ヒジキ Sargassum fusiforme
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2012年5月3日(2018年4月28日更新)
 
ヒジキ(鹿尾菜)
Sargassum fusiforme (Harvey) Setchell 1931: 248.
 
黄藻植物(オクロ植物)門(Phylum Ochrophyta),褐藻綱(Class Phaeophyceae),ヒバマタ亜綱(Subclass Fucophycidae),ヒバマタ目(Order Fucales),ホンダワラ科(Family Sargassaceae),ホンダワラ属(Genus Sargassum),バクトロフィクス亜属(Subgenus Bactrophycus),ヒジキ節(Section Hizikia
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),ヒバマタ目(Order Fucales),ホンダワラ科(Family Sargassaceae),ヒジキ属(Genus Hizikia)*Hizikia fusiformisとして
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),ヒバマタ目(Order Fucales),ホンダワラ科(Family Sargassaceae),ホンダワラ属(Genus Sargassum
 
掲載情報
吉田 2001: 38-39. Figs 1, 2; 島袋 2016: 445. Figs 1-7, 9; 2017: 631-633. Figs 1-9, 11; 香村・岩永 2018: 633-634.
 
Basionym
  Cystophyllum fusiforme Harvey 1860: 328.
Homotypic synonym
  Cystoseira siliquastra (Mertens ex Turner) C. Agardh 1824: 288.
  Turbinaria fusiformis (Harvey) Yendo 1907: 44. Pl. 4, Figs 1-7; 1909: 88; 1911: 449. Figs 131, 138, 139; 岡村 1914: 109. Pl. 128, Figs 1, 4-6.
  Hizikia fusiformis (Harvey) Okamura 1932: 99; 1936: 314. Fig. 165; 新井 1993: 167. Fig. 83; 吉田 1998: 367-368. Pl. 2-31, Fig. A.
 
Type locality: 静岡県 下田
Type specimen: TCD herb. Harvey (Trinity College, Dublin, Ireland)
 
兵庫県版レッドデータブック2020:B;沖縄県版レッドデータブック第3版(2018):絶滅危惧II類(VU)
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
撮影地:神奈川県 三浦市 三崎町 小網代 荒井浜;撮影日:2010年4月29日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
ヒジキとイシゲの帯状分布(撮影地:神奈川県 三浦市 三崎町 小網代 荒井浜;撮影日:2010年4月29日)
 
ヒジキとイシゲ(Ishige okamuraeは本州太平洋中部沿岸の磯の代表種で,春に磯に行くと2種による顕著な帯状分布がみられます。
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋(淡路島);撮影日:2015年5月2日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
撮影地:徳島県 鳴門市 北灘町 牛の鼻;撮影日:2018年4月26日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2016年12月25日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒジキ Sargassum fusiforme
押し葉標本(採集地:静岡県 下田市 大浦海岸;採集日:2005年5月10日;採集者:鈴木雅大)
 
ヒジキの葉と気胞
葉と気胞
 
ヒジキの付着器
繊維状の付着器
 
佐渡島のヒジキ
 
佐渡島のヒジキ
押し葉標本(採集地:新潟県 両津市 住吉(現 佐渡市 住吉);採集日:2000年4月)
 

ヒジキは太平洋沿岸や瀬戸内海ではごく当たり前にみられる海藻ですが,日本海側に行くとほとんど見られなくなります。著者は,故吉﨑 誠博士(東邦大学名誉教授)の指導の元,2000~2002年まで新潟県佐渡島の海藻を調査し,2002年に新潟県佐渡島の岩首というところでヒジキを1個体だけ確認しましたが,その後は二度と目にする機会はありませんでした。カメラを持っていなかったので写真は無く,消失を恐れて採集しなかったので標本もありません。結果的に「幻の海藻」となってしまいましたが,故矢田政治氏(両津市郷土博物館館長)が2002年に自費出版された「ライフワーク佐渡」の表紙にヒジキの写真が掲載されておりました。採集地・採集日の情報はありませんが,画像として記録された佐渡島のヒジキとしては唯一のものです。その後長らく佐渡島のヒジキを忘れていたのですが,2014年に新潟大学の方から,著者が2002年に作成した佐渡島の海藻リストが欲しいと言われ,久しぶりに佐渡島の海藻を見直していたところ,ヒジキのことを思い出しました。海藻リストを2014年版に改訂するため,国立科学博物館植物研究部に収蔵されている佐渡島産海藻標本を調べたところ,矢田先生が寄贈された標本が多数あることが分かり,さらに佐渡島産のヒジキの標本が2枚見つかりました。画像は見つかった2枚の標本の内の1枚です。幻と言われた佐渡のヒジキが証拠標本と共に記録に残されたことは大変感慨深いです。

