シンカイヒメダルス Halopeltis tanakae
 
作成者:鈴木雅大;作成日:2020年12月20日(2021年9月5日更新)
 
シンカイヒメダルス(深海姫だるす)
Halopeltis tanakae Mas. Suzuki & R. Terada 2021:
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),マサゴシバリ目(Order Rhodymeniales),マサゴシバリ科(Family Rhodymeniaceae),カサネイツツギヌ属(Genus Halopeltis
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),マサゴシバリ目(Order Rhodymeniales),マサゴシバリ科(Family Rhodymeniaceae),マサゴシバリ属(Genus Rhodymenia)*R. prostrataとして
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),マサゴシバリ目(Order Rhodymeniales),マサゴシバリ科(Family Rhodymeniaceae),マサゴシバリ属(Genus Rhodymenia)*R. prostrataとして
 
Homotypic synonym
Rhodymenia prostrata Tak. Tanaka 1965: 58. Figs 7, 8.; 吉田 1998: 860. Pl. 3-81, Fig. F. *Replaced synonym
 
Type locality: 鹿児島県 馬毛島沖
Holotype specimen: SAP 52156 (北海道大学大学院理学研究科植物標本庫)
 
分類に関するメモ:シンカイヒメダルスはマサゴシバリ属(Rhodymenia)のメンバーでしたが,Suzuki & Terada (2021)は,シンカイヒメダルスをマサゴシバリ属からカサネイツツギヌ属(Halopeltis)に移しました。カサネイツツギヌ属には,既にH. prostrata G.W. Saundersという種が記載されていたため,Halopeltis tanakaeとして新名を提唱しました。
 
シンカイヒメダルス Halopeltis tanakae
 
シンカイヒメダルス Halopeltis tanakae
採集地:鹿児島県 馬毛島沖;採集日:2016年5月18日;採集者:寺田竜太博士
 
鹿児島県馬毛島沖で鹿児島大学水産学部附属実習船「南星丸」を利用して行われたドレッジ調査で採集されたもので,水深36.8mという深所から採集されました。生のサンプルは光を当てると青白い干渉色を示します。海底でどのように生えているかは分かりませんが,生育時はもっと鮮やかな蛍光色が見られるのではないかと思います。

シンカイヒメダルスはTanaka (1965) が鹿児島県馬毛島沖の水深50mから採集し,マサゴシバリ属(Rhodymenia)の新種として記載した種です。以後,報告の無かった種類ですが,鹿児島大学水産学部で定期的に実施している馬毛島沖のドレッジ調査において,約50年ぶりに採集,確認されました。Suzuki & Terada (2021) は遺伝子解析と形態観察に基づき,シンカイヒメダルスをマサゴシバリ属からカサネイツツギヌ属(Halopeltis)に移しました。

 
シンカイヒメダルス Halopeltis tanakae
押し葉標本(採集地:鹿児島県 馬毛島沖;採集日:2016年5月18日;採集者:寺田竜太博士)
 
体の横断面
体の横断面 *1.0%コットンブルーで染色
 
内層部に形成された小細胞
 
内層部に形成された小細胞
内層部に形成された小細胞(矢印)*1.0%コットンブルーで染色
 
本種の切片を良く観察すると,内層部に小細胞が見つかります。内層部に小細胞を持つことがカサネイツツギヌ属(Halopeltis)とマサゴシバリ属(Rhodymenia)を区別する形態的特徴の一つです。ただし,本種において小細胞は決して頻繁にみられるものではなく,遺伝子解析によって本種がカサネイツツギヌ属のメンバーであることが示唆されたことを受け,丹念に探したところ,数ヵ所見つかったという程度です。ただ,小細胞自体は見つからなくても,内層部の細胞間隙が大きいので,断面の印象がマサゴシバリ属とは異なります。
 
嚢果の縦断面
嚢果の縦断面
 
‘réseau muqueux’
 
‘réseau muqueux’
‘réseau muqueux’
 
シンカイヒメダルスの嚢果を観察したところ,嚢果の内腔に‘réseau muqueux’と呼ばれる粘液質の物質がみられました。調べてみると類似の粘液物質はH. willisiiでも報告されていました。‘réseau muqueux’はウエバグサ属(Halichrysis)にみられる特徴で,ウエバグサ属とカサネイツツギヌ属を区別する特徴だったのですが,シンカイヒメダルスとH. willisiiでもみられることから,属を区別する特徴が曖昧になってしまいました。ウエバグサ属とカサネイツツギヌ属は遺伝子解析において姉妹群の関係にあり,近い仲間であることは間違いないのですが,同属とみなして良いものか,もしくはそれぞれの属を特徴づける形態的特徴が‘réseau muqueux’以外にあるものか,今後の検討が俟たれています。
 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2020. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 20 December 2020.
 
Suzuki, M. and Terada, R. 2021. Morpho-anatomical and molecular reassessments of Rhodymenia prostrata (Rhodymeniaceae, Rhodophyta) from Japan support the recognition of Halopeltis tanakae nom. nov. Phycologia (published online) DOI: 10.1080/00318884.2021.1959743.
 
Tanaka, T. 1965. Studies on some marine algae from Southern Japan-VI. Memoirs of the Faculty of Fisheries, Kagoshima University. 14: 52-71.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ紅藻植物門真正紅藻綱マサゴシバリ亜綱マサゴシバリ目マサゴシバリ科
 
日本産海藻リスト紅藻植物門真正紅藻亜門真正紅藻綱マサゴシバリ亜綱マサゴシバリ目マサゴシバリ科カサネイツツギヌ属シンカイヒメダルス
 
「生きもの好きの語る自然誌」のトップに戻る