ソエエダナシオキツ Besa japonica |
作成者:鈴木雅大 作成日:2020年6月18日 |
ソエエダナシオキツ(添枝無興津) |
Besa japonica (Suringar) Skriptsova & Shibneva in Shibneva et al. 2020 (online): 76-77. Figs 16-26. |
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),オキツノリ科(Family Phyllophoraceae),ベサ属(Genus Besa) |
Basionym |
Gymnogongrus japonicus Suringar 1867: 259; 岡村 1936: 644; Noda 1964: 64; Masuda 1987: 45-46. Fig. 4. |
その他の異名 |
Besa catenata auct. non (Yendo) M.S. Calderon & S.M. Boo in Calderon et al. (2016); Calderon et al. 2016: 433, Figs 10-19. |
Type locality: Japan |
Lectotype specimen: L 0055926 (Naturalis, Leiden, Netherlands) |
分類に関するメモ:ソエエダナシオキツはMasuda (1987) により,オキツノリ(Gymnogongrus flabelliformis)の異名同種(シノニム)とされましたが,Shibnova et al. (2021) はソエエダナシオキツを再評価し,オキツノリ属(Gymnogongrus)からBesa属に移しました。Calderon et al. (2016) が"Besa catenata"としていたサンプルが本種に相当します。 |
押し葉標本(採集地:新潟県 柏崎市 番神岬;採集日:2017年6月21日;採集者:鈴木雅大) |
押し葉標本(採集地:新潟県 柏崎市 観音崎;採集日:2017年6月21日;採集者:鈴木雅大) |
ソエエダナシオキツ(Besa japonica)はMasuda (1987) 以降,オキツノリ(Gymnogongrus flabelliformis)の異名(シノニム)とされていた種類ですが,Shibnova et al. (2021) によって再評価され,オキツノリ属(Gymnogongrus)からBesa属に移されました。Calderon et al. (2016) が「ホソバノヒラサイミ(Besa catenata)」としていたサンプルがソエエダナシオキツに相当し,日本海沿岸から九州北西部に分布しています。本来のホソバノヒラサイミ(B. catenata)は紀伊半島や渥美半島周辺などの太平洋側と大分県に分布し,ソエエダナシオキツと分布域が被ることはないようです。著者は2019年までソエエダナシオキツを認識出来ておらず,日本海側で"オキツノリ"だと思って採集したサンプルが,遺伝子解析の結果,ソエエダナシオキツであることが判明しました。オキツノリ(=大して珍しくもない種類)だと思っていたため生態写真は撮っておらず,大いに後悔したものです。改めて観察するとオキツノリよりも枝の間隔が広く,ホソバノヒラサイミに近いと言われれば納得です。ホソバノヒラサイミとは内層の細胞数が少ないことで形態的に区別されますが,両者の分布域が被らないようなので,日本海側でホソバノヒラサイミに似た種を見つけたら本種一択として同定出来る…ことを願っております。 ソエエダナシオキツの和名はNoda (1964)が福島県塩屋崎のサンプルに対して名付けたものです。Noda (1964) は縁辺から副出枝を出さないことを本種の特徴としているので「添え枝無し」という意味ではないかと思います。本種が福島県に分布しているかどうか定かではなく,図版等もないのでソエエダナシオキツがBesa japonicaかどうか疑問の余地はあるものの,副出枝を出さない(もしくはほとんどない)のは本種の特徴として正しいと考えられ,著者は本種の和名として適当だろうと考えています。 |
参考文献 |
Calderon, M.S., Miller, K.A., Seo, T.H. and Boo, S.M. 2016. Transfer of selected Ahnfeltiopsis (Phyllophoraceae, Rhodophyta) species to the genus Besa and description of Schottera koreana sp. nov. European Journal of Phycology 51: 431-443. |
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2020. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 18 June 2020. |
Masuda, M. 1987. Taxonomic notes on the Japanese species of Gymnogongrus (Phyllophoraceae, Rhodophyta). Journal of the Faculty of Science, Hokkaido University Series 5, Botany 14: 39-72. |
Noda, M. 1964. Marine algae in the vicinity of the Shioyazaki Cape, Fukushima Prefecture. Journal of Faculuty of Science, Niigata University, Series II 4: 33-75. |
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京. |
Shibneva, S.Y., Skriptsova, A.V., Semenchenko, A.A. and Suzuki, M. 2020 '2021'. Morphological and molecular reassessment of three species of Besa (Phyllophoraceae, Rhodophyta) from the North-west Pacific. European Journal of Phycology 56: 72-84. |
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