カモガシラノリ Dermonema pulvinatum
作成者:鈴木雅大 作成日:2013年11月24日(2021年3月28日更新)
 
カモガシラノリ(鴨頭海苔)
Dermonema pulvinatum (Grunow ex Holmes) K.C. Fan 1962: 336-338. Pls 1-2.
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),ウミゾウメン亜綱(Subclass Nemaliophycidae),ウミゾウメン目(Order Nemaliales),ウミゾウメン亜目(Suborder Nemaliineae),コナハダ科(Family Liagoraceae),カサマツ属(Genus Dermonema
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),ウミゾウメン目(Order Nemaliales),カサマツ科(Family Dermonemataceae),カサマツ属(Genus Dermonema
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),ウミゾウメン目(Order Nemaliales),コナハダ科(Family Liagoraceae),カサマツ属(Genus Dermonema
 
掲載情報
梅崎 1966; 1972: 233; 吉﨑 1978: 149. Figs 22-29; 吉田 1998: 487-488. Pl. 3-7, Fig. D.
 
Basionym
  Nemalion pulvinatum Grunow ex Holmes 1896: 259. Pl. 12, Fig. 6; 岡村 1902: 14; 1907: 39. Pl. 9, Figs 2-9; 1936: 414. Fig. 192; 遠藤 1911: 528. Fig. 151; 瀬川・岡崎 1941: 529. Fig. 1.
 
Type locality: 日本.
Type specimen: Mus, Vindob.
 
カモガシラノリ Dermonema pulvinatum
 
カモガシラノリ Dermonema pulvinatum
撮影地:福岡県 福津市 津屋崎;撮影日:2018年4月18日;撮影者:鈴木雅大
 
カモガシラノリ Dermonema pulvinatum
採集地:福岡県 福津市 津屋崎;採集日:2018年4月18日;採集者:鈴木雅大
 
カモガシラノリ Dermonema pulvinatum
 
カモガシラノリ Dermonema pulvinatum
撮影地:千葉県 館山市 沖ノ島;撮影日:2016年4月28日;撮影者:鈴木雅大
 
カモガシラノリ Dermonema pulvinatum
押し葉標本(採集地:千葉県 館山市 沖ノ島;採集日:2006年4月15日;採集者:鈴木雅大)
 
2007, 2008年頃だったと思いますが,TV番組の番組制作者から「鴨頭海苔」の和名の由来を尋ねられたことがあります。残念ながら和名の初出と思われる文献にも語源は書かれておらず,かといって何が「鴨頭」なのかさっぱり分かりませんでした。生えている様子が「鴨頭」に見えるかと問われれば,「見えなくもないが,鴨頭を連想するだろうか?」といったところで,少なくとも著者には納得がいくものではありませんでした。北山(2020)は褐藻カヤモノリ(Scytosiphon lomentariaの地方名の一つが「乙女の頭」であることに注目し,女性の髪のように長く伸びるカヤモノリを「乙女の頭」,そうでない方を「鴨の頭」とする仮説を挙げています。

2021年,「鴨頭」について,有力な情報が得られました(注)。「鴨頭」を冠する維管束植物として「鴨頭草(ツキクサ)」があり,これはツユクサ(Commelina communisの古名で,万葉集にも登場するそうです。ツユクサの花を「鴨頭」に見立てた万葉の人々の感性には恐れ入ります。そういう目で見ればカモガシラノリが「鴨頭」に見えてくる…ような気がしますがやはり難しいかもしれません。もう1つ有力な情報があり,伊勢平蔵貞丈 著「貞丈雑記」には,汁物の吸口(ユズなど)の古名が「鴨頭」あるいは「香頭」であり,ユズの皮などが汁に浮いている様子が鴨の頭のように見えるためと解説されているそうです。原典は確認していませんが,カモガシラノリは汁に入れて食べられるものなので,汁に浮くカモガシラノリを「鴨頭」としたのは説得力のある説のような気がします。採れる場所と時期が限られているので,著者は未だカモガシラノリを食べてみたことはありませんが,機会があれば味噌汁の具とし,「鴨頭」のように見えるか確かめてみたいと思っています。ただ,吸口としての「鴨頭」の読み方は「コウトウ」なので,もしそうであるならば「コウトウノリ」と呼ばれていたはずで,カモガシラノリの語源かどうかは依然として仮説の域を出ません。北山(2020)が述べている通り,「いまだ確たる結論が得られない語源の謎も地方食用海藻の魅力」ということでしょう。

注.仲田崇志博士から情報提供頂きました(2021年3月28日)。深く感謝申し上げます。

 
参考文献
 
Fan, K.C. 1962. Studies on the reproductive organs of red algae, II - the genus Dermonema. Acta Botanica Sinica 10: 336-338.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2012. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 9 Feburary 2012.
 
Holmes, E.M. 1896. New marine algae from Japan. Journal of the Linnean Society of London, Botany 31: 248-260, pls VII-XII.
 
伊勢平蔵貞丈 1843. 貞丈雑記.文渓堂.
 
北山太樹 2020. カモガシラノリの謎 -地方食用海藻の魅力-.海洋と生物 42: 543-546.
 
岡村金太郎 1902. 日本藻類名彙.276 pp. 敬業社, 東京.
 
岡村金太郎 1907. 日本藻類圖譜 第1巻 第2集.東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
瀬川宗吉・岡崎彰夫 1941. かもがしらのりの嚢果.植物及動物 9: 529-530.
 
梅崎 勇 1966. カモカシラノリの分類.南紀生物 8: 47-51.
 
Umezaki, I. 1972. The life histories of some Nemaliales whose tetrasporophytes were unknown. In: Contributions to the Systematics of Benthic Marine Algae of the North Pacific. (Abbott, I.A. & Kurogi, M. Eds), pp. 231-242. Japanese Society Phycology, Kobe.
 
遠藤吉三郎 1911. 海産植物学.748 pp. 博文館,東京.
 
吉田忠生. 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189.
 
吉﨑 誠 1978. 邦産ウミゾウメン目の形態分類学的研究(2)カサマツ属2種の体構造と生殖器官.植物研究雑誌 53: 145-153.
 

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