2023年3月，淡路島で実施した臨海実習において，ナミウスカヤモを記載した研究者が参加されました。ナミウスカヤモをはじめとしたカヤモノリ類について，専門家に同定してもらえるものと期待したのですが，「隠蔽種なので分からない」とのことでした。Hoshino et al. (2020) には，確かに形態で同定するのは困難と書かれているのですが，和名を与えるからには何かしら区別するポイントがあるのではないかと期待しておりました。海藻類の中には形態的特徴のみで同定することが困難な種が多数あり，ナミウスカヤモについて，安易に同定出来ないことには同意します。著者は形態的特徴で認識出来ない種については，属までの同定に留めると共に，研究対象から外し，遺伝子解析と形態的特徴の双方で認められる種を選んで研究を行っているのですが，種を正しく認識する上で，楽な方に逃げているだけではないかとしばしば悩みます。「新種記載した専門家でも形態的には同定できない」，これは海藻類の分類の現状を良く著しており，海藻の分類学者として「正しい種の認識」にどのように向き合うかを問われている…と個人的には思う次第です。