ウミウチワ Padina arborescens
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年6月22日(2023年6月10日更新)
 
ウミウチワ(海団扇)
Padina arborescens Holmes 1896: 251. Pl. 12, Fig. 1
 
不等毛植物門(Phylum Heterokontophyta),クリシスタ(Chrysista),褐藻綱(Class Phaeophyceae),アミジグサ亜綱(Subclass Dictyotophycidae),アミジグサ目(Order Dictyotales),アミジグサ科(Family Dictyotaceae),シマオウギ連(Tribe Zonarieae),ウミウチワ属(Genus Padina
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),アミジグサ目(Order Dictyotales),アミジグサ科(Family Dictyotaceae),ウミウチワ属(Genus Padina
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),アミジグサ目(Order Dictyotales),アミジグサ科(Family Dictyotaceae),ウミウチワ属(Genus Padina
 
掲載情報
岡村 1902: 109; 1929: 3. Pl. 251, Fig. 10; 1936: 182. Fig. 94; Noda 1965: 34; 1969: 40. Fig. 35, no. 1; 1987: 147. Fig. 120, no. 1; 吉田・田中 1998: 224-225. Pl. 2-9, Fig. J; Ni-Ni-Win・川井 2021: 144, 146. Figs 3a, b.
 
Type locality: 神奈川県 藤沢市 江ノ島
Type specimen: BM000563451 (The Natural History Museum, London)
 
ウミウチワ Padina arborescens
 
ウミウチワ Padina arborescens
撮影地:三重県 志摩市 志摩町 片田;撮影日:2017年4月14日;撮影者:鈴木雅大
 
ウミウチワ Padina arborescens
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2019年4月22日;撮影者:鈴木雅大
 
ウミウチワ Padina arborescens
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2018年6月14日;撮影者:鈴木雅大
 
撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋 田ノ代海岸(淡路島);撮影日:2020年7月2日;撮影者:鈴木雅大
 
ウミウチワ Padina arborescens
押し葉標本(採集地:新潟県 両津市 住吉(現 佐渡市 住吉);採集日:2003年4月29日;採集者:鈴木雅大)
 
ウミウチワ Padina arborescens
押し葉標本(採集地:千葉県 安房郡 白浜町 根本(現 南房総市 根本);採集日:2004年6月19日;採集者:鈴木雅大)
 
太平洋沿岸中部や日本海沿岸の磯で普通に見られる海藻です。独特の形から他種と間違える事はありませんが,生育末期になると色が赤褐色を帯びる,縁辺部が消失する,体が薄い,などの形態変異が見られ,一見すると別種のような外観を呈する事があります。4月に撮影,採集した標本と6,8月に撮影,採集した標本とを比べると見た目が大きく異なることが分かると思います。正確に同定するには横断あるいは縦断切片を作製し,細胞層が10層に達することを確かめる必要があります。
 
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2023年6月4日;撮影者:鈴木雅大
 
  ウミウチワ Padina arborescens   ウミウチワ Padina arborescens  
体縁辺部の縦断面 *1.0%エリスロシン水溶液で染色しているため赤く見えます。
 
ウミウチワ Padina arborescens
体縁辺部の縦断面のスケッチ
 
ウミウチワを始めとしたウミウチワ属(Padina)は,縁辺が内側に巻き込みます。縁辺に並ぶ生長細胞を保護するためと言われています。*文献未確認。
 
  ウミウチワ Padina arborescens   ウミウチワ Padina arborescens  
体の縦断面(左図)と横断面(右図)
 
ウミウチワ Padina arborescens
体の縦断面のスケッチ(左図は体下部,右図は先端付近から約5 mm)
 
体の横断面
体の横断面
 
ウミウチワ Padina arborescens
体の横断面のスケッチ
 
ウミウチワ(Padina arborescens)は,日本産のウミウチワ属(Padina)の中で最も良くみられる普通種です。他と間違える種は少ないものの,Ni-Ni-Win・川井(2021)によると,九州地方や南西諸島ではハイウミウチワ(P. imbricataのように外形が酷似する種類が分布しています。外形だけで判断が出来ない場合は,横断切片を作製し,細胞層を数えることで同定することが出来ます。ウミウチワは体が厚く,皮層を含めた細胞層が10層を超えます。日本産種でウミウチワほど厚い種類はないので,細胞層が10層以上あればウミウチワと同定して構わないと思います。
 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2011. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 22 June 2011.
 
Holmes, E.M. 1896. New marine algae from Japan. Journal of the Linnean Society of London, Botany 31: 248-260, pls VII-XII.
 
Ni-Ni-Win・川井浩史 2021. 日本産ウミウチワ属の分類の再検討.藻類 69: 139-154.
 
Noda, M. 1965. The species of Dictyotaceae from Sado Island in the Japan Sea. Science Reports of Niigata University Series D (Biology) 2: 27-35.
 
Noda, M. 1969. The species of Phaeophyta from Sado Island in the Japan Sea. Science Reports of Niigata University Series D (Biology) 6: 1-64.
 
Noda, M. 1987. Marine algae of the Japan Sea. 557 pp. Kazama-shobo, Tokyo.
 
岡村金太郎 1902. 日本藻類名彙.276 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
岡村金太郎 1929. 日本藻類圖譜 第6巻 第1集.内田老鶴圃,東京.
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189.
 
吉田忠生・田中次郎 1998. 2.5 あみじぐさ目 Dictyotales. In: 吉田忠生 著.新日本海藻誌.pp. 205-234. 内田老鶴圃,東京.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインS A Rストラメノパイル不等毛植物門褐藻綱アミジグサ目
 
日本産海藻リスト不等毛植物門褐藻綱アミジグサ亜綱アミジグサ目アミジグサ科シマオウギ連ウミウチワ属ウミウチワ
 
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