ミル Codium fragile
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年1月18日(2019年5月26日更新)
 
ミル(海松,古名)
Codium fragile (Suringar) Hariot 1889: 32-33.
 
緑藻植物門(Phylum Chlorophyta),アオサ藻綱(Class Ulvophyceae),ハネモ目(Order Bryopsidales),ハネモ亜目(Suborder Bryopsidineae),ミル科(Family Codiaceae),ミル属(Genus Codium
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),ミル目(Order Codiales),ミル科(Family Codiaceae),ミル属(Genus Codium
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),ミル目(Order Codiales),ミル科(Family Codiaceae),ミル属(Genus Codium
 
掲載情報
岡村 1936: 123. Fig. 62; 新崎ら 1956: 39. Fig. 1; 榎本ら 1994: 279. Fig. 137; 吉田 1998: 129, 132. Pl. 1-11, Fig. G, Pl. 1-13, Fig. P; Lee & Kim 2015: 117. Figs 3g-i.
 
Basionym
  Acanthocodium fragile Suringar 1867: 258.
その他の異名
  Codium mucronatum auct. non J. Agardh (1887); 遠藤 1911: 242. Fig. 86.
  Codium mucronatum var. californicum auct. non (J. Agardh) De Toni & Levi (1887); 岡村 1914: 117. Pl. 130, Figs 1-9.
 
Type locality: "In mari Japonico" 日本沿岸のどこか
Type specimen: L 910, 187...1712.
 
ミル Codium fragile
撮影地:兵庫県 豊岡市 竹野町 大浦湾;撮影日:2016年12月26日;撮影者:鈴木雅大
 
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撮影地:兵庫県 淡路市 江井(淡路島);撮影日:2017年4月10日;撮影者:鈴木雅大
 
ミル Codium fragile
撮影地:千葉県 千葉市 中央区 中央港 千葉ポートパーク;撮影日:2014年4月5日;撮影者:鈴木雅大
 
ミル Codium fragile
 
ミル Codium fragile
撮影地:神奈川県 鎌倉市 稲村ヶ崎;撮影日:2019年5月20日;撮影者:鈴木雅大
 
ミル Codium fragile
撮影地:兵庫県 淡路市 大磯(淡路島);撮影日:2016年7月20日;撮影者:鈴木雅大
 
ミル Codium fragile
押し葉標本(採集地:青森県 むつ市 大湊上町;採集日:2004年11月12日;採集者:鈴木雅大)
 
ミル Codium fragile
押し葉標本(採集地:兵庫県 淡路市 大磯(淡路島);採集日:2016年7月20日;採集者:鈴木雅大)
 
ミル Codium fragile   ミル Codium fragile
押し葉標本(採集地:岩手県 下閉伊郡 山田町 船越 浦の浜;採集日:2005年6月23日;採集者:鈴木雅大)
 
潮間帯下部から低潮線付近の岩上に生育します。体は高さ8-16 cm,規則正しく叉状分枝し,全体として扇形に広がります。枝は円柱形で頂端は丸頭,直径 2-4 mm。体の表面はザラザラします。色は暗緑色(海松色)です。
 
ミル Codium fragile   ミル Codium fragile
小嚢   小嚢の先端部
 
ミル Codium fragile   ミル Codium fragile
小嚢の先端部の突起   小嚢の付け根にある栓状構造(septum)
 
 ミル Codium fragile
皮層部のスケッチ(採集地:新潟県 両津市 見立(現 佐渡市 見立);採集日:2003年7月23日)
 
小嚢は棍棒形,頂端に突起を持ち,長さ681-856 μm,直径150-219 μm。小嚢の上部側面から毛を生じ,毛が抜け落ちた痕が残ります(矢頭)。小嚢の下部から髄糸を生じ,新しい小嚢は髄糸の先に形成されます。髄糸の基部に栓状構造(s: septum)を持ちます。
 
配偶子嚢を付けた小嚢(左)と配偶子嚢(右)
 
配偶子嚢は小嚢の中央部側面に形成され,短い柄を持ちます。配偶子嚢は紡錘形,長さ235-271 μm,直径88-124 μm。
 
海松(ミル)は万葉集などに登場する海藻で,「海松色」や「海松紋」は日本の伝統色,模様として知られています。ミルの仲間は,小嚢と呼ばれる小さな袋状の構造がびっしりと連なって構成されています。それぞれの小嚢を仕切る細胞壁を持たず,1個体が巨大な単細胞で出来ています。細胞内に多数の核をもつことから,このような体制を持つ緑藻を多核嚢状体と呼んでいます。小嚢の基部には,細胞壁が肥厚した栓状構造があります。葉緑体等は通り抜けられるので,小嚢と小嚢とを完全に仕切っているわけではありませんが,物質の移動をある程度制限していると考えられます。

ミルの小嚢の先端は尖っており,これが種の特徴となっています。他のミルと手触りを比べてみると,小嚢の先端が尖っているミルは多少ザラザラしている事が分かります。小嚢の形は地域によって,棍棒形,円柱形と様々で,日本国内では基本種であるCodium fragile subsp. fragileのみが生育するとされていますが,世界各地でたくさんの亜種が知られています。太平洋西岸や地中海などで繁茂するミルは日本からの移入種と考えられています。

 
参考文献
 
新崎盛敏・徳田 廣・藤山和恵 1956. ミルの生殖と体形成.植物学雑誌 69: 39-44.
 
榎本幸人・李 義真・平岡雅規 1994. ミル.In: 堀 輝三(編) 藻類の生活史集成 第1巻 緑色藻類.pp. 278-279. 内田老鶴圃,東京.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2012. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 3 April 2012.
 
Hariot, P. 1889. Algues. In: Mission Scientifique du Cap Horn. 1882-1883. Tome V. Botanique. ( Eds), pp. 3-109. Paris: Gauthier-Villars et fils.
 
Lee, H.W. and Kim, M.S. 2015. Species delimitation in the green algal genus Codium (Bryopsidales) from Korea using DNA barcoding. Acta Oceanologica Sinica 34: 114-124.
 
岡村金太郎 1914. 日本藻類圖譜 第3巻 第6集.東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
Suringar, W.F.R. 1867. Algarum iapoinicarum Musei botanici L.B. index praecursorius. Annales Musei Botanici Lugduno-Batavi 3: 256-259.
 
遠藤吉三郎 1911. 海産植物学.748 pp. 博文館,東京.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ緑色植物亜界アオサ藻綱ハネモ目ミル科
 
日本産海藻リスト緑藻植物門アオサ藻綱ハネモ目ハネモ亜目ミル科ミル属ミル
 
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