オオイシソウ Compsopogon caeruleus
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年1月15日(2017年4月26日更新)
 
オオイシソウ(大石藻)
Compsopogon caeruleus (Balbis ex C. Agardh) Montagne 1846: 154.
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),原始紅藻亜門(Subphylum Proteorhodophytina),オオイシソウ綱(Class Compsopogonophyceae),オオイシソウ目(Order Compsopogonales),オオイシソウ科(Family Compsopogonaceae),オオイシソウ属(Genus Compsopogon
 
*熊野(2000)「世界の淡水産紅藻」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),原始紅藻亜綱(Subclass Bangiophycidae),オオイシソウ目(Order Compsopogonales),オオイシソウ科(Family Compsopogonaceae),オオイシソウ属(Genus Compsopogon)"C. coeruleus"
 
掲載情報
Seto & Kumano 1993: 334-335; 吉﨑 1996: 272-275. Figs 7-1, 7-2, 7-5; 1997a: 138-139. Pls 2-141, 142. Figs 2-32, 1-8; 熊野 2000: 33. Pl. 8, Figs 3-5. Pl. 10a; 2002: 33, 34. Pl. 11, Figs 3-5. Pl. 14; 熊野ら 2002: 29-30; 2007: 211; 小林 2003: 17-18. Fig. 1; 2005: 23-24; Zhixin 2006: 33-34. Pl. 9, Figs 1, 2; Ratha et al. 2007: 88. Figs 1-26; Eloranta et al. 2011: 27, 29. Pl. 5, Fig. 5. "C. coeruleus"; Kitayama 2011: 170. Figs 1-7; 2015: 363; Necchi et al. 2013: 157, 158. Figs 3-6; 小林 2014: 543; 比嘉 2018: 581-582; 石戸・原田 2020: 138; 河地 2020: 84.
 
