キイロスズメバチ Vespa simillima xanthoptera
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2017年8月19日
 
キイロスズメバチ(黄色雀蜂,英名:Japanese yellow hornet)
Vespa simillima xanthoptera Cameron, 1903
 
動物界(Kingdom Animalia),左右相称動物亜界(Subkingdom Bilateralia),旧口動物(前口動物)下界(Infrakingdom Protostomia),脱皮動物上門(Superphylum Ecdysozoa),節足動物門(Phylum Arthropoda),汎甲殻亜門(Superphylum Pancrustacea),六脚上綱(Superclass Hexapoda),昆虫綱(Class Insecta),有翅亜綱(Subclass Pterygota),新翅下綱(Infraclass Neoptera),完全変態上目 Superorder(Holometabola),ハチ(膜翅)目(Order Hymenoptera),ハチ(細腰)亜目(Suborder Apocrita),スズメバチ上科(Superfamily Vespoidea),スズメバチ科(Family Vespidae),スズメバチ亜科(SubfamilyVespinae),スズメバチ属(Genus Vespa
 
職場のスズメバチ騒動
 
2017年の夏,兵庫県淡路島にある著者の職場にキイロスズメバチが巣を作りました。業者に依頼して駆除してもらったのですが,駆除しても駆除しても巣を作られ,しかも実習シーズンの真っ只中だったため大騒動になりました。備忘録として,また今後の教訓として顛末を記しておこうと思います。
 
  キイロスズメバチの巣   キイロスズメバチの巣  
 
2017年7月21日(金):建物の南側の庇にキイロスズメバチの巣が発見される。ハシゴや足場を組んでも届かないところに作られたため,著者らの手に負えず駆除を依頼。2日後に小学生30名を対象とした実習を予定していたことから,その日の内に来てくれる業者を探し,13時頃駆除してもらう。高所作業車を手配する必要があり,結構な費用であった。生き残っているハチについて,業者にその後の対処方法を尋ねたところ,「しばらくすればいなくなる。」との事だった。
 
キイロスズメバチの生き残り
 
8月1日(火):7月に駆除したハチの生き残りと思われるハチ達が新たな巣を作っているのを確認。しばらくすればいなくなると思い,対応が後手に回ったことを後悔する。2日後に中学・高校生10名を対象とした実習を予定していたため駆除を行うことになる。前回と違い,非常階段からハシゴを伸ばせば届く距離であったが,防護服も何もない状態で近づくのがためらわれ,前回とは別の業者に駆除を依頼。21時過ぎに駆除してもらう。業者の方から,ハチの駆除は夜にやる方が良いことを教わる。ハチの行動が鈍く,多くのハチが巣に戻っているからとのこと。
 
キイロスズメバチの駆除
2度目に依頼した業者は夜にハシゴと殺虫剤を使って駆除を行った。
  
8月2日(水):職場の技術職員からハチがまた集まっているとの連絡がある。著者は当日神戸に出張していたが,22時半頃淡路島に戻る。職場に防護服はなく,長袖や帽子を持って来なかったので不安はあったが,幸い大した数ではなさそうだったので,ハシゴと殺虫剤を使って駆除する。ハチがまた巣を作らないように周辺の壁にも殺虫剤を噴霧しておいた。
 
  キイロスズメバチの駆除(4回目)   キイロスズメバチの駆除(4回目)  
 
8月9日(水):技術職員からハチがまた新しい巣を作っているとの連絡がある。4日(金)の時点で分かっていたそうだが,写真を撮ってメールを回す以外の対応はしていないとのこと。著者は出張で3日(木)の夕方以来淡路島を離れていたが,その間に生き残っていた十匹程度のハチが巣を作った模様。9日の22時半頃職場に戻り,ハシゴと殺虫剤を使って駆除する。作りかけの巣は高枝切りバサミで落とした。防護服は養蜂用のものが用意されていたが上着のみで手袋なし。特に危ないと感じることはなかったものの,胴長を履く,袖の長い手袋をはめるなどの準備が必要だったかもしれない。それにしても,三度も駆除したにもかかわらず,4, 5日で新しい巣を作るという凄まじい生存本能には驚いた。壁に吹き付ければ1ヶ月はハチが寄り付かないという殺虫剤の効果は何だったのかとも思ったが,説明書きには「壁が濡れる位殺虫剤をかけること」と書かれていた。今回は,より綿密に殺虫剤を噴霧しておいたが,スズメバチ用の殺虫剤はかなり強力らしく,うっかり吸い込んでしまったところ,舌が痺れるような感覚が続き,しばらく口の中が苦かった。マスクをして行うべきだったと後悔した。
 
8月11日(金):技術職員からハチが最初に駆除した巣の場所に数匹集まっているとの連絡がある。また届かないところに巣を作られてはたまらないので,非常階段からホースで水をかけて追い払う。翌日,翌々日も水をかけて対処。17日の時点でようやく姿を見かけなくなる。
 
巣が発見されてからハチがいなくなるまで約1ヶ月,たった1個の巣がここまで大騒動になるとは思ってもみませんでした。駆除の依頼先,駆除の方法,対処方法,ハチの生態に関して無知だったこと,当時の技術職員が何もしてくれなかったことなど,反省点のとても多い出来事でした。ハチを見かけたらすぐに対処しないと数日で巣を作られてしまうこと,ある程度大きくなった巣を駆除するのは夜に行うのが効果的なこと,駆除しても生き残ったハチがまた新しい巣を作ろうとすることなど,学んだことも多かったと思います。今回のハチ駆除で得た教訓は,ハチが巣を作り始めたことにいかに早く気付けるかということだと思います。手の届かないところに作られ,巣がある程度の大きさになってしまうと,専門の業者に頼む他なく,個人ではとても払えない位の金額になってしまいます。作り始めの巣ならば,ホースの水流で落とすことや,夜にハシゴをかけて近づき,殺虫剤で駆除することも難しくはありません(危険を伴うことに違いはありませんが)。スズメバチ騒動以来,職場では教職員が頻繁に建物の南側を見回るようになりました。著者が二回目の駆除を行った翌日,新品の防護服(上下と袖付き手袋)が職場に届きました。夜間に職場で対応できる教職員が著者しかいないため,今後も必然的に著者が駆除に当たることになると思いますが,着る機会が訪れないことを願うばかりです。
 
駆除したキイロスズメバチの死骸
駆除したキイロスズメバチの死骸
 
大騒動を引き起こしてくれた厄介者ですが,その風貌は本当にかっこいいと思います。害虫として駆除せざるを得ませんでしたが,何度駆除されてもひたすら新しい巣を作ろうとする姿には感じ入るところがありました。
 
参考文献
 
永幡嘉之 文・写真.奥山清市 写真.2017. くらべてわかる昆虫.143 pp. 山と渓谷社,東京.
 
NPO法人 武蔵野自然塾 編.2017. 危険生物ファーストエイドハンドブック 陸編.132 pp. 文一総合出版,東京.
 
篠永 哲・野口玉雄 2013. フィールドベスト図鑑 vol.17. 危険・有毒生物.256 pp. 学研教育出版,東京.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ オピストコンタ動物界脱皮動物上門節足動物門汎甲殻亜門昆虫綱ハチ(膜翅)目スズメバチ上科
 
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