Wang et al. (2001) はヒラキントキ属(Prionitis)をムカデノリ属(Grateloupia) に含めましたが,Lin et al. (2008)とGargiulo et al. (2013)は,ムカデノリ属とされた種の中で,生殖器官である助細胞ampullaの構造に違いがあること,28S rDNAやrbcL遺伝子を用いた分子系統解析では,広義のムカデノリ属が多系統群となるため,ムカデノリ属を再度複数の属に分けることを提案していました。Carderon et al. (2014), Kim et al. (2014) はヒラキントキ属とタンバノリ属(Pachymeniopsis) を再評価し,新属としてRamireziaを記載しました。
Carderon et al. (2014) の系統樹(上図)では,ムカデノリ属の系統関係は未だ解けておらず,今後の進展が俟たれるところです。現在までに分かっていることをまとめると,日本産種の中で,狭義のムカデノリ属に含まれるのはウツロムカデとスジムカデのみです。"ムカデノリ属"を"スジムカデ属"に改める必要があるかもしれません。ヒラキントキ属にはヒラキントキ,ナガキントキ,オオバキントキという,かつてのヒラキントキ属に所属していた種に加え,カタノリ,ヒラムカデ,ムカデノリ,オオムカデノリが含まれます。タンバノリ属には,タンバノリ,フダラクが含まれる他,マルバフダラク,キントキ,ツノムカデ,ヒトツマツ,サクラノリが含まれます。ツルツル,ヒヂリメン,ヒロハノムカデノリは,どの属のクレードにも含まれず,新属となることが予想されます。ニクムカデは系統的位置が分かりません。
残念ながら,ヒラムカデやムカデノリをヒラキントキ属とする,あるいはキントキやツノムカデをタンバノリ属とする形態学的な根拠が不明瞭なため,これらの種について属の組み合わせは行われていません。いずれにしろ,現在,ムカデノリの仲間の分類は大いに混乱していることが分かると思います。今後はより精度の高い分子系統解析はもちろんですが,Lin et al. (2008) とGargiulo et al. (2013) が示したような助細胞ampullaの発達過程などの形態的特徴をしっかりと観察し,整理していくことが必要でしょう。 |