エナシダジア Dasysiphonia sessilis |
作成者:鈴木雅大 作成日:2012年2月9日(2023年1月12日更新) |
エナシダジア(柄無しだじあ) |
Dasysiphonia sessilis (Yamada) M.M. Cassidy, C.W. Schneider & G.W. Saunders 2022: 736. |
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),イギス目(Order Ceramiales),コノハノリ科(Family Delesseriaceae),ダジア亜科(Subfamily Dasyoideae),ダジシフォニア属(Genus Dasysiphonia) |
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),イギス目(Order Ceramiales),ダジア科(Family Dasyaceae),ダジア属(Genus Dasya)*Dasya sessilisとして |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),イギス目(Order Ceramiales),ダジア科(Family Dasyaceae),ダジア属(Genus Dasya)*Dasya sessilisとして |
Basionym |
Dasya sessilis Yamada 1928: 524. Fig. 19; 稲垣 1933: 70. Figs 30, 31; 岡村 1936: 802. Fig. 385; 吉田 1998: 946. Pl. 3-92, Fig. B. Pl. 3-94, Fig. A. |
その他の異名 |
Dasya collabens auct. non Hooker f. & Harvey (1845: 536); Yendo 1918: 72; Kim 2012: 150-154. Figs 115-118. |
Type locality: 青森県 浅虫 |
Type specimen: TI herb. Yendo(東京大学植物標本庫) |
分類に関するメモ:エナシダジアはダジア属(Dasya)に所属していましたが,Cassidy et al. (2022)は,エナシダジアをダジア属からダジシフォニア属(Dasysiphonia)に移しました。 Masuda et al. (2007) によると,日本で報告されているDasya collabensはエナシダジア(D. sessilis)に近いといいます。 |
広義のエナシダジア Dasysiphonia sessilis sensu lato |
採集地:福岡県 福津市 津屋崎;採集日:2018年4月18日;撮影者:鈴木雅大 |
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押し葉標本(採集地:福岡県 福津市 津屋崎;採集日:2018年4月18日;採集者:鈴木雅大) |
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押し葉標本(採集地:新潟県 柏崎市 椎谷 観音崎;採集日:2017年6月21日;採集者:鈴木雅大)*エゴノリの体上に着生 |
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顕微鏡写真(採集地:新潟県 柏崎市 椎谷 観音崎;採集日:2017年6月21日;採集者:鈴木雅大) |
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精子嚢を付けたスティキディア(採集地:新潟県 柏崎市 椎谷 観音崎;採集日:2017年6月21日;採集者:鈴木雅大) |
福岡県津屋崎と新潟県柏崎で採集したエナシダジア(Dasysiphonia sessilis)です。エナシダジアはダジア属(Dasya)に所属していましたが,Cassidy et al. (2022)は,エナシダジアをダジア属からダジシフォニア属(Dasysiphonia)に移しました。エナシダジアには少なくとも2つの系統があり,国際遺伝子配列データベースで"Dasya sessilis"として公開されているrbcL遺伝子の配列(GU473265, GU473266, GU473267)は別種(Dasya sp.)であることが知られています(Shirae-Kurabayashi et al. 2022, 注)。Schneider et al. (2021) は北海道木古内産のエナシダジアのrbcL遺伝子の配列(MW698715)を公開しました。津屋崎と柏崎のエナシダジアのrbcL遺伝子の配列はMW698715と100%一致しました。木古内は,エナシダジアのタイプ産地である青森県浅虫に比較的近いのでMW698715を暫定的にエナシダジアとしましたが,「真の」エナシダジアとして良いかは,更なる検討が必要と考えられます。 注.2022年11月12日に検索したところ,"Dasya sessilis"として公開されていたGU473265-GU473267は,"Dasya sp."に訂正されていました。 柏崎のエナシダジアは,かつて野田光蔵博士(新潟大学名誉教授)が新種として記載されたツツガタダジア(D. cylindrica),エチゴダジア(D. echigoensis),ヒメダジア(D. minor),ナガミダジア(D. nodae)のいずれかに相当するかもしれません。野田先生が記載された新種はタイプ標本の所在不明?などの問題があり,吉田(1998),吉田ら(2015)にはヒメダジアのみが掲載され,他の3種は掲載されていません。命名法的にはいずれも種として問題はないのですが,各種の独立性やエナシダジアとの関係性について分類学的研究検討が必要と考えられます。 |
