アメフラシ Aplysia kurodai
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年6月3日(2021年5月29日更新)
 
アメフラシ(雨降らし,雨虎)
Aplysia kurodai Baba, 1937
 
動物界(Kingdom Animalia),左右相称動物亜界(Subkingdom Bilateralia),旧口動物(前口動物)下界(Infrakingdom Protostomia),冠輪動物上門(Superphylum Lophotrochozoa),軟体動物門(Phylum Mollusca),腹足綱(Class Gastropoda),異鰓亜綱(Subclass Heterobranchia),被側区(Cohort Tectipleura),真後肺亜区(Subcohort Euopisthobranchia),アメフラシ目(Order Aplysiida),アメフラシ上科(Superfamily Aplysioidea),アメフラシ科(Family Aplysiidae),アメフラシ属(Genus Aplysia
 
アメフラシ Aplysia kurodai
 
アメフラシ Aplysia kurodai
 
撮影地:徳島県 鳴門市 北灘町 牛の鼻;撮影日:2018年4月26日;撮影者:鈴木雅大
 
アメフラシ Aplysia kurodai
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2017年6月23日;撮影者:鈴木雅大
 
アメフラシ Aplysia kurodai
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2016年6月4日;撮影者:鈴木雅大
 
アメフラシ Aplysia kurodai
撮影地:兵庫県 淡路市 大磯(淡路島);撮影日:2017年3月29日;撮影者:鈴木雅大
 
アメフラシ(Aplysia kurodai)は,磯で頻繁に見かける生き物です。知らずに踏みつけていて,振り返ると水が紫色になっている事があります。これは刺激を受けたアメフラシが防御のために出す汁のせいなのですが,あまり気分の良いものではありません。アメフラシは体内に貝殻を持っており,背中を触ると堅い感触で分かります。
 
アメフラシの体液に染まる磯
撮影地:兵庫県 洲本市 由良(淡路島);撮影日:2018年6月14日;撮影者:鈴木雅大
 
2018年は,淡路島の由良で尋常でない数のアメフラシが見られた年でした。海藻採集中,踏まないように気を付けていたものの,ふと気が付くと足元から赤紫色の汁が噴出しておりました。水面が赤く濁っていく様は,サメ映画(*)を彷彿とさせ,「オーマイガー」とでも叫ぼうかと思いました。*著者はZ級サメ映画をこよなく愛するサメ映画フリーク(自称)です。
 
アメフラシ Aplysia kurodai
撮影地:兵庫県 豊岡市 竹野町 大浦湾;撮影日:2016年12月26日;撮影者:鈴木雅大
 
アメフラシ Aplysia kurodai
撮影地:兵庫県 豊岡市 竹野町 大浦湾;撮影日:2015年5月8日;撮影者:鈴木雅大
 
アメフラシは海底を這うようにゆっくりと移動していますが,背中のひだを使って泳ぐことも知られています。ワカメを海面からロープで吊るしておいたところ,どこからともなく集まって来たアメフラシによってむしゃむしゃと食べられてしまったこともあります。兵庫県竹野では,海底から立ち上がった3 m近くあるホンダワラ類の枝にしがみついていることがあります。下から登ってこれないこともないと思いますが,もしかしたら泳いできたのかもしれません。いつか海中で泳いでいるところを見てみたいと思っていますが,残念ながらYou Tubeの映像以外で泳ぐアメフラシを見たことはありません。
 
ウミソウメン(アメフラシの卵塊)
 
ウミソウメン(アメフラシの卵塊)
撮影地:神奈川県 三浦市 三崎町 諸磯;撮影日:2011年5月18日;撮影者:鈴木雅大
 
ウミソウメン(アメフラシの卵塊)
撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋 松帆海岸(淡路島);撮影日:2021年5月26日;撮影者:鈴木雅大
 
ウミソウメン(アメフラシの卵塊)
撮影地:千葉県 銚子市 外川町;撮影日:2014年5月3日;撮影者:鈴木雅大
 
アメフラシの卵塊はその見た目から「ウミソウメン」と呼ばれています。素麺よりはラーメンの方が近い気もしますが,ともあれ麺類に良く似ています。ただし,見た目に反して卵塊には毒があり,食べると腹を下します。かつて下剤の代わりに使われたという話も聞いたことがありますが,いずれにしろ食用にはお勧めできないものです。ちなみに海藻にはウミゾウメン(Nemalion vermiculareという種類があり,こちらは大変美味しい海藻の一つです。さて,ここで「ウミソウメン」を実際に食べてみた方の話を一つ紹介したいと思います。著者の恩師 故吉崎 誠 先生(東邦大学名誉教授)の実体験に基づく話になります。師を信じておりますが,話の信憑性は保証しかねます。

 吉﨑先生が大学生だった頃,40年以上も前の話ですが,友人らと「アメフラシの卵をどうにかして食べよう!」という話で盛り上がり,試してみることになったそうです。食べると腹を下すことは分かっていたそうですが,毒抜きが出来ればコノワタのように美味いのではないかと考えたそうです。卵塊を1 cm,3 cm,5 cm…と切り分け,くじ引きで食べる大きさを決めて皆で食べてみたのだそうです。結果,全員が便所から出られなくなったそうですが,彼らはあきらめず,今度は湯通ししてから同様に食べてみたのだそうです。結果は全く変わらなかったそうです。ひどい目にあったものの,味は「大変美味」だったそうです。さすがは我が師だと思いましたが,真面目に考えると結構危ない事をやっていると思いますので,絶対に真似をしてはいけません。ただし,アメフラシ自身は食べられるそうで,中国地方では食用とするそうです。一部では卵も食べているそうなのですが, どのようにして調理しているかは分かりません。

 
参考文献
 
Bouchet, P. 2015. Aplysia kurodai Baba, 1937. In: MolluscaBase (2015). Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=568199 on 2015-06-01.
 
今原幸光 編著.2023. 新 写真でわかる磯の生き物図鑑.286 pp. 海文堂,東京.
 
小野篤司 監修,加藤昌一 編. 2009. ネイチャーウォッチングガイドブック ウミウシ 生きている海の妖精.272 pp. 誠文堂新光社,東京.
 
鈴木孝男・木村昭一・木村妙子・森 敬介・多留聖典 2014. 干潟ベントスフィールド図鑑 第2版.257 pp. 日本国際湿地保全連合,東京.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ オピストコンタ動物界冠輪動物上門軟体動物門腹足綱異鰓亜綱アメフラシ目
 
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