トサカマツ Grateloupia crispata |
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作成者:鈴木雅大 作成日:2013年11月4日(2018年6月17日更新) |
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トサカマツ(鶏冠松) |
Grateloupia crispata (Okamura) Y.P. Lee 2008: 381. Figs A-C. |
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紅藻植物門(Phylum Rhodophyta),真正紅藻亜門(Subphylum Eurhodophytina),真正紅藻綱(Class Florideophyceae),マサゴシバリ亜綱(Subclass Rhodymeniophycidae),イソノハナ目(Order Halymeniales),ムカデノリ科(Family Grateloupiaceae),ムカデノリ属(Genus Grateloupia) |
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*1. 吉田(1998)「新日本海藻誌」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),真正紅藻亜綱(Subclass Florideophycidae),スギノリ目(Order Gigartinales),ムカデノリ科(Family Halymeniaceae),キントキ属(Genus Prionitis)*Prionitis crispataとして |
*2. 吉田ら(2015)「日本産海藻目録(2015年改訂版)」における分類体系:紅藻綱(Class Rhodophyceae),スギノリ目(Order Gigartinales),ムカデノリ科(Family Halymeniaceae),キントキ属(Genus Prionitis)*Prionitis crispataとして |
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掲載情報 |
Nam & Kang 2013: 48, 49. |
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Basionym |
Carpopeltis crispata Okamura 1934: 32. Pl. 317, Figs 6-11. |
Homotypic synonym |
Prionitis crispata (Okamura) Kawaguchi 1989: 239-241. Figs 30-33; 吉田・川口 1998: 730. Pl. 3-58, Fig. C. |
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Type locality: 神奈川県 三浦市 三崎町 諸磯. |
Holotype specimen: SAP herb. Okamura(北海道大学大学院理学研究科植物標本庫 岡村金太郎コレクション) |
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分類に関するメモ:トサカマツはCarpopeltis属の1種として記載された後,Prionitis属に移されました。Wang et al. (2001) はPrionitis属とされていた日本産種をムカデノリ属(Grateloupia)のメンバーとしましたが,トサカマツについては,「サクラノリ(Grateloupia imbricata)と同種と考えられるが更なる検討が必要である」とし,属の移動は行われませんでした。Lee (2008) は,トサカマツをPrionitis属からムカデノリ属(Grateloupia)に移しました。 |
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関東地方や伊豆を始めとする本州太平洋沿岸で海藻採集をしていると否が応にも目につくのがトサカマツ(Grateloupia crispata)です。通年見られるため,他の海藻が少なくなる夏場でも見つかります。最も普通に見られる海藻の一つとして紹介すべきところですが,海藻の専門家にとってこれほど頭を悩ませる紅藻はいないと思います。というのも,トサカマツの生育地にはサクラノリ(G. imbricata),ヒトツマツ(G. chiangii),コメノリ(Polyopes prolifer)など,トサカマツと良く似た紅藻がたくさん生育しているからです。トサカマツの特徴は葉状部が縮れたり,内側に反り返るなどですが,Wang et al. (2001) は,トサカマツについて「サクラノリと同種と考えられるが,更なる検討が必要である」と述べています。トサカマツとサクラノリは,形態的には区別が付くことから,著者は当初,Wang et al. (2001) の見解に懐疑的だったのですが,兵庫県淡路島でトサカマツと思って採集したサンプルが,遺伝子解析の結果ことごとくサクラノリと一致したことから,トサカマツはサクラノリの形態変異の1つなのではないかと思い始めました。トサカマツとサクラノリとの関係を明らかにするためには,日本各地からより多くのサンプルを集めて比較する必要があるため,未だ結論を出せずにいます。トサカマツの実体について検討する必要があると思います。 |
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参考文献 |
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Guiry, M.D. and Guiry, G.M. 2013. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. https://www.algaebase.org; searched on 04 November 2013. |
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Kawaguchi, S. 1989. The genus Prionitis (Halymeniaceae, Rhodophyta) in Japan. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido University, Series V (Botany) 16: 193-257. |
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Lee, Y.P. 2008. Marine algae of Jeju. 177 pp. Academy Publication, Seoul. |
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Nam, K.W. and Kang, P.J. 2013. Algal Flora of Korea Volume 4, Number 9. Rhodophyta: Florideophyceae: Halymeniales: Halymeniaceae, Tsengiaceae. Marine Red Algae. 132 pp. National Institute of Biological Resources, Incheon. |
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岡村金太郎 1934. 日本藻類圖譜 第7巻 第4集.東京.*自費出版 |
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Wang, H.W., Kawaguchi, S., Horiguchi, T. and Masuda, M. 2001. A morphological and molecular assessment of the genus Prionitis J. Agardh (Halymeniaceae, Rhodophyta). Phycological Research 49: 251-262. |
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吉田忠生・川口栄男 1998. むかでのり科 Halymeniaceae.In: 吉田忠生 著.新日本海藻誌.pp. 697-734. 内田老鶴圃,東京. |
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吉田忠生・鈴木雅大・吉永一男 2015. 日本産海藻目録(2015年改訂版).藻類 63: 129-189. |
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