日本産海藻リストの編集ルール

2020年12月1日改訂
 
1. 分類体系について
  本リストの分類体系は,概ねAlgaebase (Guiry & Guiry 2020) に沿ったものですが,Algaebaseの情報は直接参考せず,Algaebaseの情報源となった文献を参考にしています。
 
2. 注記(Note)について
  吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」の分類体系と異なる箇所や新しく提唱されたもの,その他必要なものについて注記を付けています。
 
3. 掲載している分類群と範囲
  本リストでは海産の大型藻類の内,緑藻類,車軸藻類,紅藻類,褐藻類,黄緑色藻類を掲載しています。群体性のシアノバクテリア(藍藻)や珪藻などにも大型になる種がありますが,本リストでは掲載していません。単細胞性の緑藻類(ミルなどの巨大多核細胞を除く),紅藻類,黄緑色藻類も掲載しませんでした。汽水域に生育するものに関しては、便宜上、海水~汽水域に生育するもののみ掲載し、淡水~汽水域に生育するものや生育範囲のあいまいなものは掲載しませんでした。採録した範囲は吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」に倣い、南は与那国島、小笠原島から北は北海道までの現在の行政範囲としました。
 
4. 学名の著者名
  本リストに掲載している学名の著者名は,The International Plant Names Index (IPNI)に従い,著者名が同一のものについてはイニシャルを付けて区別しました。→ イニシャルを付けて区別する著者名
 
5. 掲載種について
  本リストでは,これまで日本産種として報告されたことのある種,亜種,変種,品種を把握出来る限り,全て掲載しています。本リストから除外した種については,本ページの項目11-13を参照ください。また,以下の種は吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」には掲載されておらず,本リスト独自の判断で掲載しているものです。
  吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」に掲載されていない種:野田光蔵博士が記載・報告したが,実体不明と考えられている種(Noda 1987他多数),Martens (1868), Holmes (1896),Yendo (1902, 1915),八木(1939, 1957, 1961, 1962, 1964),Segi (1951), Iwamoto (1960),Itono (1972),Cordero (1975), 大葉(1995),吉﨑(1993, 1998, 2008)が報告した日本新産種や未記載種。
 
6. 異名(シノニム)について
  本リストでは,これまで日本で用いられたことのある異名同種(シノニム)は,出来る限り掲載するよう努め,同タイプ異名(Homotypic synonym)と異タイプ異名(Heterotypic synonym)を分けて掲載しました。同定の誤りは厳密に言えば異名にはなりませんが,国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)の勧告50Dに従い,"auct. non (auctorum non)"を付けて掲載しました。分類学における「同定の誤り」は「過失」を意味しているものではありません。分類学的研究の進展に伴い,種が異なっていたり,複数の種を混同していたことが明らかとなることはごく普通にあることです。否定的な意味で用いている訳ではないことをご理解下さい。
  「≡」:同タイプ異名(Homotypic synonym)であることを示します。
  「=」:異タイプ異名(Heterotypic synonym)であることを示します。
  「xxx xxx auct. non A; B」:Bが xxx xxx とした種はAが命名した xxx xxx ではないという意味
 
7. 和名の仮名遣い
  本リストに掲載している和名の仮名遣いは、原則的に「現代仮名遣い」(内閣公示 1986)に従いました(海藻和名問題参照)。和名については学名のように厳格なルールがある訳ではなく、本リストで用いている和名が正式な標準和名であるということではありません。
 
8. 新しい和名
  本リストでは,原則として文献として発表されていない和名は用いず,属名等で便宜上和名が必要なものは学名の読みをカタカナ書きとしています。ただし,1属1種の分類群など種の和名がそのまま属の和名になるようなものについては和名を付けています(例.オゴノリ属(Agarophyton)など)。注記は付けていますが,本リストで新しく用いられている和名は、「新称」として正式に発表されたものではないのでご注意ください。
 
9. 分類や命名規約上の問題のある海藻
  国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)に従った正式な発表のなされていない種や非合法な学名も掲載しました。これらの分類学的な問題を抱えている種について,それぞれ注記を付けています。
  nom. illeg.:非合法名(nomen illegitimum,illegitimate name)を意味します。後続同名(later homonym)などが含まれます。
  nom. inval.:非正式名(nomen invalidum,invalid name)を意味します。タイプ指定が成されていないもの,指定された言語による記載文や判別文が無いものなどが含まれます。
  nom nud.:裸名(nomen nudum)を意味します。名前だけ掲載され,記載文や判別文に相当するものが無いものを含みます。
 