Basionym
  Conferva caerulea Balbis ex C. Agardh 1824: 122.
Heterotypic synonym
  Pericystis aeruginosus J. Agardh 1847: 6. (Type locality: near Havana, Cuba. Holotype specimen: LD herb. Agardh (Lund University, Sweden))
   ≡ イバラオオイシソウ Compsopogon aeruginosus (J. Agardh) Kützing 1849: 433; 中村・千原 1983: 54, 56. Fig. 1; Seto & Kumano 1993: 334; 熊野 2000: 24, 26. Pl. 5a; 2002: 23, 24. Pl. 7a; Eloranta et al. 2011: 27. Pl. 5, Fig. 2. Pl. 6; 熊野ら 2002: 30; 2007: 207; 小林 2012: 25. Figs 3, 4; 2014: 543; 北山ら 2015: 270; 比嘉 2018: 572-573.
  Compsopogon chalybeus Kützing 1849: 432; Seto & Kumano 1993: 334; 熊野 2000: 26, 28. Pl. 8, Figs 1, 2. Pl. 8, Figs 6-8; 2002: 27. Pl. 11, Figs 1, 2, 6-8; Liu & Wang 2004: 34. Fig. 2.; Eloranta et al. 2011: 27. Pl. 5, Fig. 1. (Type locality: Cayenne, French Guiana. Holotype specimen: PC herb. Leprieur 828 ((Muséum National d'Histoire Naturelle, Paris))
  インドオオイシソウ Compsopogon hookeri Montagne 1846: 157. Pl. 46, Fig. 3. Pl. 47, Fig. 1; 中村・千原 1983: 56, 58. Fig. 2; 中村 1993: 172-173. Fig. 85; 吉﨑 1996: 272-275. Fig. 7-3; 1998: 243, 244, 332. Fig. 5-68; 熊野 2000: 31. Pl. 4, Figs 5-9. Pl. 7b; 2002: 31. Pl. 6, Figs 5-9. Pl. 10; 熊野ら 2002: 30; 2007: 207; Eloranta et al. 2011: 27. Pl. 5, Fig. 4; 北山ら 2015: 272; 比嘉 2018: 573-574. (Type locality: near Madras, India. Holotype specimen: BM (The Natural History Museum, London))
  Compsopogon leptoclados Montagne 1850: 298. (Type locality: French Guiana. Holotype specimen: PC (Muséum National d'Histoire Naturelle, Paris))
   ≡ Compsopogonopsis leptoclados (Montagne) V.K. Krishnamurthy 1962: 219;Seto & Kumano 1993: 335; 熊野 2000: 21, 23. Pl. 3b; 2002: 22. Pl. 5b.
  オオイシソウ Compsopogon oishii Okamura 1915: 128. Pls 132, 133; 1936: 375-376. Fig. 182; Tanaka 1952: 83-84. Fig. 41. Pl. 1; 秋山 1959: 71-73. 写真 A-C; 熊野・廣瀬 1977: 163. Pl. 57, Figs 1a-1g; ; 瀬戸 1982: 58, 61. Figs 4C-I; 1993: 170-171. Fig. 84; 久場 1987: 4. Fig. 7; Seto & Kumano 1993: 335; 新井ら 1996: 12-13. Fig. 3; 吉﨑 1998: 243, 244, 331. Fig. 5-66; 大沼・原 2010: 14. Figs 3-7. (Type locality: 東京都多摩川矢口. Lectotype specimen: SAP 46132 (北海道大学大学院理学研究科植物標本庫 ))
  Compsopogon minutus C.C. Jao 1941: 249. Pl. 1, Figs 2-8; Seto & Kumano 1993: 335; 熊野 2000: 31. Pl. 10b; 2002: 28. Pl. 12; Zhixin 2006: 33. Pl. 6, Figs 1-3. Pl. 7, Figs 1-4. (Type locality: Hua-kai-shan, Kiangtsin, Szechwan, China. Holotype specimen: SC 1010 (The Natural History Museum, London))
  オオイシソウモドキ Compsopogonopsis japonica Chihara 1976: 289. Figs 1, 2 A-I; 中村・千原 1977: 196-200. Figs 1-3; 瀬戸 1982: 57. Figs 3A-I, 4A, B; 中村 1993: 174-175. Fig. 86; Seto & Kumano 1993: 335; 熊野 2000: 21. Pl. 3a; 2002: 22. Pl. 5a; 熊野ら 2002: 29; 2007: 207; 北山・吉田 2015: 274; 比嘉 2018: 571-572. (Type locality: 群馬県境町近傍の利根川河川敷. Holotype specimen: TNS-AL 24051 (国立科学博物館植物研究部標本庫))
  アツカワオオイシソウ Compsopogon corticrassus Chihara & Tak. Nakamura 1980: 136. Figs 1, 2A-J, 3A-L, 4A-C; Seto & Kumano 1993: 335; 吉﨑 1996: 272-275. Fig. 7-4; 1997a: 139. Figs 2-32, 9; 1997b: 450, 492. Pl. 2; 1998: 243, 244, 332. Fig. 5-67; 熊野 2000: 28, 29. Pl. 7a; 2002: 27. Pl. 9; 熊野ら 2002: 30; 2007: 208; 北山・吉田 2015: 271. (Type locality: 崎玉県行田市見沼代用水中. Holotype specimen: TNS-AL 35602 (国立科学博物館植物研究部標本庫)).
  ムカゴオオイシソウ Compsopogon prolificus Yadava & Kumano 1985: 19. Figs 1-7; 吉﨑 1998: 332. Fig. 5-69; 熊野 2000: 26. Pl. 5b; 2002: 24. Pl. 7b; 熊野ら 2002: 30; 2007: 207-208; 北山・吉田 2015: 273. (Type locality: Allahabad, Uttar Pradesh, India. Holotype specimen: DCP no. 38 (Herbarium of Botany Department, Allahabad University))
  Compsopogon tenellus Y.J. Ling & S.L. Xie in Xie & Ling 1998: 81. Pl. 1, Figs 1-7; 熊野 2000: 29-30. Pl. 9a; 2002: 27. Pl. 13a; Liu & Wang 2004: 33-34. Fig. 1; Zhixin 2006: 33. Pl. 8, Figs 1-7. (Type locality: Taiyuan, Shanxi, China. Holotype specimen: SAS 92086)
  この他多数の異名が知られています(Kumano 2002, Algaebase参照)。
 
Type locality: 'In mari Antillarum' (Puerto Rico, Antilles, Caribbean)
Type specimen: L 940284413 (Naturalis, Leiden, Netherlands)
 
