ヘラワツナギソウ Champia japonica |
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作成者:鈴木雅大;作成日:2013年12月12日 |
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ヘラワツナギソウ(箆輪繋藻) |
Champia japonica Okamura 1931: 49. Pl. 276, Figs 1-6. |
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紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),マサゴシバリ目(Order Rhodymeniales),ワツナギソウ科(Family Champiaceae),ワツナギソウ属(Genus Champia) |
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*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),マサゴシバリ目(Order Rhodymeniales),ワツナギソウ科(Family Champiaceae),ワツナギソウ属(Genus Champia) |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),マサゴシバリ目(Order Rhodymeniales),ワツナギソウ科(Family Champiaceae),ワツナギソウ属(Genus Champia) |
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掲載情報 |
岡村 1936: 687; Segawa 1935: 83; 1956: 100, pl. 60 fig. 468; Kajimura 1979: 107; Xia et al. 1984; Silva et al. 1987: 53; 千原 1996: 561; 吉田 1998: 833. Pl. 3-77, Fig. C; 宮田ら 2002: 40; Kim 2013: 26, 27. Fig. 13. |
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Type locality: 千葉県 洲崎 |
Lectotype specimen: SAP herb. Okamura (北海道大学大学院理学研究科植物標本庫 岡村金太郎コレクション) |
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日本における分布 |
本州太平洋沿岸中部 *瀬戸内海や日本海側で報告されたものは要確認。 |
国外の分布 |
中華人民共和国 (Xia et al. in Tseng 2002) |
Philippine (Silva et al. 1987). |
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雌性配偶体の押し葉標本(採集地:静岡県 下田市 田牛;採集日:2006年5月16日;採集者:鈴木雅大) |
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四分胞子体の押し葉標本(採集地:静岡県 下田市 田牛;採集日:2006年5月16日;採集者:鈴木雅大) |
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鉤状の枝を持つ個体 |
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鉤状の枝 |
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鉤状の枝のスケッチ |
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本種はしばしばヒラワツナギソウ(Champia bifida)と混同されることがあり,長谷川(1951),Noda (1973, 1987) が日本海側で報告したヘラワツナギソウは,ヒラワツナギソウの誤同定と考えられます。本種とヒラワツナギソウは,外見が良く似ていますが,本種の体は基本的に扁圧(compressed)で,ヒラワツナギソウは扁平(flat)です。また,本種は体の下部にしばしば鉤状の枝を形成します。扁平か扁圧かは,しばしばどちらか判断がつかないことがあり,鉤状の枝は常に形成するわけではないので,確実に区別するには体構造を観察する必要があります(後述)。なお,ごくまれにですが本種をワツナギソウ("C. parvula")と間違えることがあるようで,田中(2004)が掲載している"ヘラワツナギソウ"はワツナギソウの間違いです。ワツナギソウは体が円柱形なので,本種とは容易に区別できます。 |
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体の縦断面 *1.0%コットンブルー溶液で染色 |
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体の横断面 *1.0%コットンブルー溶液で染色 |
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体の横断面のスケッチ |
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隔壁部分の横断面 *1.0%コットンブルー溶液で染色 |
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隔壁部分の横断面のスケッチ |
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ヘラワツナギソウとヒラワツナギソウは体構造おいて,体の内腔部を縦走する糸状細胞の配置に違いがあります。ヒラワツナギソウの糸状細胞は,皮層細胞に沿って配置しており,内腔部には糸状細胞が見られませんが,本種の糸状細胞(矢印)は内腔部に散在します。糸状細胞が散在型の配置を取るのは日本産種ではヘラワツナギソウのみなので,本種を同定する上で最も確実な方法になります。 |
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嚢果を付けた体のスケッチ |
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若い嚢果の縦断面 |
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精子嚢を付けた枝の横断面 *1.0%コットンブルー溶液で染色 |
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精子嚢及び精子嚢母細胞のスケッチ |
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四分胞子嚢を付けた体のスケッチ |
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四分胞子嚢を付けた枝の縦断面 *1.0%エリスロシン水溶液で染色 |
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四分胞子嚢のスケッチ |
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参考文献 |
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千原光雄(編集代表)1996. 千葉県の自然誌 本編4 千葉県の植物1.千葉県. |
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長谷川由雄 1951. 道南の離島に於ける海藻フロラ及びその資源に関する研究 第2報 小島に産する二、三の海藻について.北水研研究報告 1: 52-60. |
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Kajimura, M. 1979. Note on the marine algal flora in the middle part of the Japan Sea coast of Honshu II. Rhodophyta. Memoirs of the Faculty of Science, Shimane University 13: 97-120. |
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Kim, H.-S. 2013. Algal flora of Korea. Volume 4, Number 8. Rhodophyta: Florideophyceae: Rhodymeniales, Bonnemaisoniales, Sebdeniales, Peyssonneliales. Marine Red Algae. 183 pp. National Institute of Biological Resources, Incheon. |
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宮田昌彦・菊地則雄・千原光雄 2002. 千葉県産大型海産藻類目録.千葉県立中央博物館自然誌研究報告 特別号 第5号 pp. 9-57. |
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Noda, M. 1973. Some marine algae collected on the coast of Kashiwazaki Province facing the Japan Sea (2). Scientific Reports Niigata University, Ser. D. (Biology) 10: 1-10. |
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Noda, M. 1987. Seaweeds of the Japan Sea. 557 pp. Kazamashobo, Tokyo. |
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岡村金太郎 1931. 日本藻類圖譜 第6巻 第6集.東京.*自費出版 |
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岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京. |
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Segawa, S. 1935. On the marine algae of Susaki, Prov. Idzu and its vicinity. Scientific Papers of the Institute of Algological Research, Hokkaido University 1: 59-90. |
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Silva, P.C., Menez, E.G. and Moe, R.L. 1987. Catalogue of the benthic marine algae of the Philippines. Smithsonian Contributions to the Marine Science 27: 1-179. |
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田中次郎 2004. 日本の海藻.245 pp. 平凡社,東京. |
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Tseng, C.K. (Ed.) 1984. Common seaweeds of China. Science Press, Beijing. |
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吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222pp. 内田老鶴圃,東京. |
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吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189. |
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