ブタナ Hypochaeris radicata
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2016年12月5日
 
ブタナ(豚菜)
Hypochaeris radicata Linnaeus, 1753
 
維管束植物門(Phylum Tracheophyta),種子植物亜門(Subphylum Spermatophytina),被子植物("Angiospermae"),モクレン綱(Class Magnoliopsida),キク上目(Superorder Asteranae),キク目(Order Asterales),キク科(Family Asteraceae),タンポポ亜科(Subfamily Cichorioideae),タンポポ連(Tribe Cichorieae),エゾコウゾリナ属(Genus Hypochaeris
 
新エングラー体系:被子植物門(Phylum Angiospermae),双子葉植物綱(Class Dicotyledoneae),合弁花植物亜綱(Subclass Sympetalae),キキョウ目(Order Campanulales),キク科(Family Compositae)
クロンキスト体系:被子植物門(Phylum Magnoliophyta),モクレン綱(Class Magnoliopsida),キク亜綱(Subclass Asteridae),キク目(Order Asterales),キク科(Family Asteraceae)
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナ Hypochaeris radicata
撮影地:岩手県 下閉伊郡 山田町 船越;撮影日:2009年8月9日;撮影者:鈴木雅大
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナ Hypochaeris radicata
撮影地:岩手県 下閉伊郡 山田町 船越;撮影日:2010年7月25日;撮影者:鈴木雅大
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナ Hypochaeris radicata
撮影地:千葉県 船橋市 三山 東邦大学習志野キャンパス;撮影日:2010年5月14日;撮影者:鈴木雅大
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナ Hypochaeris radicata
撮影地:千葉県 成田市 大清水;撮影日:2008年10月13日;撮影者:鈴木雅大
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナ Hypochaeris radicata
撮影地:兵庫県 淡路市 仮田(淡路島);撮影日:2016年5月22日;撮影者:鈴木雅大
 
ブタナ Hypochaeris radicata
 
ブタナの綿毛
撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋(淡路島);撮影日:2015年5月21日;撮影者:鈴木雅大
 
ブタナの種子
ブタナの種子:稔った種子(左)と稔らない種子(秕)(右)
 
ヨーロッパ原産の帰化植物で,1933年頃に北海道札幌市郊外に侵入したと考えられています。現在では,北海道から本州まで至る所に見られ,身近で普通に見られる野草として認知されているように思えます。花はもちろん種子発芽特性に至るまで,同じ帰化植物であるセイヨウタンポポと良く似ています。千葉県では,春になりセイヨウタンポポが花を咲かせ,セイヨウタンポポの開花がひと段落すると,ブタナの開花が始まります。花茎が長く,一株に多くの頭花を付けるため,開けた土地では見事な大群落を作ります。

著者は海藻の専門家ですが,所属していた研究室では,セイヨウタンポポ,ブタナ,ナガミヒナゲシなどの帰化植物を対象とした種子発芽特性の研究も行っていました。ブタナとセイヨウタンポポは共に遷移の先駆け的な植物で,裸地にいち早く侵入するなど,生育場所も良く似ています。このため,2種が競合関係にあるのではないかという仮説を立て,かつての「タンポポ戦争(注)」になぞらえ「ブタナ・タンポポ戦争」と呼び,主に種子発芽実験を行っていました。ただし,これはあくまで仮説であり,ブタナがセイヨウタンポポを追いやっているような現象やデータは未確認です。ブタナとセイヨウタンポポは,共に一斉発芽型の発芽パターンと高い発芽率を示し,種子発芽特性に決定的な違いは見られませんでした(鈴木・酒井 2009など)。

ブタナ・タンポポの研究から遠ざかって10年以上が経過した今,改めて振り返ってみると「ブタナ・タンポポ戦争」の実態は未だ解明されていません。開花時期が異なることもあり,セイヨウタンポポがブタナに追いやられているという印象は受けないのですが,ブタナの群落が目立つのも確かです。仮に何らかの競合があるとすれば,種子発芽特性ではなく種子生産量や種子の分散力に違いがみられるかもしれません。種子生産量は,ブタナの方が多いと思われますが,種子の軽いセイヨウタンポポの方が分散力は高いかもしれません。結論としては,未だ仮説の域を出ないというのが著者の見解ですが,「ブタナ・タンポポ戦争」の実態解明は面白いテーマだろうと思っています。

注.タンポポ戦争:帰化種のセイヨウタンポポが在来種のカントウタンポポが競合関係にあるというものです(小川 2001など)。一斉発芽型の種子発芽パターンを持つセイヨウタンポポが休眠性を持つ在来種のタンポポと比べて拡散能力が高いという分かりやすい構図で,著者が学生の頃は,高等学校の生物の教科書に載るなど,良く知られた問題でした。現在は,セイヨウタンポポと在来種のタンポポとの間で様々なパターンの雑種が知られるようになり,問題が複雑化しています。

 
参考文献
 
邑田 仁 監修.米倉浩司 著.2012. 日本維管束植物目録.379 pp. 北隆館,東京.
 
小川 潔 2001. 日本のタンポポとセイヨウタンポポ.130 pp. どうぶつ社,東京.
 
鈴木雅大・酒井文子 2009. 帰化植物ブタナの種子発芽実験.千葉生物誌 59 (1): 29-34.
 
米倉浩司・梶田忠 2003-.「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info(2016年12月5日閲覧)
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ緑色植物亜界有胚植物上門被子植物キク上目キク目キク科タンポポ亜科
 
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