アキヨレモク Sargassum autumnale |
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作成者:鈴木雅大 作成日:2012年5月3日(2017年11月11日更新) |
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アキヨレモク(秋撚れ藻屑) |
Sargassum autumnale T.Yoshida 1983: 203-205. Figs 71-73. |
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不等毛植物門(Phylum Heterokontophyta),褐藻綱(Class Phaeophyceae),ヒバマタ亜綱(Subclass Fucophycidae),ヒバマタ目(Order Fucales),ホンダワラ科(Family Sargassaceae),ホンダワラ属(Genus Sargassum),バクトロフィクス亜属(Subgenus Bactrophycus),ハロクロア節(Section Halochloa) |
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*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),ヒバマタ目(Order Fucales),ホンダワラ科(Family Sargassaceae),ホンダワラ属(Genus Sargassum) |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:褐藻綱(Class Phaeophyceae),ヒバマタ目(Order Fucales),ホンダワラ科(Family Sargassaceae),ホンダワラ属(Genus Sargassum) |
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掲載情報 |
吉田 1985: 452. Fig. 4; 1998: 377. Pl. 2-32, Fig. D; Kajimura 1989: 134. Figs 1-17; 島袋 2018: 570-571. Figs 14-19. |
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Type locality: 長崎県 野母崎 |
Holotype specimen: SAP 043407(北海道大学大学院理学研究科植物標本庫) |
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本州日本海沿岸で撮影,採集したもの |
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押し葉標本(採集地:新潟県 佐渡郡 相川町 二見港(現 佐渡市 二見);採集日:2002年11月5日;採集者:鈴木雅大) |
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押し葉標本(採集地:新潟県 佐渡郡 赤泊村 赤泊港(現 佐渡市 赤泊港);採集日:2002年11月6日;採集者:鈴木雅大) |
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雄の生殖器床(矢印) |
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付着器と体下部の葉 |
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アキヨレモク(Sargassum autumnale)はヨレモク(S. siliquastrum)と混同されていたものでしたが,Yoshida (1983) は,体下部及び基部近くの葉が線状で縁辺に鋸歯(切れ込み)があること,秋に成熟することなどの特徴から,アキヨレモクを別種として区別しました。気を付けないと良く間違える種類で,生殖器床(ホンダワラ類の生殖器官)が付いていない個体の場合,ヨレモクとの違いは体下部の葉のみとなります。ヨレモクの場合は体下部及び基部近くの葉が広楕円形で,多くは縁辺が全縁(切れ込みがない)です。アキヨレモクは体下部の葉の幅が狭く,縁辺に鋸歯があります。島袋(2018)は,茎や主枝下部の葉が生えていないものが多いこともアキヨレモクを区別する際の重要な情報として挙げています。しかし,この違いははっきりしないことがあり,基部近くの葉が細いヨレモク?や,体下部の葉が太くて鋸歯のあるヨレモクあるいはアキヨレモクがしばしば見つかるため,どちらの種に充てたら良いか悩むことが良くあります。 |
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押し葉標本(採集地:新潟県 佐渡郡 相川町 二見(現 佐渡市 二見);採集日:2003年11月7日;採集者:鈴木雅大) |
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体上部の葉と気胞 |
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同定に悩む標本の1つです。ほとんどの葉が糸状のためイトヨレモク(Sargassum trichophyllum)ではないかと考えた事もあります。また,体下部にある葉が広楕円形のためヨレモクかとも考えました。しかし,体下部の葉の縁辺に切れ込みがあり,他の2種は全縁であることからアキヨレモクと同定しました。 |
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押し葉標本(採集地:新潟県 佐渡郡 相川町 千畳敷(現 佐渡市 下相川);採集日:2001年11月9日;採集者:鈴木雅大) |
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雄の生殖器床(矢印) |
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この標本はとても小さく,高さ15 cmに満たないものですが,線状の生殖器床を付けていました。亜熱帯域のホンダワラ類は別として,ホンダワラ類は良く生長してから成熟し,成熟した個体は高さ50 cm以上はあるものと当時の著者は考えていました。このため,種類についてはさっぱり分からなかったのですが,2002年5月,茨城県つくば市で国際学会が開かれた際,ホンダワラ類の大家である先生にお話を伺う機会がありました。同定の責任を負わせることになってしまうため,御名前はふせさせて頂きます。休憩時間中に標本を持って先生にお尋ねしたところ,突然の質問に驚かれながらも「生殖器床が付いているのでアキヨレモクとするのが良いでしょう」と教えて頂きました。初対面かつ質問するタイミングも悪かったと思うのですが,空気の読めない学生の質問に怒ることなく,教えてくださった先生に大変感謝しております。改めて観察すると,線状の葉を持ち,秋に成熟するなど,小さいながらもアキヨレモクの特徴を持っており,著者にとって貴重な経験となりました。 |
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津軽海峡,本州太平洋沿岸で撮影,採集したもの |
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押し葉標本(採集地:青森県 東津軽郡 平内町 夏泊崎;採集日:2004年11月14日;採集者:鈴木雅大) |
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葉と気胞 |
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付着器と体下部の葉 |
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青森県陸奥湾で採集した標本で,同定の判断に悩む個体の一つです。体下部の葉が線状というよりは幅広く,広楕円形に近いため,ヨレモクのようにも見えるのですが,葉の縁辺に切れ込みがあるため,アキヨレモクと判断しました。また,採集した当初は,アキヨレモクが日本海特産種の一つであるため,陸奥湾に生えていることを想定しておらず,トゲモク(Sargassum micracanthum)と誤同定していました。体基部などを良く観察していれば間違えることはないのですが,著者の経験不足による大きなミスでした。 |
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撮影地:岩手県 下閉伊郡 山田町 浦の浜;撮影日:2017年11月6日;撮影者:鈴木雅大 |
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押し葉標本(採集地:岩手県 下閉伊郡 山田町 船越 浦の浜;採集日:2017年11月21日;採集者:鈴木雅大) |
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アキヨレモクは,日本海特産種の一つとして知られていますが,陸奥湾,岩手県山田町にも生育しています。スギモク(Coccophora langsdorfii)やフシスジモク(Sargassum confusum)のように津軽暖流に乗って津軽海峡から太平洋沿岸へ分布を広げたと予想されます。 |
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参考文献 |
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Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2012. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 3 May 2012. |
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Kajimura, M. 1989. Notes on the marine algal flora of the Oki Isls. (IX). Studies of the San'in Region Natural Environment 5: 133-141. |
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島袋寛盛 2018. 日本産温帯性ホンダワラ属 11回目:ヨレモクとアキヨレモク.海洋と生物 40 (6): 566-573. |
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Yoshida, T. 1983. Japanese species of Sargassum subgenus Bactrophycus (Phaeophyta, Fucales). Journal of the Faculty of Science Hokkaido University Series V (Botany) 13: 99-246. |
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吉田忠生 1985. ホンダワラ類の分類と分布(8).Halochloa節 (3).海洋と生物 41: 450-453. |
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吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京. |
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吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189. |
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