カサノリ Acetabularia ryukyuensis
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2021年10月29日(2025年3月27日更新)
 
カサノリ(傘海苔,別名:オトヒメガサ,オトヒメカラカサ)
Acetabularia ryukyuensis Okamura & Yamada in Okamura 1932: 71. Pl. 235, Figs 5-12.
 
緑藻植物門(Phylum Chlorophyta),アオサ藻綱(Class Ulvophyceae),カサノリ目(Order Dasycladales),カサノリ科(Family Polyphysaceae),カサノリ属(Genus Acetabularia
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),カサノリ目(Order Dasycladales),カサノリ科(Family Polyphysaceae),カサノリ属(Genus Acetabularia
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),カサノリ目(Order Dasycladales),カサノリ科(Family Polyphysaceae),カサノリ属(Genus Acetabularia
 
掲載情報
Yamada 1934: 53-54. Fig. 20; 岡村 1936: 83; 吉田 1998: 156-157. Pl. 1-13, Fig. O; 香村 2018: 624-625; 嶌田 2025: 326-329.
 
Misapplied name
  カサノリ Acetabularia mediterranea auct. non J.V.Lamouroux (1816: 249): 岡村 1902: 195; 1916: 247.
 
Type locality: 琉球(沖縄県)
Type specimen: SAP herb. Okamura (北海道大学大学院理学研究科植物標本庫 岡村金太郎コレクション)
 
環境省第5次レッドデータブック:絶滅危惧II類(VU);鹿児島県レッドリスト(2015):準絶滅危惧;沖縄県版レッドデータブック第3版(2018):準絶滅危惧(NT)
 
カサノリ Acetabularia ryukyuensis
 
カサノリ Acetabularia ryukyuensis
 
カサノリ Acetabularia ryukyuensis
 
カサノリ Acetabularia ryukyuensis
採集地:沖縄県 名護市 嘉陽海岸;採集日:2025年3月24日;撮影者:鈴木雅大
 
カサノリ Acetabularia ryukyuensis
押し葉標本(採集地:沖縄県 名護市 嘉陽海岸;採集日:2025年3月24日)
 
ケセランパサラン?
 
ケセランパサラン?
 
ケセランパサラン?
採集地:沖縄県 名護市 嘉陽海岸;採集日:2025年3月24日;撮影者:鈴木雅大
 
2000年頃だったでしょうか。お宝を鑑定するTV番組から,藻類関係者に「ケセランパサラン」とされる物体の鑑定依頼がありました。著者は当時学生でしたが,師匠から「どう思う?」と画像を見せて頂きました。岩に白い糸状のものが生えている画像でしたが,師匠に分からないものが当時の著者に分かるはずもありませんでした。その後,数名の藻類学者を経由した後,ある海藻学者により,その物体は死んで枯れた後に残ったカサノリ類の柄であることが解明されました。

採集したカサノリを標本とした後,カサノリが着生していた石を洗っていたところ,かつて見た「ケセランパサラン(偽)」を思い出しました。石に生えた謎の白い糸(カサノリの柄)は,得体の知れない生き物に見えなくもありません。「ケセランパサラン(偽)」の正体を見破った先生は本当に凄いと思います。ただ,藻類学者に鑑定依頼をしている時点で,番組制作者は,「ケセランパサラン(偽)」が藻類である可能性を見越していたのかもしれず,凄まじい慧眼の持ち主だったのかもしれません。インターネットで調べても出てこないので,放映されなかったものと思われますが,埋もれてしまうには惜しいエピソードだと思いました。

 
痛恨の誤同定
 
  カサノリ Acetabularia ryukyuensis   カサノリ Acetabularia ryukyuensis  
 
  カサノリ Acetabularia ryukyuensis   カサノリ Acetabularia ryukyuensis  
採集地:Bitaugan, Catanduanes Island, Philippines;採集日:2014年3月5日;撮影者:鈴木雅大
 
カサノリ Acetabularia ryukyuensis
押し葉標本(採集地:Bitaugan, Catanduanes Island, Philippines;採集日:2014年3月5日;採集者:鈴木雅大)
 
2014年にフィリピンのカタンドゥアネス島で採集したカサノリ(Acetabularia ryukyuensis)です。我ながら信じられないミスですが,採集時に学名を取り違えていたらしく(注),リュウキュウガサ(A. dentataとしておりました。その後,南西諸島の海藻を扱うことがなかったため,そのまま忘れていたのですが,沖永良部島などの調査を行うようになり,標本やデータを見直していて間違いに気が付きました。11年間も間違ったまま公開していたという罪深さに震えました。"dentata"の意味を考えれば採集したサンプルに突起状の構造がないことに気が付いても良さそうなものですが・・・。著者の数ある失敗談の中でも最上級に位置すると思います。

注.種小名が"ryukyuensis"であることから,ryukyuensis = リュウキュウガサと思い込んでいたようです。

 
参考文献
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2021. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 29 October 2021.
 
香村眞徳 2018. カサノリ.In: 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-.pp. 624-625. 沖縄県環境部自然保護課,沖縄.
 
Lamouroux, J.V.F. 1816. Histoire des polypiers coralligènes flexibles. 560 pp. De l'imprimerie de F. Poisson, Caen.
 
岡村金太郎 1902. 日本藻類名彙.276 pp. 敬業社,東京.
 
岡村金太郎 1916. 日本藻類名彙 第2版.362 pp. 成美堂,東京.
 
岡村金太郎 1932. 日本藻類圖譜 第6巻 第7集.東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
嶌田 智 2025. カサノリ.In: 環境省(編)第5次レッドデータブック:絶滅のおそれのある日本の野生生物 藻類.pp. 326-329. 環境省,東京.
 
Yamada, Y. 1934. The marine Chlorophyceae from Ryukyu, especially from the vicinity of Nawa. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido Imperial University Ser. 5, 3: 33-88.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ緑色植物亜界アオサ藻綱
 
日本産海藻リスト緑藻植物門アオサ藻綱カサノリ目カサノリ科カサノリ属カサノリ
 
「生きもの好きの語る自然誌」のトップに戻る