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押し葉標本(採集地:岩手県 下閉伊郡 山田町 浦の浜 ;採集日:2002年7月13日;採集者:鈴木雅大) |
岩手県山田町で採集したエナシダジアです。上述の通り,エナシダジアには複数の種が含まれているようなので,暫定的な同定です。 |
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押し葉標本(採集地:新潟県 両津市 風島弁天(現 佐渡市 風島弁天);採集日:2003年7月24日;採集者:鈴木雅大) |
新潟県佐渡島で採集したエナシダジアです。遺伝子解析は行っていないので暫定的な同定です。Masuda et al. (2007) は,日本で報告されているDasya collabensはエナシダジア(Dasysiphonia sessilis)に近いと述べていますが,著者が佐渡島で採集した"D. collabens"はエナシダジアとは別種と考えられ,日本海沿岸にはエナシダジアに似た複数種が生育している可能性があります。Noda (1972) が記載したエチゴダジア(D. echigoensis)とナガミダジア(D. elongata (現 D. nodae))を含めての分類学的検討が必要と考えられます。 |
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押し葉標本(採集地:青森県 青森市 浅虫 裸島;採集日:2005年8月3日;採集者:鈴木雅大) |
エナシダジアのタイプ産地で採集した標本です。おそらくこれが「真の」エナシダジアだと思いますが,外形の良く似た2種が同所に生えていることは少なくないので,遺伝子解析が必要です。しかし,採集した当時はエナシダジアが複数種を含んでいるとは思っておらず,遺伝子解析用のサンプルを作ることのないままホルマリン固定してしまいました。固定してからかなり日数が経ってから標本を作ったため,赤紫色に変色しています。 |
参考文献 |
Cassidy, M.M., Schneider, C.W. and Saunders, G.W. 2022. The Dasya baillouviana and D. cryptica complexes (Delesseriaceae, Rhodophyta) in Bermuda with three additional new species from the archipelago. Journal of Phycology 58: 731–745. |
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2012. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 9 Feburary 2012. |
Hooker, J.D. and Harvey, W.H. 1845. Algae Novae Zelandiae. London Journal of Botany 4: 521-551. |
稲垣貫一 1933. 忍路湾及び其れに近接せる沿岸の海産紅藻類.北海道帝国大学理学部海藻研究所報告 2: 1-77. |
Kim, H.-S. 2012. Algal flora of Korea. Volume 4, Number 6 Rhodophyta: Florideophyceae: Ceramiales: Ceramiaceae II (Corticated Species), Dasyaceae. 191 pp. National Institute of Biological Resources, Incheon. |
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京. |
Schneider, C.W., Cassidy, M.M. and Saunders, G.W. 2021. The pseudodichotomous Dasya sylviae sp. nov. (Delesseriaceae, Ceramiales) from 60–90 m mesophotic reefs off Bermuda. European Journal of Taxonomy 751: 24-37. |
Shirae-Kurabayashi, M., Edzuka, T., Suzuki, M. and Goshima, G. 2022. Cell tip growth underlies injury response of marine macroalgae. PROS ONE 17: e0264827. |
Yamada, Y. 1928. Report on the biological survey of Mutsu Bay, 9. Marine algae of Mutsu Bay and adjacent waters. II. Scientific Reports of the Tôhoku Imperial University, Biology 3: 497-534. |
Yendo 1918. Notes on algae new to Japan. VIII. Botanical Magazine, Tokyo 32: 65-81. |
吉田忠生. 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京. |
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189. |
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