環境省レッドリスト2020:絶滅危惧II類(VU);青森県レッドデータブック(2020年版):要調査野生生物(D);茨城県版レッドデータブック2020年版:絶滅危惧II類;栃木県版レッドリスト(2018年版):要注目;埼玉県レッドデータブック(2011):絶滅危惧I類(CE);千葉県レッドリスト植物・菌類編(2017年度改訂版):一般保護生物(D);東京都レッドリスト(本土部)2020年版:情報不足(DD);神奈川県レッドリスト植物編(2020):準絶滅危惧;兵庫県版レッドデータブック2020:A;レッドデータブックひろしま2011:要注意種;愛媛県レッドデータブック2014:絶滅危惧I類(CR+EN);福岡県レッドデータブック2011:絶滅危惧II類;レッドデータブックくまもと2019:絶滅危惧II類(VU);宮崎県版レッドリスト(2015):絶滅危惧II類(VU);鹿児島県レッドリスト(2015):絶滅危惧II類;沖縄県版レッドデータブック第3版(2018):絶滅危惧II類(VU)
 
分類に関するメモ:Necchi et al. (2013),Carlile & Sherwood (2013) などは,イバラオオイシソウ(Compsopogon aeruginosus),アツカワオオイシソウ(C. corticrassus),インドオオイシソウ(C. hookeri),ムカゴオオイシソウ(C. prolificus),オオイシソウモドキ(Compsopogonopsis japonica)などを含む14種をオオイシソウ(C. caeruleus)1種にまとめました。
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
撮影地:静岡県 賀茂郡 南伊豆町 青野川;撮影日:2011年6月18日;撮影者:鈴木雅大
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
押し葉標本(採集地:静岡県 賀茂郡 南伊豆町 青野川;採集日:2008年11月2日;採集者:鈴木雅大)
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
押し葉標本(採集地:千葉県 八千代市 勝田川;採集日:2001年12月15日;採集者:鈴木雅大)
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
押し葉標本(採集地:千葉県 香取郡 栗源町 中白観音(現 香取市 栗源町);採集日:2005年12月4日;採集者:鈴木雅大)
 
日本のオオイシソウ類はオオイシソウ(Compsopogon caeruleus)1種のみ
 
オオイシソウ(Compsopogon caeruleus)(注)は,淡水域から汽水域に生育する紅藻類です。「紅」藻類とは思えない,青緑がかった体色をしています。オオイシソウ属の種の分類は長い間混乱が続いてました。イバラオオイシソウ(C. aeruginosus),アツカワオオイシソウ(C. corticrassus),インドオオイシソウ(C. hookeri),ムカゴオオイシソウ(C. prolificus)などの種類を認めるか,オオイシソウモドキ(Compsopogonopsis japonica)を含む多くの種をオオイシソウ(C. caeruleus)1種にまとめるかを巡って,専門家の間で10年以上もの間,論争が続いていたと思います。Necchi et al. (2013),Carlile & Sherwood (2013) などによれば,世界各地で採集したオオイシソウ属(Compsopogon)のサンプルは,遺伝子解析においてほとんど差異が無く,世界的にC. caeruleus 1種とするのが妥当なようです。Necchi et al. (2013),Carlile & Sherwood (2013) 以降,オオイシソウ属14種がオオイシソウ(C. caeruleus)1種類にまとめられ,これまで日本で報告された種類は全てオオイシソウ(C. caeruleus)1種類に含まれることになりました。日本産種を用いた遺伝子解析は少ないのですが,著者が実施した幾つかのサンプルの遺伝子情報もC. caeruleusと一致あるいは近似していました。現在の藻類の分類のスタンダードに従えば,Necchi et al. (2012)とCarlile & Sherwood (2013) に異論はなく,現時点では著者も日本に生育するオオイシソウ属はオオイシソウ(C. caeruleus)1種類とするのが妥当と考えています。

