クロミドリガイ Elysia atroviridis
作成者:鈴木雅大 作成日:2011年5月25日(2016年4月18日更新)
クロミドリガイ(黒緑貝)
Elysia atroviridis Baba, 1955
動物界(Kingdom Animalia),左右相称動物亜界(Subkingdom Bilateralia),旧口動物(前口動物)下界(Infrakingdom Protostomia),冠輪動物上門(Superphylum Lophotrochozoa),軟体動物門(Phylum Mollusca),腹足綱(Class Gastropoda),異鰓亜綱(Subclass Heterobranchia),被側区(Cohort Tectipleura),汎有肺亜区(Subcohort Panpulmonata),嚢舌上目(Superorder Sacoglossa),目の所属不確定(Incertae sedis),チドリミドリガイ上科(Superfamily Plakobranchoidea),チドリミドリガイ科(Family Plakobranchidae),ゴクラクミドリガイ属(Genus Elysia )
Synonym
セトミドリガイ Elysia setoensis Hamatani, 1968
採集地:神奈川県 三浦市 三崎町 小網代 荒井浜;採集日:2010年4月27日;撮影者:鈴木雅大
VIDEO
クロミドリガイの盗葉緑体
クロミドリガイ(Elysia atroviridis )は,盗葉緑体現象 (Kleptoplasty) がみられるウミウシの仲間です。ミル(Codium fragile ) などの緑藻(アオサ藻)を食べて,その葉緑体を細胞内である程度の期間維持し,光合成を行っています。葉緑体のゲノムの一部が宿主であるウミウシの核に移行している事が明らかになったことから,細胞内共生の研究者や大系統の研究者の間で大きな話題となりました。盗葉緑体を持つウミウシの仲間は多く,三崎の磯で採集したミルからは本種の他にヒラミルミドリガイ(Elysia trisinuata ) とミドリアマモウミウシ(Placida dendritica ) の2種が見つかりました。クロミドリガイとヒラミルミドリガイは良く似ていますが,本種の方が一回り小さく,頭部に白い斑点があることから区別出来ます。カバーガラスに入る大きさの個体をスライドガラスに乗せ,カバーガラスで軽く押しつけて顕微鏡で観察すると細胞内に取り込んだ盗葉緑体を生かしたままの状態で見ることが出来ます。
採集地:神奈川県 三浦市 三崎町 小網代 荒井浜;採集日:2012年5月9日;採集者:鈴木雅大
神奈川県三崎で採集したミルの体上を丹念に探したところ,クロミドリガイ,ヒラミルミドリガイ(Elysia trisinuata ) ,ミドリアマモウミウシ(Placida dendritica ) の3種のウミウシが見つかりました。いずれも盗葉緑体を持っています。大型のヒラミルミドリガイはまあまあ良く見つかりますが,他の2種はうっかりすると見落としそうになります。これらのウミウシの盗葉緑体は,光合成をする以外にミルに擬態する役目もあると考えられます。
参考文献
Bouchet, P. 2015. Elysia atroviridis Baba, 1955. In: MolluscaBase (2015). Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=494429 on 2015-06-01.
今原幸光 編著.2023. 新 写真でわかる磯の生き物図鑑.286 pp. 海文堂,東京.
西田和記 著.2024. ネイチャーウォッチングガイドブック ウミウシの生態観察図鑑.食餌、飼育記録から繁殖まで 知られざる生存戦略を知る.223 pp. 誠文堂新光社,東京.
小野篤司 監修,加藤昌一 編.2009. ネイチャーウォッチングガイドブック ウミウシ 生きている海の妖精.272 pp. 誠文堂新光社,東京.
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