ムカデメリベ Melibe viridis
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年6月4日(2019年8月31日更新)
 
ムカデメリベ(百足めりべ)
Melibe viridis (Kelaart, 1858)
 
動物界(Kingdom Animalia),左右相称動物亜界(Subkingdom Bilateralia),旧口動物(前口動物)下界(Infrakingdom Protostomia),冠輪動物上門(Superphylum Lophotrochozoa),軟体動物門(Phylum Mollusca),腹足綱(Class Gastropoda),異鰓亜綱(Subclass Heterobranchia),マメウラシマ側区(Cohort Ringipleura),裸側亜区(Subcohort Nudipleura),裸鰓目(Order Nudibranchia),枝鰓亜目(Suborder Cladobranchia),スギノハウミウシ上科(Superfamily Dendronotoidea),メリベウミウシ科(Family Tethydidae),メリベ属(Genus Melibe
 
ムカデメリベ Melibe viridis
採集地:神奈川県 三浦市 三崎町 小網代;採集日:2011年5月18日;撮影者:鈴木雅大
 

大形のウミウシで体長10 cmを超えます。写真の左上部が頭部で,この広がった頭で小形の甲殻類を包んで食べるそうです。臨海実習で「ムカデメリベ」と習って以来,気にしたことがなかったのですが,メリベ属(Melibe)の仲間の分類はなかなか複雑な変遷を辿ってきたようで,一部では未だ混乱が続いているようです。メリベ属のモノグラフ的研究として知られるGosliner & Smith (2003) によると,かつてM. papillosa(現ヒメメリベ), M. pilosa(現クロメリベ), M. viridis(現ムカデメリベ)などの種類は全て同一種であるとしてM. pilosa1種類にまとめられていました。このため日本ではM. pilosaあるいはM. papillosaを「メリベウミウシ」と総称しています(注)。Gosliner & Smith (2003) は,メリベ属12種を詳細に調べ,M. papillosa, M. pilosa, M. viridisそれぞれ独立した種であるとしました。Gosliner & Smith (2003) 以降,メリベ属の分類学的研究がどのようになっているかは調べていないのですが,「M. papillosa = ヒメメリベ」,「M. pilosa = クロメリベ」,「M. viridis = ムカデメリベ」とするのが現在のメリベウミウシ類の分類体系となっているようです。Gosliner & Smith (2003) によると「M. pilosa = クロメリベ」はハワイ諸島などに分布し,日本には生息していないそうなので,実質的に「メリベウミウシ」と呼ばれていたものは「M. papillosa = ヒメメリベ」と「M. viridis = ムカデメリベ」の2種に分けられます。

注.命名法的にはM. pilosaになるのではないかと思ったのですが,日本の文献の多くは「M. papillosa = メリベウミウシ」としており(奥谷 1994,今原 2013など),和名と学名の対応関係については未だ調査中です。

Gosliner & Smith (2003) によるとメリベ属を形態的に区別する決定的な特徴はjawsやstomach plateなどの内部構造にあるそうで,恥ずかしながらウミウシ類の解剖経験のない著者には良く分かりませんでした。外部形態における違いとして,「M. papillosa = ヒメメリベ」と「M. viridis = ムカデメリベ」は口唇縁の触手の数に違いがあり,ヒメメリベは2列,ムカデメリベは2-5列になるそうです。「メリベウミウシ」の仲間を見つけたら頭部を詳しく観察する必要があるようです。

 
ムカデメリベ Melibe viridis
 
ムカデメリベ Melibe viridis
 
ムカデメリベ Melibe viridis
 
採集地:兵庫県 淡路市 岩屋 絵島(淡路島);採集日:2019年8月21日;撮影者:鈴木雅大
 
採集した海藻に紛れ込んできたムカデメリベ(?)です。体長5cm程度なので幼体ではないかと思ったのですが,ヒメメリベかもしれません。上述の通りムカデメリベとヒメメリベは口唇縁の触手の数に違いがあり,頭部を詳細に観察する必要があったのですが,採集した当時,著者はヒメメリベという種類を認識していなかったため,特に気にすることもなく海に返してしまいました。なお,口唇縁の触手の数は分類学的に区別するための形態的特徴ですが,図鑑によっては種同定における特徴として背側突起の形や生息場所などを挙げています。確実に「ヒメメリベ」と同定出来るものを観察し,ムカデメリベとの違いを認識出来ればと思っています。
 
ムカデメリベ Melibe viridis
 
ムカデメリベ Melibe viridis
 
撮影地:東京都 江戸川区 臨海町 葛西臨海水族園;撮影日:2018年6月25日;撮影者:鈴木雅大
 
体長10cmを超え,背側突起も6, 7対はあるので文句なしのムカデメリベだと思いますが,口唇縁の触手は2列しかないように見えます。ムカデメリベの口唇縁の触手は2-5列なので範囲内ではあります。ヒメメリベとの違いを認識するため3列以上の触手を観察したかったのですが,次の機会を待つことになりました。
 
参考文献
 
Gofas, S. 2012. Melibe viridis (Kelaart, 1858). Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=181237 on 2013-04-28.
 
Gosliner, T.M. and Smith, V.G. 2003. Systematic review and phylogenetic analysis of the nudibranch genus Melibe (Opistobranchia: Dendronotacea) with descriptions of three new species. Proceedings of the California Academy of Sciences, 4th series. 54: 302-355.
 
今原幸光 編著. 2013. フィールド版 写真でわかる磯の生き物図鑑. 279 pp. トンボ出版,大阪.
 
伊勢優史 執筆・撮影,赤坂甲治 監修. 2013. 三崎の磯の動物ガイド 第2版. 168 pp. 東京大学大学院理学系研究科附属三崎臨海実験所,神奈川.
 
奥谷喬司 編著. 1994. 海辺の生きもの. 367 pp. 山と渓谷社,東京.
 
小野篤司 監修,加藤昌一 編. 2009. ネイチャーウォッチングガイドブック ウミウシ 生きている海の妖精. 272 pp. 誠文堂新光社,東京.
 

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