トサカモドキ属の1種 Callophyllis sp.
作成者:鈴木雅大 作成日:2013年5月4日(2019年5月11日更新)
 
トサカモドキ属の1種
Callophyllis sp.
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),ツカサノリ科(Family Kallymeniaceae),トサカモドキ属(Genus Callophyllis
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),ツカサノリ科(Family Kallymeniaceae),トサカモドキ属(Genus Callophyllis
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),スギノリ目(Order Gigartinales),ツカサノリ科(Family Kallymeniaceae),トサカモドキ属(Genus Callophyllis
 
Callophyllis sp.
採集地:千葉県 いすみ市 大原 丹ヶ浦;採集日:2016年4月27日;撮影者:鈴木雅大
 
Callophyllis sp.
押し葉標本(採集地:千葉県 いすみ市 大原 丹ヶ浦;採集日:2016年4月27日;採集者:鈴木雅大)
 
Callophyllis sp.
押し葉標本(採集地:岩手県 下閉伊郡 山田町 船越 浦の浜;採集日:2004年11月30日;採集者:鈴木雅大)
 
Callophyllis sp.
押し葉標本(採集地:千葉県 南房総市 根本;採集日:2007年4月20日;採集者:鈴木雅大)
 
Callophyllis sp.   Callophyllis sp.
押し葉標本(採集地:千葉県 銚子市 犬吠埼;採集日:2001年5月8日;採集者:鈴木雅大)
 
Callophyllis sp.
体の横断面 *1.0%エリスロシン水溶液で染色
 

日本各地を歩いてみると,同定に困るトサカモドキ属に良く出会います。現在知られているどの種に充てたら良いか分からないというより,どの種でもない未記載種がたくさんあるというのが正しい認識だと思います。近年,韓国でトサカモドキ属(Callophyllis)の新種が次々と発表されており,日本においてもおそらくは韓国で新種記載された種類や未記載/未報告種がいると考えられます。

ここに掲載しているのは,本州太平洋沿岸で「ヒメトサカモドキ(Callophyllis rhynchocarpa」と呼ばれていたトサカモドキ属です。ヒメトサカモドキは日本のトサカモドキ属(Callophyllis)が抱える分類学的問題の象徴のような種類で,著者の見立てでは,C. rhynchocarpaの分布は極東ロシアや道東などの亜寒帯域に限られており,その他の地域で「ヒメトサカモドキ」と呼んでいる種は別種であり,しかも複数の種類が混在していると考えられます。とはいえ,他に充てようもないので,現在報告されている日本産種の中から消去法で残ったものをとりあえずこの種に充てているというのが正直なところです。

「ヒメトサカモドキ」の実体を確かめるため,千葉県大原で採集した「ヒメトサカモドキ」の遺伝子解析を行ったところ,rbcL遺伝子の塩基配列はかつて著者が千葉県銚子で採集し,台湾海洋大学の林綉美先生がシーケンスしたサンプルの配列と一致しました。カムチャッカで採集されたCallophyllis rhynchocarpaとは異なっており,別種と考えるのが妥当だと思います。林先生は千葉県銚子産のサンプルの遺伝子配列をヒロハノトサカモドキ(C. crispata)として登録していますが,ヒロハノトサカモドキ(C. crispataとは明らかに形態が異なります。著者は「ヒメトサカモドキ」としてサンプルを渡したはずなのですが,なぜヒロハノトサカモドキに変更されたのかは分かりません。「真の」ヒロハノトサカモドキとの比較やその他のトサカモドキ属との比較が必要ですが,ヒメトサカモドキ(C. rhynchocarpa)とは別種であること,これまで日本で報告された種類に当てはまるものがないことから,未記載/未報告種と考えられます。本サイトではトサカモドキ属の1種(Callophyllis sp.)としました。

 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2013. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 4 May 2011.
 
Ruprecht, F.J. 1850. Algae ochotenses. Die ersten sicheren Nachrichten über die Tange des Ochotskischen Meeres. Buchdruckerei der Kaiserlichen Akademie der Wissenschaften, St. Petersburg. 243 pp.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌. 1222 pp. 内田老鶴圃, 東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 

写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ紅藻植物門真正紅藻綱マサゴシバリ亜綱スギノリ目ツカサノリ科

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