タバコシバンムシ Lasioderma serricorne
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2015年3月15日
 
タバコシバンムシ(煙草死番虫)
Lasioderma serricorne (Fabricius, 1792)
 
動物界(Kingdom Animalia),左右相称動物亜界(Subkingdom Bilateralia),旧口動物(前口動物)下界(Infrakingdom Protostomia),脱皮動物上門(Superphylum Ecdysozoa),節足動物門(Phylum Arthropoda),汎甲殻亜門(Superphylum Pancrustacea),六脚上綱(Superclass Hexapoda),昆虫綱(Class Insecta),有翅亜綱(Subclass Pterygota),新翅下綱(Infraclass Neoptera),完全変態上目(Superorder Holometabola),コウチュウ(甲虫)目(Order Coleoptera),カブトムシ亜目(Suborder Polyphaga),ナガシンクイ系(Series Bostrichiformia),ナガシンクイ上科(Superfamily Bostrichoidea),シバンムシ科(Family Anobiidae),ラシオデルマ属(Genus Lasioderma
 
タバコシバンムシ Lasioderma serricorne
 
食害された海藻標本
食害されたアサミドリシオグサ(Lychaete sakaiiの押し葉標本
 
食害された海藻標本
食害されたカヤモノリ(Scytosiphon lomentariaの押し葉標本
 
著者は仕事柄,海藻の押し葉標本を良く作ります。海藻標本の保管で最も気を付けなければならないのはカビと考えられており,著者は標本の乾燥と保管には十分注意しています。著者はこれまで8,000枚以上の海藻標本を作りましたが,幸いなことにカビが生えたことはほとんどありません。ところがある日,標本の整理をしていると,標本から粉のようなものがたくさん落ちてきました。良く調べてみると標本が部分的に欠けており,その周りに粉状のものがパラパラと散らばっていました。最初はカビを疑ったのですが,カビがこのような生え方をするはずもなく,虫による食害ということに気が付きました。標本をくまなく調べたところ,甲虫の1種の死骸が見つかりました。北山(2000) によると,海藻標本を食べる虫としてチャタテムシ類が挙げられていましたが,分類群が大きく異なります。さらに調べていくと,植物の押し葉標本を食害し,時に海苔などの乾燥食品を食害するという「タバコシバンムシ」にたどり着きました。また,東北地方の博物館では,海藻標本に本種が発生したことがあるそうです。海藻標本において,害虫の心配はないと思っていたため,大きなショックでした。海藻標本を管理する上で,カビの発生はもちろんですが,本種のような害虫の対策の必要性を改めて感じました。個人で標本を保管している場合,標本の燻蒸を行うことは難しいため,定期的に標本をチェックするか,一部を博物館に寄贈して標本を分散するなどの対策が必要でしょう。
 
参考文献
 
北山太樹 2000. 3 大型藻類.In: 小山博滋 「植物標本の作り方」pp. 49-76. 国立科学博物館,東京.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ オピストコンタ動物界脱皮動物上門節足動物門汎甲殻亜門昆虫綱コウチュウ(甲虫)目
 
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