ヒビロード Dudresnaya japonica
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年11月18日(2019年4月14日更新)
 
ヒビロード(緋天鵞絨)
Dudresnaya japonica Okamura 1902: 92-93.
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),リュウモンソウ科(Family Dumontiaceae),ヒビロード属(Genus Dudresnaya
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),リュウモンソウ科(Family Dumontiaceae),ヒビロード属(Genus Dudresnaya
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),スギノリ目(Order Gigartinales),リュウモンソウ科(Family Dumontiaceae),ヒビロード属(Genus Dudresnaya
 
掲載情報
岡村 1908: 209. Pls 41, 42; 1936: 477. Fig. 220; 廣瀬 1949: 8-10. Figs 1-4; Notoya & Aruga 1989: 265-266. Fig. 1; 吉﨑 1993: 258-259. Fig. 128; 吉田 1998: 666. Pl. 3-43, Fig. E.
 
Type locality: 神奈川県 藤沢市 江ノ島
Holotype specimen: SAP herb. Okamura(北海道大学大学院理学研究科植物標本庫 岡村金太郎コレクション)
 
ヒビロード Dudresnaya japonica
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2019年4月8日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒビロード Dudresnaya japonica
採集地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);採集日:2019年4月8日;採集者:鈴木雅大
 
ヒビロード Dudresnaya japonica
 
ヒビロード Dudresnaya japonica
撮影地:愛媛県 松山市 高浜町 白石ノ鼻;撮影日:2017年5月26日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒビロード Dudresnaya japonica
押し葉標本(採集地:千葉県 館山市 沖ノ島;採集日:2007年3月1日;採集者:鈴木雅大)
 
ヒビロードの果胞子体形成過程
 
ヒビロードは,助細胞を持つ紅藻の中では果胞子体形成過程の観察が最も容易な種類の1つです。著者が学生の頃は,学生実習でウミゾウメン(Nemalion vermiculareとヒビロードの果胞子体形成過程の観察を行っていました。両種はプレパラート作製において,押しつぶすだけで組織がバラバラになるため,切片を作製する必要がありません。サンプルの成熟度合による当たり外れはありますが,うまくいけば1枚のプレパラートでほぼ全てのステージを揃えることが可能です。このため,著者は紅藻を用いた観察に最も適した教材の1つと考えています。唯一の難点は材料の入手方法で,潮下帯に生育するため採集機会や場所がかなり限定的です。また,傷みやすいため,臨海実験所のように常時海水が供給される所でなければ,ホルマリン固定か冷凍保存する必要があります。著者が学生だった頃はホルマリン固定したサンプルを用いた実習が行われていましたが,教える立場になった現在となっては,ホルマリン漬けのサンプルを学生実習に使用するのはかなりハードルが高く,ドラフトの使用や廃液の扱いを考えるとほぼ不可能です。冷凍保存したサンプルを使うのが唯一の手段ですが,冷凍,解凍したサンプルは,観察出来なくもないが…という有様で,実習に用いるには少々難がありました。惜しいと思いつつ,2008年以降,実習でヒビロードを用いることは無くなりました。

以下はヒビロードの果胞子体形成過程の各ステージです。果胞子体や紅藻類の生殖様式についての解説は,神谷ら(2012)や神谷(2019)をお勧め致します。

 
受精前の造果枝
図1. 受精前の造果枝
 
長い受精毛を持つ造果枝
図2. 長い受精毛を持つ造果枝
 
受精前の造果枝です。造果器の頂部に糸状の受精毛を持ちます。
 
助細胞枝
図3. 受精前の助細胞枝
 
ヒビロードは,助細胞枝という特別な枝を持ち,大きな細胞に挟まれた円盤状の細胞が助細胞です。
 
受精後の造果枝と助細胞枝
図4. 受精後の造果枝と助細胞枝
 
受精後の造果枝と助細胞枝です。受精すると造果器から連絡糸を生じ,連絡糸は助細胞に達し,助細胞からはさらに別の連絡糸を生じます。うっすらとですが,造果器から助細胞まで連絡糸が伸びているのが確認出来ると思います。受精核を助細胞から助細胞へ次々と運んでいると考えられます。
 
受精毛に付着した不動精子
図5. 受精毛に付着した不動精子
 
図4の受精毛の先端部です。受精毛に精子が付着しています。紅藻類は精子に鞭毛がなく,運動性を持たないため「不動精子」と呼んでいます。
 
受精後の造果器
図6. 受精後の造果器
 
図4の造果器周辺の拡大図です。受精後,造果器と造果器から数えて4番目の細胞(矢印)が融合し,融合した細胞から複数の連絡糸(3~8本)を生じます。図では少なくとも4本の連絡糸が確認出来ます。
 
ゴニモブラストを生じた助細胞枝
図7. ゴニモブラスト(造胞子)を生じた助細胞枝
 
助細胞からゴニモブラスト(造胞子)を生じたステージです。造果器から伸びてきた連絡糸が助細胞に達すると,助細胞がふくらみ,複数の連絡糸を生じた後,ゴニモブラストを作り始めます。
 
発達中の果胞子体
図8. 発達中の果胞子体
 
連絡糸(矢印)が到達した助細胞は次々とゴニモブラストを作り,ゴニモブラストは分裂を繰り返し,それぞれの助細胞枝で果胞子体として発達します。1回の受精でたくさんのゴニモブラスト(=受精卵のクローン)を形成することが分かると思います。
 
良く発達した果胞子体
図9. 良く発達した果胞子体
 
良く発達した果胞子体です。成熟より少し前のステージです。この後,ゴニモブラストは成熟して果胞子となって放出されます。
 
参考文献
 
廣瀬弘幸 1949. 紅藻ヒビラウドの雌性生殖器官の進展に就いての一知見.札幌博物学会会報 18(1-2): 8-12.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2011. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 14 June 2011.
 
神谷充伸 2019. 紅藻類の系統と分類.海洋と生物 41: 499-506.
 
神谷充伸・長里千香子・川井浩史 2012. 2. 紅藻類.In: 渡邉 信 監修.藻類ハンドブック.pp. 113-122. NTS,東京.
 
Notoya, M. & Aruga, Y. 1989. The life history of Dudresnaya japonica Okamura (Cryptonemiales, Rhodophyta) in culture. Japanese Journal of Phycology 37: 263-267.
 
岡村金太郎 1902. 日本藻類名彙. 276 pp. 敬業社,東京.
 
岡村金太郎 1908. 日本藻類圖譜 第1巻 第9集. 東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌. 964 pp. 内田老鶴圃, 東京.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌. 1222 pp. 内田老鶴圃, 東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 
吉﨑 誠 1993. ヒビロウド.In: 堀 輝三(編) 藻類の生活史集成 第2巻 褐藻・紅藻類. pp. 258-259. 内田老鶴圃, 東京.
 

写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ紅藻植物門真正紅藻綱マサゴシバリ亜綱スギノリ目リュウモンソウ科

日本産海藻リスト紅藻植物門真正紅藻亜門真正紅藻綱マサゴシバリ亜綱スギノリ目リュウモンソウ科ヒビロード属ヒビロード

「生きもの好きの語る自然誌」のトップに戻る