ナガアオサ Ulva arasakii |
作成者:鈴木雅大 作成日:2013年11月11日 |
ナガアオサ(長石蓴) |
Ulva arasakii Chihara 1969: 849. Pl. 1, Figs 1-3. |
緑藻植物門(Phylum Chlorophyta),アオサ藻綱(Class Ulvophyceae),アオサ目(Order Ulvales),アオサ科(Family Ulvaceae),アオサ属(Genus Ulva) |
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),アオサ目(Order Ulvales),アオサ科(Family Ulvaceae),アオサ属(Genus Ulva) |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),アオサ目(Order Ulvales),アオサ科(Family Ulvaceae),アオサ属(Genus Ulva) |
掲載情報 |
千原 1998: 674. Fig. 5-761; 吉田 1998: 38-39. |
Type locality: 千葉県 銚子市 犬若. |
Holotype specimen: TNS(国立科学博物館植物研究部標本庫) |
押し葉標本(採集地:茨城県 大洗市 大洗海岸;採集日:2002年7月23日;採集者:鈴木雅大) |
押し葉標本(採集地:青森県 八戸市 鮫 蕪島;採集日:2006年8月9日;採集者:鈴木雅大) |
現在の日本のアオサ類の分類や生育状況から鑑みると,DNA鑑定せずにナガアオサを同定するのは難しいかもしれません。著者はナガアオサのタイプ産地である千葉県銚子半島と,銚子に近い茨城県大洗海岸で採集したものをナガアオサと同定し,それを基にナガアオサかどうかを判断しています。著者が考えているナガアオサの特徴は以下の通りです。1. 体が披針形(円形にならない),2. 分枝しないかしても数回程度,3. 押し葉として乾燥したとき,他のアオサ類と比べてややくすんだ緑色になる,4. 砂をかぶるような岩礁でみられる。銚子半島,大洗海岸,岩手県山田町,青森県八戸市で採集したナガアオサは,1~4の特徴に全て当てはまりました。また,ナガアオサについて「押し葉とした時,他のアオサ類と比べて紙に貼りつきやすい」という嘘みたいな仮説があります。著者の恩師 故 吉﨑 誠 先生(東邦大学名誉教授)から教えられたもので,吉﨑先生は「ナガアオサを記載された千原光雄先生(筑波大学名誉教授)から習った。」とのことでしたが,真偽のほどは分かりません。というのも,著者はアオサ類の標本を作る際,最初から貼りつかないことを念頭に入れ,標本作製時に水に溶いた障子糊を使い,藻体がきっちりと台紙に貼りつくように作っています。この「糊付け」を教えてくださった(注)吉﨑先生も,アオサというアオサは全て「糊付け」をしておられたので,ナガアオサが他のアオサ類より紙に貼りつきやすいのかどうか確かめる術がありません。アオサ類は台紙からはがれると悲惨なことになるので,「糊付け」せずに標本を作るのは避けたいのですが,ナガアオサについては他種よりも貼りつきやすいのかどうか,DNA鑑定と合わせて確かめてみたいと思っています。
注.実際のところ,吉﨑先生は「糊付け」を教えることに難色を示されることがしばしばだったので,著者が見よう見まねで覚えたものです。始めた当初,糊の濃度の調整やノウハウを身に付けるまで何度か失敗を繰り返し,また,普通に押し葉を作るよりも数倍手間がかかることから,著者もこの方法を人に勧めていません。師匠がなぜ教えるのを渋ったか,今では良く分かる気がします。 |
参考文献 |
Chihara, M. 1969. Ulva arasakii, a new species of green algae: its life history and taxonomy. Bulletin of the National Science Museum, Tokyo, Ser. B (Botany) 12: 849-862. |
千原光雄 1998. 第5章 海の藻類 第8節 2-3. アオサ目 Ulvales.In: 千葉県史料研究財団(編)千葉県の自然誌本編4 千葉県の植物1.pp. 673-675. 千葉県. |
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2013. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 11 November 2013. |
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京. |
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189. |
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