トサカノリ Meristotheca japonica |
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年11月19日(2023年12月8日更新) |
トサカノリ(鶏冠海苔) |
Meristotheca japonica Kylin 1932: 28. |
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),ミリン科(Family Solieriaceae),トサカノリ属(Genus Meristotheca) |
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),ミリン科(Family Solieriaceae),トサカノリ属(Genus Meristotheca)*M. papulosaとして |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),スギノリ目(Order Gigartinales),ミリン科(Family Solieriaceae),トサカノリ属(Genus Meristotheca)*M. papulosaとして |
掲載情報 |
Yang et al. 2023: [5-7]. Figs 3, 4. |
その他の異名 |
Meristotheca papulosa auct. non (Montagne) J. Agardh (1872: 37); 遠藤 1911: 622. Figs 177, 178; 岡村 1936: 595. Fig. 279; 吉田 1998: 804; Fay et al. 2005: 236-238, 241. Figs 1-25; 小林 2014: 545; 岩永 2018: 664-665. |
Eucheuma papulosa auct. non (Montagne) A.D. Cotton & Yendo in Cotton (1914: 220); 岡村 1926: 123. Pl. 234. Pl. 235, Figs 11-14. |
Type locality: 日本 |
Lectotype specimen: LD 341 (Lund University, Sweden) |
環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧(NT);千葉県レッドデータブック植物・菌類編 2023年改訂版:情報不足種;愛媛県レッドデータブック2014:情報不足(DD);福岡県レッドデータブック2011:情報不足;長崎県レッドリスト(2011):準絶滅危惧種(NT);鹿児島県レッドリスト(2015):準絶滅危惧;沖縄県版レッドデータブック第3版(2018):情報不足(DD) |
分類に関するメモ:トサカノリは,"Meristotheca papulosa"に充てられてきましたが,Yang et al. (2023) は,日本産種をM. papulosaとは別種として区別し,M. japonicaに充てました。 |
撮影地:神奈川県 三浦市 三崎町 諸磯;撮影日:2011年4月18日;撮影者:鈴木雅大 |
押し葉標本(採集地:千葉県 館山市 沖ノ島;採集日:2004年6月19日;採集者:鈴木雅大) |
押し葉標本(採集地:静岡県 下田市 田牛 二穴洞窟;採集日:2008年8月17日;採集者:鈴木雅大) |
押し葉標本(採集地:静岡県 下田市 田牛 二穴洞窟;採集日:2007年4月16日;採集者:鈴木雅大) |
押し葉標本(採集地:東京都 八丈島 神湊漁港;採集日:2004年5月5日;採集者:鈴木雅大) |
トサカノリは,現在レッドリストに掲載されるなど,資源の減少が心配される種類ですが,もともとは海藻サラダの「赤トサカ」,「緑トサカ」として良く食べられていた海藻です。現在の海藻サラダの「トサカ」は海外から輸入したものが主となっているようです。身近な海藻ではありますが,形態変異の激しい種類としても知られており,葉状部の幅や体の縁辺から生じる副出枝,葉状部の分枝の回数などが様々に変化します。赤くて目立つことや,時にアート作品のような奇妙な形態をとることから,レッドリストに掲載される以前は,見かけるとつい採ってしまう海藻でした。 |
Meristotheca japonicaの再評価とM. pilulaoraとの関係 |
トサカノリは,"Meristotheca papulosa"に充てられてきましたが,Yang et al. (2023) は,日本産種をM. papulosaとは別種として区別し,M. japonicaに充てました。トサカノリがM. papulosaとは別種である可能性は,Faye et al. (2005)が指摘していましたが,M. papulosaのタイプ産地がイエメンであり,日本産種との比較が困難とされてきました。Yang et al. (2023) によると,M. japonicaとM. papulosaの形態的特徴は近似しており,明確な違いは見られませんが,分子系統解析において,Schneider et al. (2020)が公開したオマーン(Raaha Bay, Dhofar)産のM. papulosaのcox1遺伝子の配列(MN836583, ABMMC14432-10)と,M. japonicaは系統的に離れています。配列情報しか公開されていないため,Schneider et al. (2020)の同定を信じるしかありませんが,イエメンと比較的近い場所のサンプルであることから,MN836583を真のM. papulosaとみなしても良いかもしれません。
Yang et al. (2023) は,韓国で"M. papulosa"と同定されてきたサンプルを,M. papulosaともM. japonicaとも異なる新種として区別し,M. pilulaoraを記載しました。M. pilulaoraの外見はトサカノリ(= M. japonica)と酷似していますが,Yang et al. (2023) によると,M. pilulaoraは,体基部に茎状部を持たないこと,皮層が薄いこと,嚢果の表面に突起を持たないことで,トサカノリと区別されます。現在のところ,M. pilulaoraの日本での生育は確認されていませんが,地理的に見て,日本に分布していてもおかしくはないと考えられ,今後トサカノリを同定する際は,M. pilulaoraとの違いについて注視する必要があると思います。 |
参考文献 |
Agardh, J.G. 1872. Bidrag till Florideernes systematik. Lunds Universitets Års-Skrift, Afdelningen for Mathematik och Naturvetenskap 8: 1-60. |
Cotton, A.D. 1914. The Japanese seaweed, Tosaka nori. Kew Bull. 1914: 219-222. |
Faye, E.J., Shimada, S., Kawaguchi, S. & Masuda, M. 2005. Characterization of the edible red alga Meristotheca papulosa (Solieriaceae, Gigartinales) from Japan. Phycological Research 53: 234-245. |
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2023. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 8 December 2023. |
岩永洋志登 2018. トサカノリ.In: 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-.pp. 664-665. 沖縄県環境部自然保護課,沖縄. |
小林真吾 2014. トサカノリ.In: 愛媛県レッドデータブック2014-愛媛県の絶滅のおそれのある野生生物-.p. 545. 愛媛県県民環境部環境局自然保護課,松山. |
Kylin, H. 1932. Die Florideenordung Gigartinales. Acta Universitatis Lundensis 28: 1-88. |
Montagne, C. 1850. Pugillus algarum yemensium, quas collegerunt annis 1847-1849, clarr. Arnaud et Vaysière. Annales des Sciences Naturelles, Botanique, Troisième série 13: 236-248. |
岡村金太郎 1926. 日本藻類圖譜 第5巻 第7集.東京.*自費出版 |
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京. |
Schneider, C.W., Peterson, E.S. and Saunders, G.W. 2020. Two new species of Solieriaceae (Rhodophyta, Gigartinales) from the eutrophic and mesophotic zones off Bermuda, Meristotheca odontoloma and Tepoztequiella muriamans. Phycologia 59: 177-185. |
Yang, M.Y., Kang, J.C., Fujita, D. and Kim, M.S. 2023. Molecular phylogeny and genetic diversity of the economic seaweed Meristotheca (Gigartinales, Rhodophyta) in the northwest Pacific, with a description of M. pilulaora sp. nov. Journal of Applied Phycology https://doi.org/10.1007/s10811-023-03135-4. |
遠藤吉三郎 1911. 海産植物学.748 pp. 博文館,東京. |
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京. |
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189. |
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