フクロフノリ Gloiopeltis furcata |
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作成者:鈴木雅大 作成日:2011年1月15日(2020年12月29日更新) |
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フクロフノリ(袋布海苔) |
Gloiopeltis furcata (Postels & Ruprecht) J. Agardh 1851: 235. |
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紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),フノリ科(Family Endocladiaceae),フノリ属(Genus Gloiopeltis) |
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*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),フノリ科(Family Endocladiaceae),フノリ属(Genus Gloiopeltis) |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),スギノリ目(Order Gigartinales),フノリ科(Family Endocladiaceae),フノリ属(Genus Gloiopeltis) |
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掲載情報 |
De Toni 1905: 1534; 遠藤 1911: 711-721. Pls 199, 200; 岡村 1927: 164-167, 175-177. Pl. 244; 1936: 562. Fig. 264; Fan & Fan 1964: 274-275. Pls 1, 2; Abbott & Hollenberg 1976: 423. Fig. 377; Lee et al. 1996: 91-93. Figs 1-3; Oh & Lee 1996: 82, 84. Figs 2, 17-30, 44, 45; 吉田 1998: 678. Pl. 3-45, Fig. A; Xia 2004: 52. Fig. 28. Pl. 3-3; Tang et al. 2016: 51-55. Figs 1-4; 香村 2018: 655-656; Hanyuda et al. 2020: 162-163. Figs 1, 2. |
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Basionym |
Dumontia furcata Postels & Ruprecht 1840: 19; Ruprecht 1850: 118. |
Heterotypic synonym |
Gloiopeltis minuta Kylin 1941: 7. Pl. 2, Fig. 4; Dawson 1953: 93-94. Pl. 7, Figs 8, 9. (Type locality: Avalon, Santa Catalina Island, California. Type specimen: ) |
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Type locality: Ad saxa in oceano pacifico septemptrionale. |
Type specimen: LE (Komarov Botanical Institute of RAS) |
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沖縄県版レッドデータブック第3版(2018):準絶滅危惧(NT) |
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分類に関するメモ:Hanyuda et al. (2020) によると,日本産フノリ属は現在認められている5種以外にも複数種が存在すると考えられます。「真の」フクロフノリ(Gloiopeltis furcata)に相当するものは東北地方以北に分布し,他の地域で「フクロフノリ」と呼ばれているものは別種であり,かつ2~3種に分けられると考えられます。 |
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真のフクロフノリ? |
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撮影地:岩手県 下閉伊郡 山田町 田の浜荒神;撮影日:2010年7月24日;撮影者:鈴木雅大 |
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撮影地:岩手県 下閉伊郡 山田町 小谷鳥漁港;撮影日:2010年7月24日;撮影者:鈴木雅大 |
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撮影地:北海道 函館市 住吉町;撮影日:2012年4月7日;撮影者:鈴木雅大 |
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Hanyuda et al. (2020) によると,フクロフノリ(Gloiopeltis furcata)は複数種を混同していると考えられます。「真のフクロフノリ」,すなわちG. furcataに相当するものは東北地方以北に分布していることから,著者が撮影した「フクロフノリ」の中では,岩手県山田町,北海道函館のものが,「真のフクロノフノリ」である可能性があると思います。しかし,北海道,東北では,おそらく未記載種と考えられるフノリ属の仲間(Gloiopeltis sp.1, Gloiopeltis sp.5)も報告されています。残念ながらG. furcata及びその近似種は,現在のところ遺伝子解析によって区別する他ないため,著者が撮影した「フクロフノリ」の中に,G. furcataがあるのか判断がつきません。機会があれば,サンプルを遺伝子解析して確かめてみたいと思います。 |
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広義のフクロフノリ |
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撮影地:千葉県 銚子市 長崎町 酉明浦;撮影日:2017年5月12日;撮影者:鈴木雅大 |
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押し葉標本(採集地:千葉県 銚子市 外川町;採集日:2001年3月21日;採集者:鈴木雅大) |
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撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋(淡路島);撮影日:2015年4月22日;撮影者:鈴木雅大 |
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撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2016年3月10日;撮影者:鈴木雅大 |
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撮影地:兵庫県 淡路市 大磯(淡路島);撮影日:2017年3月29日;撮影者:鈴木雅大 |
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撮影地:兵庫県 淡路市 大磯(淡路島);撮影日:2018年5月29日;撮影者:鈴木雅大 |
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撮影地:新潟県 佐渡市 三川 腰細城ヶ浜公園(佐渡島);撮影日:2017年4月25日;撮影者:鈴木雅大 |
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押し葉標本(採集地:新潟県 佐渡市 三川 腰細城ヶ浜公園;採集日:2017年4月25日;採集者:鈴木雅大) |
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撮影地:新潟県 佐渡市 下相川 千畳敷(佐渡島);撮影日:2017年4月27日;撮影者:鈴木雅大 |
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押し葉標本(採集地:新潟県 佐渡市 下相川 千畳敷;採集日:2017年4月27日;採集者:鈴木雅大) |
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体の横断面(採集地:新潟県 佐渡市 下相川 千畳敷(佐渡島);採集日:2017年4月27日) |
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Hanyuda et al. (2020) により,「真のフクロフノリ」,すなわちGloiopeltis furcataに相当するものは東北地方以北に分布していることが示唆されたことから,千葉県銚子,兵庫県淡路島,新潟県佐渡島の「フクロフノリ」はG. furcataとは別種と考えられます。また,複数種を混同している可能性も高いと考えられます。「フクロフノリ」と同定されてきた未記載種は,複数あると考えられますが,遺伝子解析によって区別されるものの,形態的特徴の違いは不明で,未だ新種記載などの分類学的検討は行われていません。本サイトでは,「フクロフノリ」と同定されているものについて,暫定的に「広義のフクロフノリ」として掲載しました。 |
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フノリの味噌汁 |
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乾燥したフノリ(食用に販売されているもの) |
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フノリの味噌汁 |
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フクロフノリ(Gloiopeltis furcata)を始めとしたフノリの仲間は,和名が示す通り「布糊」の材料として用いられた他,味噌汁の具などとして食べられています。 |
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参考文献 |
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Dawson, E.Y. 1953. Marine red algae of Pacific Mexico. Part 1. Bangiales to Corallinaceae subf. Corallinoidae. Allan Hancock Pacific Expeditions 17: 1-239. |
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De Toni, G.B. 1905. Sylloge algarum omnium hucusque cognitarum. Vol. IV. Florideae. Sectio IV. pp. 1523-1973. Patavii. |
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Fan, K.C. and Fan, Y.P. 1964. Studies on the reproductive organs of red algae. IV. Gloiopeltis furcata (Post. et Rupr.) J. Ag. Acta Botanica Sinica 12: 274-276. |
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Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2020. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 29 December 2020. |
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香村眞徳 2018. フクロフノリ.In: 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-.pp. 655-656. 沖縄県環境部自然保護課,沖縄. |
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Tang, Y., Liu, H., Yu, Y. and Li, X. 2016. Early life stage development of Gloiopeltis furcata (Gigartinales, Endocladiaceae) from northern China. Journal of Biotech Research 7: 49-56. |
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Xia, B. 2004. Flora algarum marinarum sinicarum. Tomus II. Rhodophyta. No. III. Gelidiales, Cryptonemiales, Hildenbrandiales. 203 pp. Science Press, Beijing. |
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遠藤吉三郎 1911. 海産植物学.748 pp. 博文館,東京. |
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吉田忠生. 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京. |
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吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189. |
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