10. 亜科(subfamily),連(tribe),亜属(subgenus),節(section)
  一部の分類群(アミジグサ目、サンゴモ目、イギス目など)では、亜科や連も掲載しました。ホンダワラ属(Sargassum)については亜属も掲載しました。
 
11. リストから除外した種類(紅藻)
 
Ginnania furcellata auct. non (Turner) Zanardini; Dickie (1877)
  Dickie (1877)が伊豆大島で報告しました。フサノリ(Scinaia japonica)かニセフサノリ(S. okamurae)と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Laurencia virgata (C. Agardh) J. Agardh
  Harvey (1857), Martens (1868)が函館で報告しました。Laurencia virgata(現 Laurencia glomerata)はオーストラリアや南アフリカに分布している種類で,これまで日本で報告されたことはなく,別種の可能性が高いと考えられます。実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
 
12. リストから除外した種類(緑藻)
 
Phycoseris gigantea var. perforata Kützing
Phycoseris lapathifolia Kützing
Phycoseris lobata Kützing
Ulva latissima auct. non Linnaeus; Martens (1868)
  Martens (1868) が横浜,横須賀,長崎などで報告しています。これらの種はいずれもアオサ属(Ulva)の1種と考えられますが,これまで日本で報告されたことはなく,Martens (1868) の記述から種を判断することもできないため,リストには掲載しませんでした。
 
13. リストから除外した種類(褐藻)
 
Castraltia salicornoides A. Richard
  Martens (1868) が横浜で報告しました。Castraltia salicornoides(現Scaberia agardhii)はオーストラリアに分布している種類で,これまで日本で報告されたことはなく,別種の可能性が高いと考えられます。実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Cladosiphon erythraeus J. Agardh
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Cladosiphon erythraeusNemacystus erythraeusの異名同種(シノニム)ですが,N. erythraeusがこれまで日本で報告されたことはなく,モズク(N. decipiens)と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Haplosiphon filiformis auct. non Ruprecht; Martens (1868)
  Haplosiphon filiformisはイトマツモ(Analipus filiformis)の異名同種(シノニム)ですが,Martens (1868) が長崎で報告した"H. filiformis"はツルモ属(Chorda)の1種と考えられます。分布域からツルモ(Chorda asiatica)と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Sargassum acinarium auct. non (Linnaeus) Setchell; Martens (1868)
  Martens (1868) が日本(産地不明)で報告しました。Yendo (1907) によるとフシスジモク(Sargassum confusum)と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Sargassum fuliginosum auct. non Kützing; Martens (1868)
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Yendo (1907) によるとフシスジモク(Sargassum confusum)と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Sargassum obtusifolium auct. non J. Agardh; Martens (1868)
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Yendo (1907) によると別種と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Sargassum subrepandum auct. non (Forsskål) C. Agardh; Martens (1868)
  Martens (1868) が長崎で報告しました。Yendo (1907) によると別種と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
Zonaria durvillei auct. non (Bory) Kützing; Martens (1868)
  Martens (1868) が横浜と長崎で報告しました。Zonaria durvilleiPadina durvilleiの異名同種(シノニム)ですが,P. durvilleiがこれまで日本で報告されたことはなく,分布域からウミウチワ(P. arborescens)と考えられますが,実体を明らかにするのは困難と考えられるため,リストには掲載しませんでした。
 
参考文献
 
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Harvey, W.H. 1857. Algae. In: Account of the Botanical specimens. (Gray, A. ed.) Narrative of the expedition of an American squadron to the China Seas and Japan, performed in the years 1852, 1853 and 1854, under the command of Commodore M.C. Perry, United States Navy. Volume II - with illustrations. pp. 331-332. Senate of the Thirty-third Congress, Second Session, Executive Document. House of Representatives, Washington.
 
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吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 
吉﨑 誠. 1993. Dudresnaya japonica Okamura(ヒビロウド). In: 堀 輝三 編. 藻類の生活史集成第2巻褐藻・紅藻類. pp. 258-259. 内田老鶴圃,東京.
 
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吉﨑 誠 2008. 藻類採集地案内 千葉県銚子半島. 藻類 56: 217-224.
 
 
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