それにしても,日本海側のヒジキは不思議です。日本海側の潮間帯は太平洋側の半分以下の幅しかないため,潮間帯の代表種であるヒジキの生育に適した帯位が少ないというのは理屈として分かります。著者が不思議に思うのは,おそらく生育に適さないであろう環境の中でなぜ絶滅することなく生育を続けているのかという点です。佐渡島で数年に一度見つかるような状況から考えると,「対馬海流によって流されてきた漂流個体から放出された受精卵がたまたま定着した時だけ生長する」ということでしょうか。日本海沿岸におけるヒジキの正確な分布域や生育状況が分からないので憶測の域を出ませんが,面白い分布パターンや生存戦略がみられるのではないでしょうか。また,ヒジキと同じようなことがイシゲでも起きており,太平洋中部沿岸を代表する2種と日本海との関係は大変興味深いです。

 
台湾東北部のヒジキ
 
台湾東北部のヒジキ
撮影地:台湾 基隆市 潮境(ChaoJing, Keelung, Taiwan);撮影日:2009年7月24日;撮影者:鈴木雅大
 
台湾で自生しているヒジキです。沖縄にも分布しているのでそれほど驚くことでもないかもしれませんが,台湾では珍しい種類の一つです。台湾の東北部(東北角)は,大陸からの寒流の影響を受けるため,暖温帯性の海藻がみられます。ヒジキもその一つです。自生している個体は少なく,磯に数個体点在する程度で群落は作りません。
 
台湾東北部のヒジキ
押し葉標本(採集地:台湾 台北郡 龍洞湾;採集日:2009年5月18日;採集者:鈴木雅大)
 
台湾東北部では,自生するもの以外に,大陸から流れ藻となって漂着したと考えられる個体が打ち上がります。このようにして流れてきたものの一部が磯に定着しているのだろうと考えていますが,この漂着個体がどこから流れてきているのか,本当に大陸から来ているのか気になるところです。
 
ヒジキの乾場
 
ヒジキの乾場
 
ヒジキの乾場
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2018年5月15日;撮影者:鈴木雅大
 
食品としてのヒジキ
 
水に戻したヒジキ
水に戻したヒジキ(三重県産)
 
ヒジキの煮物
ヒジキの煮物
 
 
参考文献
 
新井章吾 1993. ヒジキ.In: 堀 輝三(編) 藻類の生活史集成 第2巻 褐藻・紅藻類.pp. 166-167. 内田老鶴圃,東京.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2012. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 3 May 2012.
 
Harvey, W.H. 1860. Characters of new algae, chiefly from Japan and adjacent regions, collected by Charles Wright in the North Pacific Exploring Expedition under Captain James Rodgers. Proceedings of the American Academy of Arts and Sciences 4: 327-335.
 
香村眞徳・岩永洋志登 2018. ヒジキ.In: 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-.pp. 633-634. 沖縄県環境部自然保護課,沖縄.
 
岡村金太郎 1914. 日本藻類圖譜 第3巻 第6集.東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1932. 日本藻類圖譜 第6巻 第10集.東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
Setchell, W.A. 1931. Hong Kong seaweeds, II. Hong Kong Naturalist 2: 237-253.
 
島袋寛盛 2016. 日本産南方系ホンダワラ属 23回目:南日本沿岸域に分布するヒジキ.海洋と生物 38: 444-449.
 
島袋寛盛 2017. 日本産温帯性ホンダワラ属 5回目:ヒジキ.海洋と生物 39: 631-637.
 
矢田政治 2002. ライフワーク佐渡.265 pp. *自費出版.
 
Yendo, K. 1907. The Fucaceae of Japan. Journal of the College of Science, Tokyo Imperial University 21: 1-174.
 
遠藤吉三郎 1909. 莫語花.175 pp. 裳華房,東京.
 
遠藤吉三郎 1911. 海産植物学.748 pp. 博文館,東京.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生 2001. ヒジキの学名について.藻類 49: 38-39.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインS A Rストラメノパイル黄藻植物(オクロ植物)門褐藻綱 ヒバマタ目ホンダワラ科ホンダワラ属
 
日本産海藻リスト黄藻植物門褐藻綱ヒバマタ亜綱ヒバマタ目ホンダワラ科ホンダワラ属バクトロフィクス亜属ヒジキ節ヒジキ
 
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