日本において,これまで報告されたオオイシソウ属は全て絶滅危惧種に指定されており,環境省のレッドリスト2017では,オオイシソウモドキ,イバラオオイシソウ,アツカワオオイシソウ,インドオオイシソウ,ムカゴオオイシソウが絶滅危惧I類(CR+EN),オオイシソウは絶滅危惧II類(VU)のカテゴリーに指定されています。「種」としては全てオオイシソウにまとめられたことから,絶滅危惧I類(CR+EN)だった5種が全て無くなります。著者が委員として参加した「千葉県レッドリスト植物・菌類編(2017年改訂版)」では,千葉県におけるカテゴリーで消息不明・絶滅生物(X)に位置付けられていたインドオオイシソウとムカゴオオイシソウ,最重要・重要保護生物(A-B)に位置付けられていたアツカワオオイシソウの3種がオオイシソウにまとめられました。千葉県レッドリストにおけるオオイシソウのカテゴリーは一般保護生物(D)です。カテゴリーが絶滅危惧II類(VU),一般保護生物(D)に下がったことから,オオイシソウ類の絶滅の危険性が低くなったと解釈できますが,むしろオオイシソウのカテゴリーを絶滅危惧I類(CR+EN)や要保護生物(C)に引き上げた方が良いのではないかとも思います。1種にまとめられたオオイシソウをどのカテゴリーで扱うのが適当なのか,大変悩ましい問題です。

注.学名Compsopogon caeruleusの種小名の"caeruleus"について,"coeruleus"としている文献が散見しますが,"coeruleus"は誤用で,"caeruleus"が正しい綴りとなります。

 
  オオイシソウ Compsopogon caeruleus   オオイシソウ Compsopogon caeruleus  
体先端近くの枝
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
体中部の枝の表面観(左)と髄部(右)
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
体の先端部と中部のスケッチ
 
  オオイシソウ Compsopogon caeruleus   オオイシソウ Compsopogon caeruleus  
単胞子嚢(矢印)を形成した枝
 
形態的特徴が遺伝子情報を反映しない? ~千葉県木戸川の「インドオオイシソウ」~
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
採集地:千葉県 山武郡 成東町 木戸川;採集日:2011年6月14日;採集者:吉﨑 誠・鈴木雅大
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
体の横断面(採集地:千葉県 山武郡 成東町 木戸川;採集日:2011年6月14日)
 
千葉県木戸川で「インドオオイシソウ」と呼ばれていた個体です。皮層細胞の一部が内側に向かって伸長しています(矢印)。この糸状の皮層細胞が体形成のどの段階で生じるのかは確かめていませんが,ある程度生長し,中軸細胞が壊れて中空になったところで作られるのではないかと考えています。文献上は「オオイシソウ(C. caeruleus)」でも生じるとされているのですが,少なくとも千葉県で「オオイシソウ」と呼んでいるものでは,このような皮層細胞は確認出来ないので,学名はともかく「インドオオイシソウ」と「オオイシソウ」は別種ではないかと考えていました。しかし,遺伝子解析の結果,木戸川の「インドオオイシソウ」は,他地域のオオイシソウとrbcL遺伝子の配列は100%一致,cox1遺伝子でも99%一致(1bpの差異)という結果となり,オオイシソウ類全種をオオイシソウ(C. caeruleus)1種にまとめるというNecchi et al. (2012)とCarlile & Sherwood (2013) の見解を支持する結果となりました。

オオイシソウ属は外形に加え,皮層の細胞層数,内側の皮層細胞が内部に向かって伸長するかどうか,単胞子嚢の大きさなどの形態的特徴で区別されてきました。これらの形態的特徴は,他の紅藻類では種かそれ以上の違いに相当しますが,rbcLやcox1などの遺伝子情報は,形態的特徴を反映しませんでした。一方,インドオオイシソウなどにおける"小胞子嚢"のように疑わしい構造(後述)については,"小胞子嚢"の実体は分からないものの,種の特徴ではないことが示唆されました。 大型藻類の形態が,生育環境などによって,同じ種類とは思えないくらい変化することがあるのは良く知られています(例.ヒラムカデ Grateloupia livida)。しかし,著者の"感覚"としては,外形や大きさはともかく,皮層の細胞層数の違いや特別な細胞を形成するなどの特徴が単なる形態変異とは考えにくく,生育環境による影響があるとしても,何らかの遺伝的な違いがあるのではないかと考えています。残念ながらNecchi et al. (2012)とCarlile & Sherwood (2013) を覆す結果は得られておらず,種はもちろん種内分類群として整理することも適いませんが,cox1遺伝子よりも進化速度の速い遺伝子または遺伝子領域を分子マーカーとして使う,マイクロサテライトマーカーの開発やRAD-seq解析を通して個体群間の遺伝子交流の有無や構造を調べる,次世代シーケンサを使いオルガネラゲノム単位で比較するなど,より精密な解析を行えば,遺伝的集団のまとまりが見えてくるかもしれません。言うは易しで,そこまでのデータを揃えるのは並大抵のことではないと思いますが…。

