ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2013年10月22日(2017年5月14日更新)
 
ケハネグサ(毛羽草)
Melanothamnus fibrillosus (Okamura) Díaz-Tapia & Maggs in Díaz-Tapia et al. 2017: 7, Table 4.
 
紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),イギス目(Order Ceramiales),フジマツモ科(Family Rhodomelaceae),ストレブロクラディア連(Tribe Streblocladieae),メラノタムヌス属(Genus Melanothamnus
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),イギス目(Order Ceramiales),フジマツモ科(Family Rhodomelaceae),ハネグサ属(Genus Pterosiphonia)*Pterosihonia fibrillosaとして
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),イギス目(Order Ceramiales),フジマツモ科(Family Rhodomelaceae),ケハネグサ属(Genus Kintarosiphonia)*Kintarosihonia fibrillosaとして
 
Basionym
  Pterosiphonia fibrillosa Okamura 1912: 172. Pl. 98; 1936: 864; 吉田 1998: 1075-1076.
Homotypic synonym
  Kintarosiphonia fibrillosa (Okamura) Uwai & Masuda 1999: 227. Figs 1-27; 増田ら 2004: 13; 中庭 2020: 69.
 
Type locality: 千葉県 白浜町 (Uwai & Masuda 1999: 227; 増田ら 2004: 13)
Lectotype specimen: SAP herb. Okamura(北海道大学大学院理学研究科植物標本庫 岡村金太郎コレクション) (Uwai & Masuda 1999: 227. Fig. 1; 増田ら 2004: 13)
 
茨城県版レッドデータブック2020年版:準絶滅危惧
 
分類に関するメモ:ケハネグサはPterosiphonia属の1種として記載された後,Uwai & Masuda (1999) により1属1種のKintarosiphonia属として独立しました。Díaz-Tapia et al. (2017) ケハネグサをKintarosiphonia属からMelanothamnus属に移しました。
 
ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
 
ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
 
ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
撮影地:千葉県 銚子市 外川町 畳岩;撮影日:2017年5月12日;撮影者:鈴木雅大
 
ヒジキ(Sargassum fusiformeの体上に着生しています。これまでも千葉県銚子で採集したヒジキに本種が着生していることは良くありましたが,岩一面のヒジキのほぼ全ての個体に本種が着生している様子は初めて見ました。
 
ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
 
ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
生態写真(採集地:千葉県 銚子市 外川町 畳岩;採集日:2017年5月12日;採集者:鈴木雅大)
 
ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
 
ケハネグサ Melanothamnus fibrillosus
押し葉標本(採集地:千葉県 銚子市 外川町 畳岩;採集日:2001年6月10日;採集者:鈴木雅大)
 
ヒジキ(Sargassum fusiformeコトジツノマタ(Chondrus elatusなど,他の海藻の体上に着生しています。ケハネグサは岡村 (1912) によってPterosiphonia属の1種として記載された後,Uwai & Masuda (1999) により1属1種のKintarosiphonia属として独立しました。連(Tribe)の階級では,Pterosiphonia属とコザネモ属(Symphyocladia)と共にハネグサ連(Pterosiphoniae)に属していました。ケハネグサは平面的に分枝し,体の周心細胞が10個以上あることから,ハネグサ連の仲間であることは疑いようもないと思っていましたが,Díaz-Tapia et al. (2017) は遺伝子解析と,造果枝が3細胞からなるという特徴から,ケハネグサをキブリイトグサ(Melanothamnus japonicusなどと共にMelanothamnus属に移しました。連の所属はハネグサ連でもイトグサ連でもなく,ストレブロクラディア連(Streblocladieae)となりました。改めて観察してみると,本種はキブリイトグサを大型化させたような外形をしており,造果枝を構成する細胞数を共通する特徴として,Melanothamnus属のメンバーとするのは適当と考えられます。
 
参考文献
 
Díaz-Tapia, P., McIvor, L., Freshwater, D.W., Verbruggen, H., Wynne, M.J. and Maggs, C.A. 2017. The genera Melanothamnus Bornet & Falkenberg and Vertebrata S.F. Gray constitute well-defined clades of the red algal tribe Polysiphonieae (Rhodomelaceae, Ceramiales). European Journal of Phycology 52: 1-30.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2013. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 22 October 2013.
 
増田道夫・小亀一弘・加藤亜記・谷 昌也・阿部剛史 2004. 海藻.In: 北大自然史タイプコレクション ―128年 知の伝承―.pp. 5-55. 21世紀COE「新・自然史科学創成」/北海道大学総合博物館,札幌.
 
中庭正人 2020. ケハネグサ.In: 茨城における絶滅のおそれのある野生生物 蘚苔類・藻類・地衣類・菌類編 2020年版(茨城県版レッドデータブック).p. 69. 茨城県民生活環境部自然環境課,水戸.
 
岡村金太郎 1912. 日本藻類図譜 第2巻 第10集.東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
Uwai, S. and Masuda, M. 1999. Kintarosiphonia (Rhodomelaceae, Ceramiales), a new red algal genus based on Pterosiphonia fibrillosa Okamura from Japan. Phycologia 28: 225-233.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版). 藻類 63: 129-189.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ紅藻植物門真正紅藻綱マサゴシバリ亜綱イギス目フジマツモ科
 
日本産海藻リスト紅藻植物門真正紅藻亜門真正紅藻綱マサゴシバリ亜綱イギス目フジマツモ科ストレブロクラディア連メラノタムヌス属ケハネグサ
 
「生きもの好きの語る自然誌」のトップに戻る