イチイヅタ Caulerpa taxifolia
 
作成者:鈴木雅大 作成日:2013年11月12日(2018年5月28日更新)
 
イチイヅタ(一位蔦)
Caulerpa taxifolia (M. Vahl) C. Agardh 1817: xxii.
 
緑藻植物門(Phylum Chlorophyta),アオサ藻綱(Class Ulvophyceae),ハネモ目(Order Bryopsidales),サボテングサ亜目(Suborder Halimedineae),イワヅタ科(Family Caulerpaceae),イワヅタ属(Genus Caulerpa),イワヅタ亜属(Subgenus Caulerpa),イワヅタ節(Section Caulerpa
 
*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),イワヅタ目(Order Caulerpales),イワヅタ科(Family Caulerpaceae),イワヅタ属(Genus Caulerpa
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:緑藻綱(Class Chlorophyceae),イワヅタ目(Order Caulerpales),イワヅタ科(Family Caulerpaceae),イワヅタ属(Genus Caulerpa
 
掲載情報
岡村 1902: 182; 1913: 38. Pl. 105, Figs 4, 5; 1936: 97; Yamada 1934: 67. Figs 36, 37; 吉田 1998: 104. Pl. 1-7, Fig. D; 2015: 378.
 
Basionym
  Fucus taxifolius M. Vahl 1802: 36.
 
Type locality: St. Croix, Virgin Islands.
Type specimen:
 
環境省レッドリスト2020:絶滅危惧II類(VU);鹿児島県レッドリスト(2015):絶滅危惧II類;沖縄県版レッドデータブック第3版(2018):絶滅危惧II類(VU)
 
イチイヅタ Caulerpa taxifolia
 
イチイヅタ Caulerpa taxifolia
押し葉標本(入手先は伏せますが,野生種ではなく水槽で飼われていた変異型です)
 
90年代に地中海で発見されて以来,「キラー海藻」として世界各地で猛威を振るっている突然変異種です。野生種は熱帯~亜熱帯地域でしか生育出来ないことから,水族館で栽培されていたものが排水等で流出,温帯域の水温に適応したと考えられています。イワヅタ類の仲間には毒性のある二次代謝産物を産生するものが知られており,イチイヅタの野生種も毒性物質を持ちます。ところが変異型の「キラー海藻」の産生する毒性物質は野生型の10倍以上の毒性があるとも言われており,このため藻食動物に捕食されることなく海底を覆い尽くすほどに繁茂すると考えられています。

この「キラー海藻」は日本でも見つかったことがあり,海藻研究者や水族館関係者の間に衝撃が走りました。実は,本サイトで紹介しているイチイヅタの押し葉標本は由緒正しい(?)日本産「キラー海藻」,すなわちイチイヅタの変異型です。もともとは,そうとは知らずに水槽で飼われていたもので,茎の切れ端からでも簡単に増やせるということで著者が譲り受けたものです。評判通り丈夫な海藻で研究室の水槽で元気に育っていました。ところがある日,この個体が巷を騒がす変異型であることが判明しました。判明した経緯については伏せさせて頂きますが,世界的な問題種である「キラー海藻」を飼い続けることに抵抗を感じたため,全てオートクレーブして廃棄しました。その際,全てを廃棄するのは惜しいと思い,作製したのがここで紹介している押し葉標本です。「キラー海藻」は知らないままアクアリウムショップなどで販売されている可能性があるため,扱いには十分注意する必要があると思います。

 
参考文献
 
Agardh, C.A. 1817. Synopsis algarum Scandinaviae. 135 pp. Ex officina Berlingiana, Lundae.
 
Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2013. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 12 November 2013.
 
香村眞徳 2018. イチイズタ.In: 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-.p. 611. 沖縄県環境部自然保護課,沖縄.
 
岡村金太郎 1902. 日本藻類名彙.276 pp. 敬業社,東京.
 
岡村金太郎 1913. 日本藻類圖譜 第3巻 第2集.東京.*自費出版
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌.964 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
Vahl, M. 1802. Endeel kryptogamiske Planter fra St.-Croix. Skrifter af Naturhistorie-Selskabet, Kiøbenhavn 5: 29-47.
 
Yamada, Y. 1934. The marine Chlorophyceae from Ryukyu, especially from the vicinity of Nawa. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido Imperial University Ser. 5, 3: 33-88.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌.1222 pp. 内田老鶴圃,東京.
 
吉田忠生 2015. イチイズタ.In: 環境省(編)レッドデータブック 2014 -日本の絶滅のおそれがある野生生物- 9 植物II(蘚苔類・藻類・地衣類・菌類).p. 378. ぎょうせい,東京.
 
吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189.
 
 
写真で見る生物の系統と分類真核生物ドメインスーパーグループ アーケプラスチダ緑色植物亜界アオサ藻綱ハネモ目イワヅタ科
 
日本産海藻リスト緑藻植物門アオサ藻綱ハネモ目サボテングサ亜目イワヅタ科イワヅタ属イワヅタ亜属イワヅタ節イチイヅタ
 
「生きもの好きの語る自然誌」のトップに戻る