 
"小胞子嚢"の謎
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
 
オオイシソウ Compsopogon caeruleus
"小胞子嚢" (?)(採集地:静岡県 賀茂郡 南伊豆町 青野川;採集日:2010年6月19日;採集者:吉﨑 誠・鈴木雅大)
 
オオイシソウ属は無性生殖のみが知られており,単胞子嚢を形成します。単胞子嚢から放出された単胞子は,基質に着生,発芽後,分裂を繰り返してオオイシソウの体へと発達します(瀬戸 1993,中村 1993)。オオイシソウ属として記載された種類の内,インドオオイシソウ(Compsopogon hookerii),オオイシソウ(C. caeruleus),イバラオオイシソウ(C. aeruginosus)の3種は,単胞子嚢と共に"小胞子嚢"と呼ばれる胞子嚢を形成することが知られています(中村・千原 1983,中村 1993など)。日本においては,特にインドオオイシソウと同定されている種類の特徴の一つとして"小胞子嚢"が重視されてきたように思います。ただし,"小胞子嚢"自体は他の種でも報告されているので,"小胞子嚢"を形成することに加えて,皮層が1~数層で,皮層細胞の一部が体の内側に向かって仮根状に伸長すること(注),単胞子嚢の大きさが直径 20μm未満であることがインドオオイシソウの正しい種の特徴になります。前述の通り,オオイシソウ属はオオイシソウ(C. caeruleus)1種のみにまとめられたので,"小胞子嚢"の有無及びその他の形態的特徴は種を区別する特徴ではなくなりました。分類学的な問題は一応解決をみましたが,"小胞子嚢"については未だ不明な点が残されています。

注.皮層細胞が体の内側に向かって伸長することは,オオイシソウ(C. caeruleus)とC. iyengariiでも報告されており,インドオオイシソウだけの特徴ではありません。

"小胞子嚢"の形成は,中村・千原 (1983) をはじめとして国内外で数件報告されています。この内,"小胞子嚢"の形成過程を観察したのは中村・千原 (1978)のみ,"小胞子嚢"から"小胞子"の放出を観察したのはBrühl & Biswas (1923) のみです。放出された"小胞子"の発芽やその後の発生は知られていません。中村 (1993) は,小胞子嚢塊が母体から遊離しても分裂を続けると述べています。これらの観察結果から,"小胞子嚢"を生殖細胞とすることを疑問視する声があり,そもそもオオイシソウの体組織ではなく,オオイシソウの体表に着生する別の生物ではないかという意見もありました。著者の恩師 故 吉﨑 誠 博士(東邦大学名誉教授)は,"小胞子嚢"を「オオイシソウゴノミ」と呼び,何らかの着生藻類と考えておられました。著者も着生藻類の可能性が高いと考えており,シアノバクテリア(ラン藻類)かベニミドロ綱(Stylonematophyceae)に所属する紅藻類のいずれかではないかと予想しています。著者は海産藻類の専門家なので,今後オオイシソウに触れる機会は少ないと思いますが,"小胞子嚢"をDAPI染色して核か核様体を観察する,"小胞子嚢"を単離して培養する,単離した"小胞子嚢"からDNAを抽出・解析するといった方法が可能であれば,"小胞子嚢"の実体を明らかに出来るのではないかと考えています。

 
参考文献
 
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写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ紅藻植物門オオイシソウ綱
 
日本淡水産紅藻リスト(仮)紅藻植物門原始紅藻亜門オオイシソウ綱オオイシソウ目オオイシソウ科オオイシソウ属オオイシソウ
 
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