シーラカンス Latimeria chalumnae
 
作成:鈴木雅大 作成日:2010年10月28日(2017年11月28日更新)
 
シーラカンス(別名:コモロシーラカンス,英名:West Indian Ocean Coelacanth)
Latimeria chalumnae Smith, 1939
 
動物界(Kingdom Animalia),左右相称動物亜界(Subkingdom Bilateralia),新口動物(後口動物)下界(Infrakingdom Deuterostomia),脊索動物上門(Superphylum Chordata),脊椎動物門(Phylum Vertebrata),顎口下門(Infraphylum Gnathostomata),肉鰭上綱(Superclass Sarcopterygii),総鰭綱(Class Coelacanthimorpha),シーラカンス目(Order Coelacanthiformes),ラチメリア科(Family Latimeriidae),ラチメリア属(Genus Latimeria
 
*1. Nelson et al. (2016) "Fish of the World fifth edition"における分類体系:硬骨魚綱(Class Osteichthyes),肉鰭亜綱(Subclass Sarcopterygii),総鰭下綱(Infraclass Actinistia),シーラカンス目(Order Coelacanthiformes),ラチメリア科(Family Latimeriidae)
*2. Betancur-R et al. (2017) "Phylogenetic classification of bony fishes"における分類体系:硬骨魚巨綱(Megaclass Osteichthyes),肉鰭上綱(Superclass Sarcopterygii),総鰭綱(Class Coelacanthimorpha),シーラカンス目(Order Coelacanthiformes),ラチメリア科(Family Latimeriidae)
 
シーラカンスの魚拓
東京大学理学部2号館に飾られている魚拓(1981年12月31日にグランドコモロ島沖で捕獲されたもの)
 
言わずと知れた「生きている化石」の代表です。1938年に南アフリカで発見され,世界に大きな衝撃を与えました。その後,数々の調査が行われ,生きたシーラカンスの動画も撮影されるなど,その生態が徐々に明らかになりつつあります。シーラカンス目は古生代デボン紀(約4億1600万年前から約3億6700万年前)に世界全域の淡水,汽水,海水域に生息,繁栄していたと考えられ,化石記録から9科26属が知られています。中生代末期(約6,500万年前)に恐竜などと共に,現生の2種(シーラカンス(Latimeria chalumnae)とインドネシアシーラカンス(Latimeria menadoensis))を除いて絶滅したと考えられています。余談ですが,シーラカンスという名前は,化石種のCoelacanthus属の英語読みです。Coelacanthusを学名通り読むならコエラカントス,コエラカントゥスもしくはコエルアカントゥスとなりますが,ここでは一般的に広く用いられている英語読みのシーラカンスとしました。

この魚拓の基となったシーラカンスは,国立科学博物館の調査により1981年12月31日にコモロ連合 グランドコモロ島沖で採集されたものです。どこの世界にも面白い事を考える人はいるもので,解剖前に記念として魚拓を取ろうと思い立たったのだそうです。また,この調査ではわざわざシェフを呼び,シーラカンスを食べてみるという調査?も行われたそうです。実にうらやましい調査・研究ですが,どのように調理してもあまりおいしくなかったそうで,「まずいから生き残った」という俗説まで生まれたそうです(注)。

注. これらのエピソードは当時,なぜか解剖に立ち会っておられた恩師 故吉﨑 誠先生(東邦大学名誉教授)から聞いたものです。長い間,師の冗談だと思っていましたが,インターネットで検索してみるとどうやら本当にあったイベントだったようで,ある参加者は「濡らした歯ブラシをかじっているよう」という感想を述べています。現在,エッセイなども含めて参考文献を探しています。

 
鯨と海の科学館にある魚拓のコピー
 
シーラカンスの魚拓のコピー
被災前の展示(撮影日:2009年8月11日;撮影者:鈴木雅大)
 
1981年12月31日に捕獲されたシーラカンスの魚拓は,1枚240万円(2010年時)もの価値があるそうですが,実はこの魚拓のコピーが出回っていて,著者の恩師である故吉﨑 誠先生(東邦大学名誉教授)は,魚拓のコピーを息子さんの布団のシーツとして使っておられたそうです。贅沢極まりない話ですが,きっといい夢を見られた事でしょう。このシーツもとい魚拓のコピーは,吉﨑先生から鯨と海の科学館(岩手県 下閉伊郡 山田町 船越)に寄贈,展示されていました。
 
シーラカンスの魚拓のコピー
被災後の展示品(撮影日:2011年4月9日;撮影者:鈴木雅大)
 
鯨と海の科学館は,2011年3月11日の東日本大震災によって被災しました。シーラカンスの魚拓は流されはしなかったものの泥まみれになってしまいました。
 
シーラカンスの魚拓のコピー
リニューアル後の展示(撮影日:2017年11月5日;撮影者:鈴木雅大)
 
鯨と海の科学館は2017年7月にリニューアルオープンしました。著者は2017年11月に鯨と海の科学館で海藻に関する講演を行う機会があり,リニューアル後初めて訪れました。シーラカンスの魚拓は汚れ一つなく修復,展示されておりました。
 
参考文献
 
Bailly, N. 2013. Latimeria chalumnae Smith, 1939. In: Froese, R. and D. Pauly. Editors. (2013) FishBase. Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=217438 on 2013-04-28.
 
籔本美孝 2008. シーラカンス ブラジルの魚類化石と大陸移動の証人たち.92 pp. 東海大学出版会,秦野(神奈川).
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ オピストコンタ動物界脊索動物上門脊椎動物門
 
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