing
  Martens (1868) が横浜,横須賀,長崎などで報告しています。これらの種はいずれもアオサ属(Ulva)の1種と考えられますが,これまで日本で報告されたことはなく,Martens (1868) の記述から種を判断することもできないため,本リストには掲載しませんでした。
Ulva lactuca var. lacinulata (Kützing) W.R. Taylor
  大葉(1995)が"Ulva lactuca f. lacinulata"として沖縄県阿嘉島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Ulva simplex auct. non (K.L. Vinogradova) H.S. Hayden et al. (2003)
  Ogawa et al. (2013) は福井県三方五湖,南川,茨城県涸沼で"Ulva simplex"を採集,報告しました。Hiraoka et al. (2017) は,Ogawa et al. (2013) が報告した"U. simplex"は,U. simplexとは別種であるとして"Ulva simplex sensu Ogawa et al."としました。その後,Cui et al. (2018) はU. simplexスジアオノリ(U. proliferaの異名(シノニム)としています。"Ulva simplex sensu Ogawa et al."は,U. simplexとは別種と考えられるものの,現時点では種の判断が付かないため,リストには本掲載しませんでした。
Ulvella leptochaete (Huber) R. Nielsen, O'Kelly & Wysor
  Titlyanov et al. (2019)が熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Ulvella viridis (Reinke) R. Nielsen, O'Kelly & Wysor
  Titlyanov et al. (2016)が与那国島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
 
13. リストから除外した種類(褐藻)
 
Castraltia salicornoides A. Richard
  Martens (1868) が横浜で報告しました。Castraltia salicornoides(現Scaberia agardhii)はオーストラリアに分布している種類で,これまで日本で報告されたことはなく,別種の可能性が高いと考えられます。実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Cladosiphon erythraeus J. Agardh
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Cladosiphon erythraeusNemacystus erythraeusの異名同種(シノニム)ですが,N. erythraeusがこれまで日本で報告されたことはなく,モズク(N. decipiensかそれに近い仲間と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Dictyopteris camiguinensis Tak. Tanaka
  大葉(1995)が沖縄県阿嘉島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Haplosiphon filiformis auct. non Ruprecht (1850)
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Haplosiphon filiformisはイトマツモ(Analipus filiformis)の異名同種(シノニム)ですが,Martens (1868) が報告した"H. filiformis"はツルモ属(Chorda)の1種と考えられます。分布域からツルモ(Chorda asiaticaと考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
ブルウキモ Nereocystis luetkeana (K. Mertens) Postels & Ruprecht
  Nereocystis luetkeanaは,北海道や岩手県に漂着したことがあり(岡村 1929, 1931, 時田 1939, 1962,川嶋 1986など),「ブルウキモ」と名付けられていますが,北アメリカ大陸西部に分布し,日本での自生は確認されていないため,本リストには掲載しませんでした。
Sargassum acinarium auct. non (Linnaeus) Setchell (1933)
  Martens (1868) が日本(産地不明)で報告しました。Yendo (1907) によるとフシスジモク(Sargassum confusumと考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Sargassum fuliginosum auct. non Kützing (1849)
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Yendo (1907) によるとフシスジモク(Sargassum confusumと考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
Sargassum japonicum Sonder
  Grunow (1916 p.16) に日本(産地不明)として掲載されています。初出が分からないため本リストへの掲載は保留しました。仮にGrunow (1916) が初出ならば,S. japonicum (G. Martens) Kuntze (1880) (オオバモク S. ringgoldianumの異名)の後続同名(later homonym)となるため,国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)において非合法名(illegitimate name)となります。
Sargassum subrepandum auct. non (Forsskål) C. Agardh (1820)
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Yendo (1907) によると別種と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
ヒラエモク Sargassum swartzii C. Agardh
  大葉(1995)が沖縄県阿嘉島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Sphacelaria novae-holandiae Sonder
  Titlyanov et al. (2016, 2019)が与那国島と熊本県天草で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Turbinaria condensata Sonder
  大葉(1995)が沖縄県阿嘉島で報告しました。これまで日本で報告されたことの無い種類ですが,表に名前を挙げているだけで,同定の根拠が不明のため,本リストには掲載しませんでした。
Zonaria durvillei auct. non (Bory) Kützing (1849)
  Martens (1868) が横浜と長崎で報告しました。Zonaria durvilleiPadina durvilleiの異名同種(シノニム)ですが,P. durvilleiがこれまで日本で報告されたことはなく,分布域からウミウチワ(P. arborescensと考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,本リストには掲載しませんでした。
 
参考文献
 
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日本産海藻リスト
 
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