タチイバラ Hypnea variabilis
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年11月19日
 
タチイバラ(立ち茨)
Hypnea variabilis Okamura 1909: 21. Pl. 56.
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),シストクロニウム科(Family Cystocloniaceae),イバラノリ属(Genus Hypnea
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),イバラノリ科(Family Hypneaceae),イバラノリ属(Genus Hypnea
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),スギノリ目(Order Gigartinales),イバラノリ科(Family Hypneaceae),イバラノリ属(Genus Hypnea
 
掲載情報
岡村 1936: 607. Fig. 287; Tanaka 1941: 229. Fig. 1; Dawson 1945: 82. Figs 16, 17; 1961: 240. Pl. 36; Yamagishi & Masuda 1997: 151. Figs 33-35; 吉田 1998: 744-745. Pl. 3-64, Figs A-C.
 
Syntype localities: 紀州尾鷲,三河篠島,江ノ島,鎌倉,房州,上総,磐城四倉
Lectotype specimen: Okamura 1909, pl. 56, fig. 1の図解
 
タチイバラ Hypnea variabilis
押し葉標本(採集地:神奈川県 藤沢市 江ノ島;2002年12月19日;採集者:鈴木雅大)
 
タチイバラ Hypnea variabilis
押し葉標本(採集地:千葉県 南房総市 根本;2008年6月18日;採集者:鈴木雅大)
 
タチイバラ Hypnea variabilis
 
タチイバラ Hypnea variabilis
押し葉標本(採集地:静岡県 下田市 田牛 二穴洞窟;2007年4月16日;採集者:鈴木雅大)
 
形態変異の激しい種類で,体の大きさ,分枝の回数,枝の両縁から生じる小枝の数などが生育地や生育時期によって大きく変化します。ダルス(Palmaria cf. mollisヒラムカデ(Grateloupia lividaの例をみれば,この程度の形態変異は驚くには値しないかもしれませんが,それでもやはり「本当に全部同じ種類?」と聞かれると返答に困ってしまいます。種の認識はもちろんですが,本種は属の所属についても問題があり,おそらくイバラノリ属(Hypnea)ではないと思います。Yang & Kim (2017)により,サイダイバラ(Calliblepharis saidanaがイバラノリ属(Hypnea)からCalliblepharis属に移された際,なぜ本種についても解析し,Calliblepharis属に移さなかったのか疑問に思いました。著者の憶測に過ぎませんが,Yang博士らは本種に相当するサンプルについても採集,解析されていると思います。しかし,もしかしたらYang博士らは,本種の同定に自信が持てなかったのかもしれません。やっかいなことに,本種はタイプ産地が定まっておらず,紀州尾鷲(三重県),三河篠島(愛知県),江ノ島,鎌倉(神奈川県),房州,上総(千葉県),磐城四倉(福島県)のいずれかと考えられています。加えて本種はタイプ標本に相当する標本がなく,レクトタイプ(選定基準標本)として指定されているのは岡村 (1909)の図版です。分類学的検討を行う際はサンプルの種同定を厳密に行う必要がありますが,形態変異が激しく,タイプ産地は複数の候補があり,タイプ標本が無いという状況で,採集したサンプルを本種と正確に同定するのは難しいと思います。さらに,もしも本種と同定されているものの中に複数の種類が混在しているとなれば,種を整理するのは困難を極めると予想されます。分類学的に問題のある種であるのは明らかですが,おいそれと手を出しにくい種類だと思いました。
 
参考文献
 
Dawson, E.Y. 1945. An annotated list of the marine algae and marine grasses of San Diego County, California. Occasional papers of the San Diego Society of Natural History 7: 1-87.
 
Dawson, E.Y. 1961. Marine red algae of Pacific Mexico. Part 4. Gigartinales. Pacific Naturalist 2: 191-343.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2011. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 19 November 2011.
 
岡村金太郎 1909. 日本藻類図譜 第2巻 第2集. 東京(自費出版).
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌 964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
Tanaka, T. 1941. The genus Hypnea from Japan. Scientific Papers of the Institute of Algological Research, Faculty of Science, Hokkaido Imperial University 2: 227-250.
 
Yamagishi, Y. and Masuda, M. 1997. The species of Hypnea from Japan. In: Taxonomy of Economic Seaweeds. (Abbott, I.A. Eds) Vol.6, pp. 135-162. California Sea Grant College System, California.
 
Yang, M.Y. and Kim, M.S. 2017. Molecular analyses and reproductive structure to verify the generic relationships of Hypnea and Calliblepharis (Cystocloniaceae, Gigartinales), with proposal of C. saidana comb. nov. Algae 32: 87-100.
 
吉田忠生. 1998. 新日本海藻誌 1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 

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